どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

216

「ごちそうさま」
「おぅ、お粗末さん」

昼食が終わると、皆は席から立ち上がる。
いやぁ……今日の料理も旨かった。
鬼騎の料理は俺の日々の安らぎの1つと思っても良いかもしれないな。

「さて、シルクよ……今日はどうする? また外に連れ出してくれるのかえ?」

ふふっと微笑しながら言ってくるロア、それを睨むアヤネ、その視線は後ろを向いてても分かる。
なんか威圧感を感じるからな……。
それに怯えた訳じゃ無いが、俺は首を横に振って応える。

「いや、今日は犯人探しをした方が良いと思うぞ。流石に2度目は許されないだろうからな」
「あぅ……そっそうじゃな」

そう。
1度目はあれで許されたが……きっと2度目はない。
だから今日は犯人探しをする。

と言っても、顔もしらない奴を探すんだから途方も無い事なんだがな。
はぁ……面倒くさ。

「それ、僕も付き添うよ……あれ以上怒られたくないからね」
「そうか、助かる」

とか思ってたらラキュがそう言ってくれた。
手掛かりが無いから探しようが無いが、探しだす人数が増えるのは嬉しい。

と言うか……ラキュもそれに参加しないと、後が恐いのを知ってるからな。
参加せずにはいられないんだろう。

「本当は面倒くさいから探したくないんだけどね……」

あ、それ俺も思った。
苦笑するラキュは、ポリポリっと頬をかく、それを見たロアは……。

「あまりそう言う事を言うものではないぞ? ヴァームが聞き耳を立ててるかも知れんからな……」

こっちも苦笑しながら言ってくる。
ははは、そうだな……口は災いの元って言うしな。

「いやいや、恐い事言わないでよ。そんな都合良く聞いてる訳ないでしょ」

またまたぁって言いたげに手をぱたぱた振るうラキュ。
そんなラキュだったが、瞬時に表情かおが強ばり、か細い声でこう言ってきた。

「……今の完全にフラグだったから黙るね」
「おっおぅ、そうした方が良いぞ」
「うん……」

ヴァームは神出鬼没だからな……いつ現れても可笑しくない。
だから下手な事は言わない方が良いのだ。

暗い顔で語るラキュは扉の方へと歩いていく。

「先に探してるよ……怪しい奴を見掛けたら伝えるね」
「あぁ、分かった……」

その言葉を最後に部屋から出ていったラキュ。
そしたらだ、メェも扉の方へ向かっていく。

「メェは私情を先に片付けるですよっ、ぶっちゃけそっちのが大切です、と言う訳で……行くですよアヤネっ!」

びしっ!
アヤネを指差すメェ、指された本人は目を見開いた後、「え、やだ」とだけ答えて俺にしがみついてきた。

「さっきヴァームに怒られてる時に約束したですっ、この後メェの手伝いをするって! あの事許してあげないですよっ」
「あぅ……分かった」

……なんか、昨日からメェとアヤネの仲が悪い気がする。
正確に言えば、メェがアヤネを嫌ってる? って言えば良いんだろうか……なんか気になるな。

と言うか、怒られてる時にそんな話をしたのか? けっ結構余裕があったんだな……。

とか思ってると、渋々立ち上がるアヤネ、そしてメェの側へと小走りして行く。
そして、俺の方を向いて……。

「シルク、次会ったら長時間抱き締めるからね。ロア……あんまりシルクに近寄っちゃダメだよ」
「ふんっ、貴様がなんと言おうと、わらわはシルクに近付くのをやめん!」

ぎゅっと抱きついて、誇らしげにアヤネを見るロア。
おいおい……そんな事を言ったらアヤネが怒るだろう。

あと、さらっと抱き付くのは止めてくれ。
……って毎回思うが、そんな事思っても無駄なのになんで考えるんだろうな。

「むっ……」

案の定睨み付けてくるアヤネ、今にもロアの方に飛び掛かろうとした時……メェに後ろからホールドされる。

「はい、さっさと行くですよ」
「え、メェちゃん? ダメ……止めて! あぁぁぁっ!」

そんな悲鳴も虚しく、部屋から連れ出されていくアヤネ……。
ははは、なんか……可愛そうって思ってしまった。

「さて……皆は私情やらなんやらで何処かに行ったが、鬼騎はどうするのじゃ?」

と、その時だ。
ロアがそんな事を鬼騎に聞いた。
皿を洗いつつ応えてくる。

「俺か? 俺は皿洗いを済ませて、犯人探しとやらをする、だが……料理の下準備の事もあるから、あんまり手伝えんな」
「そうか……大変じゃな」
「あぁ、まったくだ」

お互いに苦笑する。
断れない事を頼まれるのって辛いよな……。

ため息を吐いて、皿洗いを続ける鬼騎、それを少し見た後、ロアが俺の手首を掴んでくる。

「さて……わらわ達も行こうではないか」
「あぁ、行くのは良いが……やっぱり手は繋ぐんだな」
「当たり前じゃっ、では行くぞっ! サクッと犯人らしき者など見付けてやるのじゃ!」

むふぅぅっ、鼻息を出して部屋へと出ていくロア……手首を掴まれてるので、俺も出ていく。

「おっおい、張り切るのは良いが……ゆっゆっくり歩け!」
「くはははっ、すまんすまんっ」

からからと笑うロア……それを見て俺は苦笑した。
ふぅ……こりゃぁ、明日は筋肉痛になりそうだな。

そう思いながら、犯人探しが始まった……。
有り得ない事だが、この面倒な事をさっさと解決したいから、犯人の方から、ひょこっと出て来る事を願ってるよ……。

まっ、そんな事は有り得ないから地道に探すか。
はぁ……ヴァームめ、面倒な事を押し付けやがって……なんらかの不幸が起これ! そう思った俺であった。

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