どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

341

「ラキュたん! 尻尾でぶっ叩いて下さい!」
「望みならしてあげるよ」

バッシィィンッ!!

「あぁぁあぁぁっ!! ありがとうございますっ!!」

 ちっ……。
進んでも進んでも魔物共へんたいどもがうっとうしい。

叩けって言われたから尻尾を持って、思いっきりぶっ叩いてやったけど……止めた方が良かったね。
すっごい恍惚な笑いを僕に見せてきてるよ、あぁ気持ち悪い。

気持ち悪いからさっさと通り過ぎよう。
あ、因みに尻尾は持って歩いてるよ。
そのままだった、尻尾につまずいて仕方無かったんだ。

注目は浴びるけど……まぁ我慢するよ、転ぶよりかは100倍マシだからね。
さて、こんな事を考えた所で早くシルク君達を探そう。

「はぁ……どこにいるんだろ。飛んで探そうかな?」

そうすれば一発で見付かると思うんだ。
でもそれをしたら……目立って注目浴びるから止めてるんだ。

だからと言って、こうやって地味に歩いて探すってのも目立って辛い、はぁ……どうしようかなぁ。

心の奥底から、ため息をはいた。
もう探すの止めようかな……って、ん? なにあれ……奥のベンチに誰か座ってるね。

あれは……シルク君とアヤネだ。
二人で仲良さそうに座ってる、見たところ周りに姉上はいない。

「なんでいないの?」

いつもの姉上なら、何がなんでもシルク君と一緒にいそうなのに……今はいない。

「いない理由は分かんないけど、これ……姉上が見たら嫉妬で狂うだろうね」

遠目で見ても分かる、凄く雰囲気が良い。
シルク君は疲れてるのか、ふぅ……と息を吐いてる、アヤネの方は何故かそわそわしてる。
これ、姉上にとっては非常に嫌な雰囲気だね。

「…………」

だけど、なんでかな? 僕も見ててイライラしてる。
心が、チリチリ燃えるような感覚? 良く分かんないけど……そう言う感覚が滲み出てくる。

「なんであの2人が一緒なのさ…………っ!」

そして、不意に呟いてしまった言葉に驚き、口を押さえてしまう。
え? いっ今……なにを? まるっきり嫉妬丸出しな台詞を言った気がするけど……まっまさかね。
言ったとしても、そう言う意味じゃないよね? えと、これはあれだよ。

姉上がシルク君と一緒にいないからイライラしてるんだ。 
きっとそうだ、そうに違いないよね……。

焦りながら、そう考える事にした後、近付いて見る事にした。
焦りからか、無意識に早足になってしまう。
だから直ぐに側まで近付いた……だけど、途中でその足が止まってしまう。
そして、直ぐ様近くの物陰に身を隠した。

「え、うっうそ……なにやってんの?」

声を抑え、驚きのあまり目を見開いてしまった。
こっこんな魔物達が沢山通り掛かる中央通りで……なっなんて事やってんのさ!

「アヤネが、シルク君の上に座った……ね」

ひょこっ、と物陰からみてみる。
まさに僕が呟いた通りの光景がそこにはあった。

シルク君は「ぐぁぁぁぁっ」とか「降りろぉぉぉっ」とか叫んでる。
いやいや、叫ぶくらいなら突き飛ばしなよ。
そうすれば良いだけなのに、シルク君はそれをしない。

アヤネは、ゆっさゆっさ動いてる。
これは意地悪ではやってないね、良かれと思ってやってるね、だって「マッサージ」がどうの言ってるもん。

そんな光景を、じぃと見てたら……周りの魔物達もそれを見てた。
そしてひそひそ何か言ってる、これ……絶対に変な誤解されてるよね。

2人は気付いてないのかな? アヤネはともかく、シルク君の方は気付いてると思うけど……。

ぎゃぁぎゃぁ痛さに悶えてそれどころじゃなさそうだね。
仕方無い、ここは僕が声を掛けよう。
さぁ……なんて声かけてあげようかな?

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