どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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「あらあら……妙なオムレツもあった物ですね」
「あっあたし、こんなの初めてですわ!」

見た目がアレなオムレツを食べてたら、ヴァームとラムが来た。
で……その2人が食事を取る。

どちらも驚いてる。
うん……だろうな、そりゃ誰もオムレツの原型をとどめてないオムレツなんて食べた事はない。

と言うか、今更なんだが……アヤネはどうやってオムレツを球体にしたんだ? それが不思議でならない。

なんて、疑問を抱きつつ、鬼騎がアヤネの目を盗んで隠れて作ったサラダを食べ進める。
うん、こっちは見た目が旨そうだ……味の方もバッチリ、安心して食べられるな。

「しかしあれですね……アヤネさんが料理をするなんて珍しいですね」

にこっ。
微笑みながら言うヴァーム、その表情を見たアヤネはむっ! とした顔になりそっぽを向いてしまった。

どうした? 頬まで膨らませて……ヴァームと何かあったのか?

「そっそれじゃ、アヤネよ。何がどうして料理をした? わらわはとても気になる」
「教えてあげない」

なんて事を考えてたら、ロアの質問。
アヤネの答えはやっぱり同じだ、どうしても答えたく無いんだな。

「くっ、やはりそれか……。まぁいわ」

ちっ、舌打ちした後ロアは立ち上がる。

そして俺の方を見てくる。
あ……これはあれか? また何処かへ付き添う流れか?

「シルクよ」
「なんだ?」
「わらわは用がある、夜にまた会おう」

あ、違った。
そうか、用があるのか。
………あれ? なんだ、この残念な気持ちは、前まではこんな気持ちにならなかったのにな……どうしてだ?

「ヴァームよ、付き合ってくれるかえ?」
「はい、かしこまりました」

すっと立ち上がり、ぺこりと頭を下げるヴァーム。
その後、ロアとヴァームは部屋から出ていった。

…………ふむ、なんか慌てて出ていった感じがするな。
だって、さっきのロアは妙に思い悩んでた顔をしてたからな。
そう言う風に感じてしまった。

「シルク、早く食べないと冷めちゃうよ」
「ん? あぁ……悪い」

アヤネに言われて、ささっと食べる。
……ロアが慌ててるのかは分からないが、今は食事に集中するか。

「ね、シルク」
「ん?」
「次はなに食べたい? 私、何でも作るよ」

鼻息を、ふんっと出して胸を張る。
やる気充分だな、やる気がある事は良いことだ。
だが……そうだな、なんと答えようか。

アヤネには悪いがぶっちゃけると、今の料理は鬼騎のアドバイスを元にして作って成功させた。

だが、アヤネが1人でつくるとなると凄い物が出来る。
だから、その質問には答えたくないのが正直な所だ。

だがしかし……この熱意に溢れた目を見てくれ。
とてもじゃないが、「いや、料理は作らなくて良い」だなんて言えない。
と言うか言ってはいけない、人のやる気を削ぐのはいけない事だ。

だから俺は深く考える。
その結果、こう答えた。

「そうだな……そうだ、ピザが良い。チーズがたっぷりのった奴」

ぽんっと手を叩いて言った。
そしたらアヤネは伏せ目になる、そして下を向いた。

「………ピザはダメ。作った事ない」

何でも作るよ、と言ったのにしょんぼりしながら言ってくる。
そう、これが俺の狙いだ。
敢えて難しい料理を言って困らせる。

さて、次はこう話そうか。

「じゃぁ、鬼騎に教えて貰ったらどうだ?」

鬼騎のアドバイスで上手く出来たんだ。
ならば次も鬼騎のアドバイスを聞きながらやれば良い。

そう思ったのだ。
だからそれを言う時に、鬼騎の方を向いて目でサインを送った。
頼む、アヤネに協力してやってくれ。

そう言う念を送る、すると……それが伝わったのか少し遠くにいた鬼騎が黙って頷く。

「俺は構わないぞ?」

こくこくと頷く鬼騎、アヤネはじぃっとそれを見て顔をあげる。

「……じゃ、教えて貰う。料理頑張るね」
「おぉ、頑張ってくれ」
「でも今は頑張らない、だってさっき料理して疲れたもん」
「おっおぉ、そうか」
「うん」

手をぎゅっと握ってやる気を出したかと思いきや、ふぅ……とため息をつく。
なんとも、気持ちの上がり下がりが激しい奴だ。

「という訳で、私はお皿洗ったらお散歩します。だから赤鬼君、夕飯前にまたここに来るね」
「おっおぅ、分かった」

そう言ってアヤネは、空いてる皿を手にとって、流し場まで持ってく。

「シルク君」
「うぉ、ビックリした」

その一連の動きを見てた時だ。
ラキュが話し掛けてきた、さっきからずっと黙ってたからな……驚いてしまった。

「上手い風にアヤネを動かしたね」
「……まぁな、あいつとは付き合いが長いからな」

にこっと笑いながら言ってくる。
それに対して昔を思い出す様に言った。
アヤネはこうと言ったら聞かない。
だから極力やらせてあげるんだ。
それに、さっきも言ったが、人のやる気を削ぐ真似は俺はしたくない。

「そう……。ふぅん、なるほどね」

にこっとした顔はそのままで、ラキュは俺をじっと見てくる。
なっなんだ? 凄く気になる。

「……どうした? じぃっと見つめて、何かついてるか?」
「何も付いてないよ」

それを言った後、ラキュは皿に残ってるオムレツを食べ進める。
……なんだ今の? ラキュの奴、顔は笑っていたが……なんか別の感情を感じ取ってしまった。
それが何なのかは分からない、これは俺の気のせいか?
そう思いながらも俺もオムレツを食べ進める。

……さて、食べ終わったら店に行くか。
俺も仕事をしなきゃいけない。
最近、魔物達が嫌で開けてなかったからな……アヤネも頑張ったんだ、俺も頑張るか。

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