どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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恥ずかしがる娘に手を引かれると言う、可笑しな状況に陥りながら僕と彼女はどんどん歩いていく。

いやぁ、何処連れてくんだろ? なんて思いながら着いていくと……なんと、城下町地下に来てしまった。

あぁそう言えば、この娘と出会ったのはここだったよね。
そんな所に連れてきてどうするつもりなのかな? あれから黙ったままだし……なんか、ちょっぴり怖くなってきたよ。

「ねぇ、何処に行くの?」

こう言う風な事を聞いてみたけど、返事は返ってこない。

いや、それ以上に気になるのが周りの視線だね。
じとぉ……て怪しい物を見てる感じに見てくる、そしてヒソヒソ何か言っている。
今歩いてる道は表通りだから余計にそう言う視線が多い気がする。

これ、変な噂とかたちそうだね……だって今の状況、すっごく可笑しいもの。
オドオドしてる娘が僕の手を引いてるんだよ?

それを僕が疑問に道溢れながら受け入れてる。
でも内心は「あぁ、怖いなぁ……今からでも振りほどこうかなぁ」とか思ってる。

こうやって平然と受け入れてる様に見えて、ちゃんと恐怖的な事は感じてたんだよ?
だって、今まさに手を握ってきてるこの娘、すっごい力強く握ってきてるんだよ。

ほんと、ぎゅぅぅって感じにね……。
もう握るって言うより、締め付けてるって言った方が正しいよ。

結構痛いなぁ……。
でも、「痛いから離して」とか言ったら「っひゃ!?」って声を上げた後身体に力が入って、更に力が加わると思う。
そうなったら骨がめきゃってなるかもしれない。

多分そうなると思う……それが怖くて出来ないんだよ。
だから今はだまぁって着いていこう。

…………って、あれ? 立ち止まったね。
で、近くの家を見た。
あっ、もしかして目的地に着いたのかな?

「…………なにこれ」

彼女が向いた方を見て驚いた、えっ……えと、これは家……なのかな?
目をパチクリしてよぉく見てみる、うん……普通の家と同じ窓はある、扉もある。

だけど、家の形は普通じゃない。
普通じゃ無さすぎて、ビックリしてるくらいだ。
いやぁ……インパクトあるなぁ、もう「なにこれ」って言ったきり言葉が出てこないよ。

あぁ……うん、でもこうやってポカーンとして少し時間が経ったから落ち着いたかも……取り合えず状況を整理しよう。

今僕は、手を繋がれて城下町地下にやって来た。
で、今とある家……っていえば良いのかな? えと、その家の前にいるんだけど……その家と言うのが……カボチャなんだよ、黄色のね……。

うん……何言ってるか分からないよね? 僕も分かんない。
でも、目の前にあるのが紛れもないカボチャなんだから仕方無い。

あ、えと……カボチャカボチャ言ってるけど、小さなカボチャじゃない。
サイズが普通の家くらい大きなカボチャみたいな家だよ?

って、なに訳の分からない説明してるんだ……。
まっまぁ、それが目の前にある光景なんだよ。

「……っ」

あ、手を離したね……そして、その妙な家の扉を、きぃぃ……っと開けた、そして僕を見てくる。

これはあれかな? 「中へどうぞ」って事かな? そうとって構わないのかな?
まぁ、そう言う事にしておこうかな……。

これ、どうすべきなのかな? 訳も分からずここに連れてきて、訳も分からず家の中に案内されてる。
しかも初対面の魔物をだ、ましてや、あの娘からしたら僕は変な奴に見えてる筈……そんな奴を家に招待? なっなにする気? なにをどうして僕を招待してるの? わっ訳が分からない。

……って、待って、それよりもだ。
その家の扉を開けたって事はこの妙な家に住んでるのって……君って事になるよね?

恥ずかしがり屋で口下手、人……じゃなかった魔物見知りする娘、そんな娘の住む家がインパクト有りすぎなのはどうなんだろ……。

「ぁ……ぅ……っ」
「あ、ごっごめんっ!」

なぁんて考えてたら、早く入ってほしいのか口をパクパクさせながら、じぃっと見つめてくる。

突然の事に、警戒心なんて吹っ飛んで早足で家の中に入ってしまう。
そしたら、その娘も入ってきて、カチャン……と扉を閉める。

……薄暗い部屋、そこに仄かに感じるアロマの匂い。
そして、目の前に広がるのはアンティーク家具? って言うのかな……それっぽい家具が置かれていた。

「あ、シャンデリア……だね」

僕の住んでる城にもあるシャンデリアがここにもあった。
僕の所のシャンデリアより、ここのはレトロな感じがする、これはこれで風情が出て良いものだね。

……って、呑気に部屋の感想思ってる場合じゃないか。
僕は、部屋の主の方を向く……すると、そこにはさっぎでビクビクしていた筈の娘が、背筋をビシッとさせて僕を見ていた。

若干、顔が赤くなってるけど……さっきと比べればまるで別の魔物だ。

「けっ怪我を治してくれて、あっありがとうござい……まっます。あっあたいはクータンといっ言いますっ、あっあの! おっ恩返しっ、さっささっさせてくっくだひゃいっ!」

さっきよりかは遥かに喋れてるこの魔物、クータンと名乗るは深々と頭を下げてきた。
なので僕も釣られて「あ、はい……」と言って頭を下げてしまう。

なっなんかよく分からないけど……どうやら僕は、恩返しをされるらしい。

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