どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

27

この世界フェアローブは呆れる程に平和そのものだ、その青い空の下、人々は今日も平和な日常を生きていくのであった。
こう平和だと刺激が無さすぎて少しつまらない、魔王か何かがこの世界に来てはくれないだろうか? まぁ実際そんな事が起きれば、毎日が騒がしい日々が来るんだろうな、まぁそれはそれで嫌だな……とそんな物騒な事を考えつつ草原を歩く。
おっと紹介が遅れてしまった、俺の名はシルク  ハーベスト、長く延びた髪の毛を1つに括りその上から緑のバンダナをしている極普通の男だ、なのに良く女と間違われる……そんな男だ。

「まぁ、実際来たら困るんだけどな……」

現在、街の近くの草原で何をしようか悩んでいる、俺の家は街の外に建ててある、理由は簡単だ……そこに建てる程の金を持っていなかったからだ、だからと言って不服は無い、寧ろ静かで過ごし易い佇まいで満足している。

「さぁ……これからどうしようか」

さて話しは変わる、今俺は何をしてるかを説明しよう、いや説明するまでも無い、ただ歩いているだけだからな……近くにある街に行くのも良いんだが……行ったら行ったで何をするか予定もない。

「こんな時にアヤネは来ないし……」

有名な剣士の家庭に生まれたアヤネは毎日剣の修行をする、だがあいつはそれが面倒臭くて抜け出して俺の家に来る……だが今日は来ない、何故こんな時に来ないのか……もしかして逃亡失敗したのか?

「あぁ……暇だ」

思いっきり暇を弄んでいる、このまま草原を徘徊するのか? いやいやいや……そんだけは絶対に勘弁だ、何とかやる事を見付けなければ…。

「と言ってもこんな所じゃ何にも見つからないか……」

やはり街に行くしかない……それしかやる事が無い! と言うか母さんも母さんだ、今日は暇だから家にいるって言ったら。

『男の娘なんだから外で遊んできなさい!』

と言って家を放り出されてしまった……なんなんだ全く……と言うか何か言い方に引っ掛かってしまったのは何故だろう?

「仕様がない、街に行くか……」

街に行っても徘徊するだけに終わってしまいそうだが、草原を徘徊するよりかはましだと考えよう。

「よし、行くか……」

そう決心して街の方へと足を向ける、街に行けば何かする事が思い付くだろう、もしかしたらアヤネにも会うかもしれない……そしたら騒がしくなりそうだな……まっ、別に嫌では無いんだけどな。


「で、結局出会わないと……」

街に着いた、大人達は露店を開いて商いをしている、何だかこう言うのって憧れるなぁ……っと思うのは俺だけか? きょろきょろと辺りを見てみる……買い物する人、ただ商品を見てる人、品物を勧める商人、見た所アヤネの姿は何処にも見当たらない、さては本当に抜け出すのを失敗したな? いつも抜け出すのを成功出来る訳無いか。

「店でも見て回るか……」

最早、それしかやる事がない、もしかしたら俺の見た事の無い商品があったりするかも知れない、そうなったら良い時間潰しになる。
よし、新たな物を求めていざ探索だ! 意気揚々と露店を見て回る俺、さて未知の商品は見つかるのか?


「ははっ……そう簡単に未知の商品なんてある筈ないよな」

現実は非情である、とは良く言った物だ、隈無く露店を見て回った、だが見た事の無い物なんて無かった、そりゃそうだ、未知の商品なんてこんな所にあるわけない、と言うか未知の商品って何だ?

「身体が小さくなる懐中電灯とか何処にでも行けるドアとかか? ははっ……未知と言うかそれは不思議な物か」

そんな冗談を口にしながら歩く、しか皆威勢が良いな、やはり商いはこうでないといけないよな、何時かは俺も店を持って色んな商品を売って見たいな。

「よし、今後の為の参考として露店を見て回るか」

やる事が決まった、なので言った通り店を見て回る事にする、俺がこう思ったのには理由がある、それは俺の将来の夢にも関係する物だ、だからその為にも頑張らないといけない! 良いものはどんどん頭にいれていこう。


「ふむ、色々と勉強になったな……」

露店を見て回って時間が経った、見ただけなので理解は出来てないだろうな、だが少しは今後の参考にはなっただろう、ふぅーーと息を吐き周りを見てみる。

「やっぱりアヤネは抜け出すの失敗したみたいだな……」

何時もなら街を歩いてたら何処から途もなくアヤネが突然現れて俺を驚かしてくる、それが起きないと言う事は今日は脱出を失敗したと言う事だ……今頃渋々訓練を受けてるに違いない。

「諦めずに逃げる隙を伺ってるんだろうな」

アヤネは自分が怠ける為なら全力で頑張るからな、もっと別の所を頑張れば良いのにな……そんなアヤネが頑張る事は3つ

・家から逃げ出す事
・遊ぶ事
・寝る事

1歩間違えれば駄目人間だ、だけど、これがあいつの良い所……なんだよな?

「アヤネとは幼馴染みだからな、あれがアヤネの普通だと思ってるからな、そう思うのは仕方無いか……」

苦笑する俺、次に何をするかを考える、もう帰っても良いんじゃないか? そう思った時だった……。

びゅぅぅぅーー
強い風が後ろから吹いて来る、俺は髪の毛を押さえ風の吹いた方を見てみる。

「やぁ、少年少し良いかな?」
「っ!!」

俺は目を見開いた、そこには綺麗な紫色の長い髪の毛の俺より少し背の低い女性がいた、へそを出したひらひらした服、白い長いスカートを履いた女性だ。
褐色肌で目が大きくて大人の女性の様な声……一目見て、どきっーーとしてしまった。

「ん、何を呆けている?」

口をぽかーんと開ける俺、突然現れたその人をじっと見て気を取り直して喋る。

「いっいや、急に現れてびっくりしたんだ、すまん……」
「くふふ……面白いな少年」

けらけらと無邪気に笑うその人は俺をじぃと見つめて来る。

「少年の名は何と言うんだい?」
「なっ名前か? 俺はシルク ハーベストだ、えっえと……あなたは何て言うんだ?」

名前を聞かれて、たどたどしく自己紹介する俺……なんだか妙に緊張してしまった、だってこの人は大人の女性って感じが出ているんだ、こんな人に出会ってしまったら俺じゃなくても誰だって緊張してしまうだろう、目の前の人は「成る程、シルクと言うのか……」とうつ向き口ずさむ、そして俺の方を向く。

「名か? ならば今はこう呼ぶとよい……ナハトとな、真の名は時が来たら言おう! あぁ因みに我は150……いや15歳だからそんなに畏まらなくてもいいぞ?」
「えっ……あぁ、はい分かりました……って! おっ同い年!?」

おっ驚いた、まさか同い年とはな……明らか20を越えてると思った……と言うか何か言い回しが変じゃなかったか? まぁ……いいか、しかしナハトと呼べ……か、なんか格好いいな! って! 落ち着け俺! 時が来たら真の名を言うとか変だろ! と言う事は、ナハトって偽名かよ!

「くふふ……よろしく頼むよシルク」

1人でパニックになっているとナハトがにこっと微笑んで手を差し出してくる。

「ふぁ!? あっ……はい、よろしくお願いします! って何を?」

ナハトから手を差し出して来て釣られて握手する俺、なっ何をよろしくするんだ? わっ訳が分からない……と困惑する俺、と言うか今何が起きているのかあまり分かっていない、なんなんだこの状況は!

突然の事に固まるシルク、それを見るナハトと言う女性、2人の出会いは15歳、この物語は初めての出会いの物語、ここからシルクの恋が始まった。

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