どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

312

「……様……ルク様、シルク様っ!」

ん、んー……なんだ? 物凄く身体を揺らされてる気がする。
この声は……ヴァーム? あぁ、起こしに来たのか、いつもなら来る前に起きてたんだが二度寝したからな、何時もより起きるのが遅かったから起こしに来たんだろう。

「んー……おはよ、ヴァーム」
「はい、おはようございます」

眠たい眼を擦りヴァームを見る。
……すっごい笑顔だな、機嫌が良いみたいだ、何かあったのか?

しかしあれだな、眠たい……正直まだ寝ていたいぞ。

「ヴァーム、起こしてくれて悪いんだが……もう少し寝てて良いか? まだ、眠いんだ。ふぁぁぁ……」

ごそっ……。
あくびが出てしまった、まぁ眠いんだから仕方ないか。

布団を被りながら言うとヴァームは困った様に口をへの字にする。

「それは困ります」
「いや、ほんと眠いんだ……」

困りますと言われたら俺も困ってしまう。

「いつもなら、早くに起きてらっしゃるのに……珍しいですね」
「あぁ……それは今日、朝早く目が覚めたんだよ。だから2度寝したんだ」
「なるほど……だから眠いんですね? ですが、それは通りません。早く起きてください」

むぅ……。
やっぱりダメか、このまま寝かしてはくれないみたいだ。
この間、ロアはぐぅすか寝てるのに……。

「もう鬼騎の料理が出来ています。はやく行かないととっくに起きているシズハ師匠に食べられてしまいますよ」

なに? シズハさんはもう起きてるのか、意外に早起きだな。
アヤネは放っておいたら昼前まで起きないってのに……って、今……シズハさんの事、変な風に呼んでなかったか?

「なぁ、今シズハさんの事……」
「あら、何か可笑しい所がありましたか?」

目を細め頬に手を当てて、ん? って感じで小首を傾げてくる。
本人は何も可笑しな事は言ってないらしいな……。

「いや、なんでもない」

本人がそう思ってるのなら良いさ、気にはなるが放っておこう。

「それより、早く起きてください」

ばさぁっ……とヴァームは布団をめくった。
そしたらロアが「んぁっ」て声をあげた、ははは……驚いたんだな。
だが目は覚まさないか、相変わらず朝が弱いなぁ……。

「…………ん?」

なんだ? 突然身体に違和感を感じたぞ……って、うぉっ!? ヴァっヴァームがニヤついてるっ、きっ気味悪っ。

「なっなんだよ……ニヤニヤして」
「いえ、お気になさらず……私は平常ですよ?」
「は? いや明らかに顔が……っ!?」

と、この時だ。
俺は気が付いた……今着てる服に目が入ったからだ。

「なっなっなっ……なんだこれぇぇぇぇぇっ!!」

がばぁっ! とベットから立ち上がり全身くまなく触って確かめる。

ふっ服が黒くなってるっ! 何時もの可愛らしいパジャマはどうした! なんだ着てる服が変わってるんだ!

 しっしかも布面積がひっっじょぉぉうに少ない!なんかエロさを感じるっ、くっ……少し肌寒いな。

しっしかもだ、それだけじゃなくて、お尻の方にも変化はあるっ! なんだこの黒いのは……。
これはしっ尻尾か? 黒くて細長ぁい尻尾が生えてる、ん? いっいや……これは作り物か、触り心地が縫いぐるみみたいにふかふかだ。

あぁ良かった、突然変異して生えてきたんだと思った。
なんだ作り物かぁ……だったら安心出来るないだろぉがぁぁっ!!

「うぉぉいっ、ヴァーム! これはなんだ!」
「はい、サキュバス族が着る普段着です」
「そう言う事を聞いてるんじゃない!」
「あ、頭をお触り下さい。角付きカチューシャを着けておりますので」
「え? あ、本当だ……じゃなくて!」

俺が聞いてるのはそう言う事じゃない!

「なんなんだこの服は!?」
「ですからサキュバスの普段着と申してま……あぁ分かりました。そう言う事ですか」

俺は手をぎゅっと握って睨み付けて言った。
それを聞いて、うんうんと首を振るヴァーム、本当に分かってるんだろうな?

「この服はハロウィンに着て頂く服です。一応完成しましたので試着していただいたのです」
「なるほど……この服はそう言う服か」

俺の知りたい事は聞けた。
ヴァームはきちんと分かってたみたいだな……さて、問題はここからだ。

「何時着替えさせた?」
「シルク様が寝てる間にぱぱっと行いました」

……なるほどな、寝てる間にぱぱっとか。
こう言う事、前にもあった様な気がする……。

「あのな、こう言う事言っても笑顔で返されると思うが一応言わせてくれ……勝手に着替えさせるな!」
「あら、心外ですね。着替えさせる前にきちんと言いましたよ? お着替えしましょうねと」

目を見開いてなに驚いてんだ。
俺は寝てたんだろ? だったら聞けるわけないだろう。

「でもまぁ、良いじゃないですか。シルク様がサキュバスに生まれてこなかった事が悔やまれる程に似合ってますよ」

にんまり笑うヴァームは俺に近付いてなめ回す様に見てくる。
うっ……この視線、気持ち悪い。

「では、行きましょうか」
「……は? 行く?」

いっ行くだと? どっ何処へ行くんだ? まっまさか外に行く気か!
いっ嫌だ、絶対嫌だ! 絶対行かないからなっ!

「はい、その衣装をシズハ師匠に見せに行くんです」
「え……シズハさんに?」

外には行かないのか……だが、シズハさんに見せに行くだと?
って、今完全にシズハさんの事をシズハ師匠って言ったの聞いたぞ。

なぜ師匠?

「はい、シズハ師匠に見せて……一緒に愛でます」
「…………は?」

全身が震えた……。
そして俺の脳が警鐘を鳴らした、なんとしても今すぐここから逃げろ……と。

「ふふふ、楽しみですねぇ」
「え、いや……。その、めっ愛でるって……何をするんだよ」 

止せば良いのに聞いてしまった。
ヴァームは、不適にニヤリと笑った後、眼光を妖しく光らせながら……。

「それは色々ですよ、色々……ね」

ぞくっ……。
寒気を感じた、気がつけば俺は大声をあげていた。

「いっ嫌だ! 嫌だぁぁァっ!!」

俺の叫びも虚しく、俺はヴァームに無理矢理連れられていかれてしまう。
あぁくそぅ……抵抗して騒いでみても全く動じない!

……と言うか、ロアはここまで騒がしくしても全く起きる気配が無い、どんだけ眠りが深いんだよ!
と思ったる内に部屋を出てしまった。

「あぁ……ようやくです。ようやくあの時の思いが払拭されます。今日は良い日ですねぇ」

うっとりしながら何を言うっ! 感傷にひたってるんじゃない!

それと良い日だと? そりゃ良かったなっ、俺の場合は最悪な日だけどな! いや、最悪を通り過ぎて災厄な日だよ!

はぁ……。
なんか、こうやってヴァームに突然あれこれされるのは久々だな。
だからと言って嬉しいとか感謝の気持ちとか全く無いけどな!

兎に角、今はこの後起きるであろう超弩級の騒ぎに対しての心構えをしておいた方が良さそうだな……。
それと、一応抵抗だけは続けよう。

色々頭で考えてる間にヴァームは陽気にスキップしていた。
ヴァームの腕の中で抱えられる俺は……今すぐ何かが起きて脱出出来ないかな? と、起きそうも無い事を考えたのであった……。

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