どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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色々……本当に色々思い出してしまった。
恥ずかしい事から嫌な事まで……そして、クーに言ったあの言葉の事まで……。

今思えば更に、くっさい台詞言ったなぁ……と染々思ってしまう。

「考え方を変えるか。まさかクーに言われるなんてね……」
「予想外だった……かな?」
「うん、予想外だよ……。本当にね」

コチッ……コチッ……コチッ
やけに時計の時を刻む音が響いてる。
僕はそれに遮るように話した。

「で、僕はどう考え方を変えれば良いのかな……今一思い付かないんだけど?」
「……見守るだけで良い、何もしない、何も口出ししない……黙って見守る事……だよ」

見守る……ね。
だけど見てるだけじゃねぇ……なんにも進展しない気がするんだよね。

「……ラキュ君、あたいの言う事……納得してない……ね」
「あっ、ばれたんだ。分かってるならさ、僕の好きにやらせて……」
「自分のお姉さん……信用出来ないの?」

半分笑いながら言った言葉を遮る様にクーは言ってきた。
信じて……ない? 僕が? 姉上を……。

その時、僕は姉上のある言葉を思い出した……。

"ラキュ、わらわは決めたぞ! わらわはシルクに惚れられる女になるっ、そして……素晴らしい結婚式を上げて貰うのじゃ!"

拳を天に高らかに上げてドヤ顔で言ったあの言葉……とっても勢いがよくて、何処からそんな自信が出てくるの? と言いたい位自信に道溢れた言葉……。

それが脳内に響いた。
信じる、信じる、信じる……姉上が言った事を信じる。

何度も何度も"信じる"その言葉が頭に響く。
姉上のあの言葉を聞いて僕はどう思った?

無論、応援したいと思った。
だって、何かを頑張る姿と言うのは綺麗だから……だから僕は姉上の手助けをする事にした。

何時までも前に進まない姉上の背中を押したり、時折シルク君に姉上の話題を持ち掛けてその気にさせたり色々した。

そう、色々とだ。
……でもそれって、姉上を信用して無い事になるんじゃないの?
クーの言葉を聞いてそう思ってしまった、そしたら景色は暗転したかの様に見えてしまう。

真っ暗だ、本当に真っ暗……ぐるぐるぐるぐる、頭の中で色んな考えが浮かんで来て、ぐっちゃぐちゃになっていく。
あぁ……気持ち悪い、くらくらする、そんな気持ちを切り捨てるかの様にクーが話してきた。

「ラキュ君のお姉さんって……そこまで手助けしないと、ダメな魔物なの?」  
「っ……違う!」

思わず叫んだ……前のめりで勢いをつけて言った。

「姉上はそんな魔物じゃない……いざと言う時は行動できる……っ!?」

いっいま、僕は……なんて……言ったん……だ?
自分の言った事に困惑してしまう、そして無意識に手で口を押さえてしまう。

「……弟のラキュ君がそこまで言うんだよ? 信用して黙って見守っても……きっと大丈夫だよ」

どこにそんな根拠があるの? そう言ってやりたかった。
だけど、言えなかった……いや、言い出せなかった。

「お姉さんは強いよ……だから、あっ安心……しよ? ね?」
「…………」

クーは、優しい声でそう言ってきた。
……正直言うと、クーが今さっき言った言葉を聞くと、自分がやってきた事がバカらしくなってきた。

そんな僕に、クーは続けて話してきた。

「それに……好きって気持ちは正直にならないと……だっダメだよ」
「………クー? 突然何を言って……」

困惑した、思わず長く間を空けた後に話してしまう。

「お姉さんの事……だっ大事なのは分かるよ……でも、あたい……ラキュ君が、じっ自分の気持ちを押し殺してる様に見える……の」
「いや、それは考えすぎ……」

だよ、と言おうとしたら……また被り物を取って割り込んでこう言ってきた。

「ラキュ君……アヤネちゃんの事……好き、だよね?」
「っ!!」

ガタンっ、とソファを揺らすくらい驚いてしまった、僕がアヤネの事を……好き? なっ何を言ってるんだよ。

そう思った時、クーが「くすっ……」とか細く笑った。
なんで笑うのさ……別に笑うとこなんて1つも無かったよね。

顔が熱い、さっき色々悩んでモヤモヤしてたのに、今は違う感じのモヤモヤでいっぱいになってしまった。

そんな気持ちで一杯になりながらも、まだまだ話は続いていく、僕はそれを驚きながら聞いていくのであった。

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