どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

272

「しかしまぁあれじゃのぅ……この見た目でこの味はある意味ホラーじゃの」

かぷっ。
?を浮かべたロアがアヤネの作ったフレンチトーストを食べながら、俺が思った事をそのまま喋っている。

「あらあら、ロア様そんな事を言ってはダメですよ?」
「しかしじゃなぁ……不思議でならなんのじゃ。ヴァームもそう思うじゃろ?」

まぁ、ロアの言う通りではある。
だが、本人の目の前で言うことではない……。
で、同意を求められたヴァームは困ってる。

「ふふ、さぁ……それはどうでしょうね?」

あ、誤魔化した。
そして、何事もなかったかの様に紅茶を飲んだ。
うん、逃げたな……まぁ俺も同じ状況ならそうしたがな。

ごくっ……と紅茶を飲んでその様子を見守る。

「ねぇ、ある意味ホラーってどういう意味?」
「え……あぁ、えと……どう意味なんだろうな、ははは」

見守ろうとしたんだが、それは叶わなかった。
アヤネが俺に話し掛けて来たからだ、なので笑って誤魔化そう、あはははは……。

それを見たアヤネは、「ふーん」と言って厨房での作業を進める。
あ、鬼騎に話し掛けられたな。

……かと思えば、話終わってこっちにこっちに来たな、あっ、俺の隣に座った。
ロアが反応したな、アヤネを見て「なんでソコに座るんじゃ」って顔をしている。

「赤鬼君が、後は良いから食べろって言われた。だから食べるね」
「そうか」

ロアのそんな視線に当然気づかないアヤネは自分の分のフレンチトーストを食べ始める。
……うぉ、何の躊躇ちゅうちょもなく食べ始めただと。

「ん、どしたの?」
「いっいや、なんでもない」

まっまぁ、作った本人だから、すっと食べられるのは分かるが……あの見た目だぞ? 虹色だぞ? 動くんだぞ?
作った本人だとしても「うわぁ、失敗したわぁ」と思って食べるのを躊躇ちゅうちょするだろう。

いや……アヤネは何処か抜けてるからな、だからすっと食べれるんだろう。
って、流石にそれは失礼か。

「そう……」

俺の声を聞いて、食べ進める。

「あの、少しよろしいかしら」

カタンッ……。
突然席を立ったラム、皆はそれに注目する。

「皆様に話しておきたい事がありますの」
「ん? 珍しいの……お主からそう言う話をするとは……と言うか、偉く唐突じゃのぅ」

うん、確かにロアの言う通りだ。
それもあるのか皆、ざわざわし始める。

「ラムの話ですか……きっと変態的な話しに違いないですよ」
「めっメェさん……きっききっ決めつけるのは、よっ良くないですぜ?」
「ラムちゃんのお話……ちょっと気になるかも」

メェ、鬼騎、アヤネが違った反応をとる。
反応してないのは、一番奥の席に座るラキュだけだ。
昨日と同じく斜め上を見て黄昏ている……。

「で、ラム……その話しとは何じゃ? 妙な話しじゃったら許さぬからな?」
「うふふふ、それはそそりますわね……。でも残念ながら今から話すのに関しては真面目な話ですの」

ロアの睨みに、くねっと身体をくねらせる。
今興奮したな……で、直ぐに真面目な顔をした。

ラムは相変わらずだなぁ……。

「今に関しては……か。それについて色々突っ込んでやりたいが、それは良い。さっさと話すのじゃ」

あ、面倒くさくなったのか放置したな。
でも、本題に進んだから良しとしよう。

「はい、分かりましたの……」

ロアの話を聞いた後、ラムはすぅっと表情を引き締めた。
……っ、なんだ? 今、ラムから何かを感じた。
身体がぞくっとなる奇妙な何かを感じてしまった。

そう感じていると、ラムは暗い表情、まるで怖い話をするかの様な雰囲気でこう言った……。

「昨夜……あたし奇妙な体験をしましたの」

低いトーンでラムはそう言った。
それを聞いた瞬間、身体がぞくっとなった……きっ気のせいか? 部屋の温度が下がった気がする。

あ、そうだ俺も昨夜奇妙な体験をしたな。
……くっ、思い出したら怖くなってきた。

「奇妙な体験じゃと? なんじゃそれはって、どうしたのじゃシルク……震えておるのか?」
「大丈夫? 寒いの? 暖かくなりたい気分なの?」
「いっいや、そっそんな事は……ないぞ」


ははは、と苦笑いで誤魔化し頬をかく。
……奇妙な体験=怖い話しと考えるのは早すぎだ、きっも他の話しに違いない。
絶対そうだ、そうに違いない!

自己暗示をかけ、俺は背筋を伸ばす。
そんな俺の様子に疑問を浮かべるロアとアヤネ、どうやら2人は怖がっていないようだ。

俺だけだと思うが……気分的に怖くなってきた。
そんな事を構わず、ラムは思い出す様に昨夜の事を話始めた……。

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