どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

220

「シルク、隣座って良い?」
「それ、座ってから聞く事じゃないよな?」

扉の前に立ってたアヤネは、直ぐに俺の隣に座ってきた。
しかも、ピッタリと肌をくっ付けて来てる。

「あ、そうだった……忘れてた」
「そっそうか、忘れてたのか。なら、仕方ないな」
「ん、仕方ない」

……ははは、なんだこのバカっぽい会話は。

「シルク、なんで笑ってるの?」
「……なんでもない、気にするな」
「なんでもないのに笑ってるの? 変なの」

かくんっと首を傾げるアヤネ。
変なの扱いされてしまった……変なのはアヤネの方だ、と言いたい所だが言わないでおいた。

「えと……アヤネは何しにここへ来たんだ? 休憩か?」
「違う。ここに来たのはお話する為」

あぁ、そう言えばそんな事言ってた気がする。
となると、何を話に来たんだ? アヤネの話しの殆どは突拍子も無い事だからな……それで良く驚かせてくれるよ。

「何の話をするつもりだ?」
「メェちゃんの話」

メェの?
突拍子も無い話しかと思ったが……どうやら違うみたいだ、どうやら今回は安心して聞けそうだな。

しかし、メェの話しか……どんな話をするのか全く予想がつかないな。
と言うか、アヤネとメェってあまり接点とか無いだろう。

なのに、メェの話をするのか……さっき、一緒に城の外に出掛けた時、何かあったのか?

色んな疑問が浮かんでいると……アヤネは話し出した。

「あのね、私……メェちゃんと赤鬼君をくっ付けたいの」
「うっうん、ちょっと待て……いきなり何を言ってんだ」

やはり突拍子も無い事だった。
そんな事急に言うな、焦って開いた口が塞がらないぞ。

「あのね、私……メェちゃんが心配なの」
「いや、待ってて。一旦落ち着け……俺の話を聞け」

まず、なぜその話をしようと思ったか分からない。
と言うか、そんな話を俺にしてどうするつもりだ?

「だから、シルク……話を聞いて。私の作戦がどうなのか判断して欲しい」
「……あの、あまりにも唐突過ぎないか? もっと詳しく話せないのか?」

もう、なんと言うか……要点をぎゅっと絞って話し過ぎだ。

と言うか……。
今日のアヤネはやけに興奮してる。
だから、話し方が意味不明なのか?

「詳しく?」
「そう、詳しくだ」

じゃないと、話を聞こうにも聞けない。
……だが、告白がどうのって言ってたから、確実に一筋縄では行かない事なんだろう。
正直言えば、あまり関わりたくない。
しかし……話だけは聞いておくか。

「そうだった、私焦って詳しく話せてない」

ほっ、分かってくれて良かった。
しまったって言いたげな顔をしつつ、アヤネは話していく。

「えとね……メェちゃんはね、赤鬼君の事が好きなの。シルクは知ってた?」
「赤鬼君? ……あぁ、鬼騎の事か……知ってるぞ」

それは誰もが知ってる事だ。
それを知らないのは、鬼騎だけかも知れない。

「そう、なら話が早い。あのね? メェちゃんはね……少し好きアピールが足りないと思うの」
「そうか? 普段抱き付いたりしてるし……好きアピールは足りてると思うぞ。いや、むしろ過激な方じゃないか?」

毎回毎回抱き付かれてる鬼騎は、顔真っ赤にしてるし……。
向こうも意識してるんじゃないか?

「甘いっ」
「あっ甘いのか……そうなのか」

あれが甘かったらどうなるんだ? アヤネの思う過激なスキンシップの定義が分からない。

「メェちゃんは普段も笑顔だけど。赤鬼君が側にいると違った笑顔を見せるの。」
「違った笑顔?」
「この人といて嬉しい。そんな感じの笑顔……って言えば分かる?」
「あっあぁ……なんとなく」

なんだろう。
今、アヤネが賢く見えた……普段は何も考えずに、話したい事だけ話す人なのに……今日のアヤネは何か可笑しい。

「そんな笑顔をしてるのに……メェちゃんは、告白してない」
「いや、告白ってその人のペースもあるし……急かす必要は」

無いんじゃないか? そう言おうとしたら、それを遮ってアヤネは強く言い放った。

「それで、誰かに先を越されたらダメ……だから、好きって思ったら、好き好きアピールを適度にした後、ビシッ! と告白しないとダメ」

……たっ確かに的を獲てる。
だっだが、それってかなり勇気が必要なんじゃないか?

「メェちゃんは告白する勇気が無いだけ……。だから私が助けたいの」
「いっいや、そう言うのは他人が関わらない方がいいんじゃないか?」

若干、声のトーンを落としていった。
そしたら、アヤネは首を横に振った。

「私、気持ち分かるの。告白って勇気がいる。だから言えなくて時間だけが経ってく。でもそれで……その人に好きな人が出来たら、悲しい。メェちゃんにそんな気持ちになって欲しくない」

何も言えない。
アヤネが言った事に俺は、何も言えなかった。
アヤネの言葉は重みがあった……何故かは分からない。

「アヤネ……」
「だからねシルク……私、メェちゃんの告白の手助けをしたい」

にっ、と笑うアヤネ、これがアヤネの言いたかった事。
これから話す事が、俺に聞いて欲しかった事。

「私の完璧な作戦、聞いてくれる?」
「聞くには聞くが……。だがメェが嫌がったら、止めろよ?」
「うん、それは分かってる」

アヤネは自信ありげな顔をして話していく。
……アヤネは、お節介だな。
俺はそう思いながら、話を聞くのであった。

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