どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

25

辺りが暗い完全な暗闇に1人俺が立っていた、此処は何処だ? 俺は何故此処にいる? 辺りを見渡しても誰もいない……どうやらここにいるのは俺1人だけの様だ、なんだろう……妙に身体が温かい、それに暗闇なのに不思議と気分が良い、これは夢なのか? だとしたら変わった夢もあった物だな……起きてる時も夢見たいな事が起きてるから大差ないか……よそう、そんな事を思ったら気分が滅入ってしまう、気分転換に少し歩いて見ようか……そう思って足を上げようとした時だ、動く事が出来なかった……。

「足が……上がらない?」

足元を見てみると暗闇が俺の足にまとわりついていた、粘着性のある黒っぽい何かが俺の足を捕まえてるみたいだった、まるで泥濘ぬかるみにはまったみたいだ……正直言って気分が悪い、苦笑しながら遠くを見てみる、何かあるかも知れない……そう思ってじっと目を凝らす、こうでもしないと駄目になりそうだったからだ……ん? 
ひたひたひたーー
微かにだが足音が聞こえる……それとチカチカーーと何かが光っている、どうやら誰か来たみたいだ、こんな所に一体誰が? 何も無い場所と言うのに……まぁこれで安心した、その人に此所が何処なのか聞いてみよう。

「……!」

そう思って声を出そうとした時だ、俺は向かってくる人物の姿を見て驚いた。
その人物は背が低かった、それにその人の身体の周りに淡い光を放っている、ゆっくりとこっちに歩いてくる、顔が見える距離になった時やっとその人が誰だか分かった、間違いない! ロアだ! 俺と初めて会った時の姿……小さくて艶のある紫色の長い髪の毛、そしてヘソをだした服装、なぜロアが俺の夢に? そんな事を思っていた時だ、ロアは俺の近くへよって抱き付いてきた、なっなんだ? 何をするつもりだ?

「おっおいロアっ離れ」
『わらわは夢を果たす……その為にシルクを此処に連れてきたのじゃ』
「……は?」

エコーが掛かった声で話すロア、とっ突然何を言っている? 何故そんな嬉しそうに話す……起きてる時は一言もそんな事言って無かったよな? 困惑する俺を他所にロアはぎゅーと抱き付く力が増してくる。

『だからシルクよ……そなたも夢を叶えてくれ、わらわが手助けしよう』

!!
身体に電気が走った……ロアの言葉は俺にとっては衝撃を与える言葉だった、何故お前がその言葉を話す! その言葉は、俺のっ……。

「シルクっ!」
「っっ!?」

それは突然の事だった……辺りが急に明るくなった、ここは……ベットか? 俺はその上で横になっていた、軽く見渡してみるとロアの部屋だと言う事が分かった。
うっ……急に気だるさが出て来た、そうか……俺あの洞窟で訳も分からず倒れた、そして気を失って此処に運ばれた訳か……目の前にはロアが心配そうに俺を見下ろしている。

「じ……じるぐぅぅ」

なっ泣いてる……ぼろぼろと大粒の涙が俺の顔に零れ落ちる、俺の肩を優しく握りしめ俺に覆い被さっている……なんか恥ずかしいな……ってなんだ? 俺が目を覚ましたのを気付いたのか? 急に力が……って、ゆっ揺らして来たぞ。

「……おっおい、ゆっ揺らす」
「うわぁぁぁっ、じるぐぅぅっ、起きてくれたのじゃぁぁぁ」
「ちょっ……やめ……うぐっ、ゆっ揺らす……なっ……はっ吐く……うぷっ」

俺に構わずぐわんぐわん揺らしまくってくるぞこの魔王! やっやばい……このままじゃ本当に吐く! 俺がきっ気分が悪いの分かってるのに……何故こんな事を……うぐっ……はっ吐くっ吐いてし……まう。

「ロア様、そろそろやめませんとシルクさんが辛そうですわ、もう顔が真っ青ですの」
「そうです一度離れて下さい、シルク様と着ている可愛い服が汚れてしまいます」

俺が今にも吐きそうになった時だ、ヴァームがロアを羽交い締めして引き剥がしてくれる、ラムも言葉でロアを制してくれる……あぁ助かった、なんか初めてヴァームとラムに感謝したきがするな……。

「あっ……ありがっげほっげほっ!!」
「むっ無理に喋らなくても良いですの!」
「そうです、静かにしていてください」
「あぁぁぁっ、じるぐぅぅ目が覚めてよがっだのじゃぁぁぁ!」

冷静な二人に対してこの魔王はさっきから泣いてばかりだ、心配してくれてるんだな……。

「汗をお拭きしますね」

騒ぐロアをラムが押さえつけ、ヴァームが俺の元へ近付いてくる、どうやら額に出た汗を拭ってくれるみたいだ、今気付いたが近くに小さなテーブルがある、その上に水の入った器とタオルがあった。

「じっ自分で……する、げほっげほっ!」

気だるさを感じながら身体を起こしてヴァームに訴えるが首を横に振られて断られてしまう。

「その体調なんです、大人しくしてください……ほらゆっくり寝ていてください」

少しきつめに言われてしまった、これは従うしか無いな……ん? 何だろう今着ている服……さっきのと違うな、着替えさせてくれたのか? まっまぁ……緊急時だなら水に流しておこう、と言うか何だよこの服は……可愛すぎないか? オレンジと白の水玉のパジャマって……まさか下着も変えたんじゃないだろうな? かっ確認したいが今は止すとしよう、身体がだるくてその気力すら起きないからな……。

「少し冷たいですよ……」
「んっ……」

そんな事を思っているとヴァームが濡れたタオルで俺の額を拭いてくる、熱で火照ったら身体に冷たい感触がして少し気持ちが良かった。

「ここが良いんですか?」
「あっあぁ……気持ちいい」
「そうですか、では続けますね」

丁寧に額を拭いてくるヴァーム……なんか引っ掛かる言い方なのが気になる所だ、表情も何処か妖しげだ……いっ今は気にしないでおこう。

「ヴァーム……あっ後はわらわがするのじゃ、もう落ち着いたから安心せい」
「分かりました、ではよろしくお願いしますね」

ラムの側にいたロアはうつむき加減に話してくる、さっきの事を反省している様だ……それを見たヴァームは何処か口惜しそうに了承しつつ何かを胸元から取り出した、本当に表情が気になるな……でいつもの様に胸元から取り出したのは緑色の布と髪ゴムだ……それをロアに手渡すヴァーム、ん? ここで思う所があって俺は頭を触る。

「俺の……バンダナが無い、あと……髪ゴムも」
「調子が悪そうだったからのぅ、すまぬが取らせて貰ったのじゃ」
「……そうか」

成る程な……看病する為にとったのか、だからってバンダナを女性の胸元に入れておくな! と言う突っ込みは言いたいけど、この体調の性で言えなかった。

「……なぁ、けほっ! 俺……何で倒れた……んだ?」

はぁはぁ……と息を切らしながら聞くとラムが俺の側に近付いて来た。

「そっそれは……とあるきのこの性ですの」
「……茸?」

茸か……そんなの身に覚えが……! あったな……あの毒々しい色をした茸か? 確かあの茸から出た煙を吸ったよな? そうか……あれが原因か。

「あっあたしがしっかり見ておかないばっかりにシルクさんをこんな目に合わせてしまいましたの……全部あたしのせいですわ」

深々と俺に頭を下げてくるラム……そんなラムの頭を軽く小突く。

「あほ……別にお前の性じゃない、俺が……気を付けなかったから……こうなったんだ」
「でっですが!」
「ですがも何も無い……納得行かないなら……両方悪かったと言う事にしてくれ……な?」

俺は優しい目をラムに送る、顔を上げたラムがじぃーーと俺を見つめこくんっと頷く。

「後はロア様に任せましょう」
「そっそうですわね……ではロア様、後はよろしくお願いしますの」
「うむ、任せておくのじゃ!」

にっーー
と元気な笑みを浮かべるロア……だが何故だろう? その笑いは悲しみも含まれていた、ヴァームとラムがこの部屋から出ていって残されたのは俺とロアだけだ。

「身体を拭くのじゃ」
「あぁ、頼む……」

ロアは俺の側へやって来る。

「顔が赤いのぅ……熱の性じゃな」
「まぁな……げほっ! お陰で気分が……悪い」

そんな会話を交わしながらロアは俺の額の汗を拭いてくる。

「っ……しっシルク!」
「どうした? 泣きそうな……顔してるぞ?」

俺がそう言うとロアが俺の胸元に顔を埋めてくる、俺は黙ってそれを受け入れた……。

「全て悪いのはわらわじゃ……わらわがあんな事を頼んだばっかりにシルクは……」
「それくらいに……してくれないか?」

様子が可笑しかったからなんだと思ったがそう言う事か……何時もは俺の事、お構い無しに抱き付いてくるのに……。

「ラムにも……言っただろ? 両方悪かった……そう言う事にしとけ……」

少し重くなった手をロアの頭に載せ優しく撫でる……するとロアの顔が真っ赤になっていく、風邪でもうつったのか?

「っっっ、そっそう言う事にしておくから、ってってててっ手をおろっおろろろっ降ろさぬか!」
「あ……悪い」

直ぐ様、手を退かす……なっ何か俺を睨み付けて来てる。

「脱げ」
「……は?」

突然変な事を言って来たロア、ぷるぷると身体を震わしながら自分の長い髪の毛と膨満な胸を揺らしながらびしっと俺に指差す。

「濡れているじゃろう? ふっふふふふっ拭いてやるから全部脱ぐのじゃ! こっこれはシルクからスキンシップした罰でもあり看病の為なのじゃ!」
「変な言葉の言い回しは止めろ、しんどいのに……突っ込ませるな……げほっげほっ!」

俺が咳をするとロアは慌てて俺の背中を擦ってくる。

「それに、こんな……体調なんだ、服を脱ぐのは不味いだろ……」
「まぁ……しっしんどそうではあるが、汗を拭かぬと余計に悪化するとメェが言っておったからのぅ、良いから脱がぬか!」

うがぁぁっと襲い掛かってくるロア……勿論抵抗は出来なかった。

「おっおい! やめっげほげほっ! 止めろっ! ってメェって誰だよ……」
「この城の医者じゃ、中々優秀な腕を持っているんじゃぞ?」

いっ医者……いたんだな、今まで会わなかったから気付かなかったよ、と言うかもう既に上半身裸なんだが……相変わらず行動が早い奴だ。

「身体は起こせるかえ?」

優しく語りかけてくるロア、もう此処まで来たら断れないか。

「あぁ、起こせる……ぞ」

身体に残った力を振り絞って上半身を起こしてベットに座る。

「ぱぱっと終わらせるから安心するのじゃ……あっ、髪持っててくれるかえ?」
「あぁ分かった……頼んだぞ」

ロアに俺の長い髪を持っているように言われた、一回り出来る位に俺の髪……長かったんだな、ちょくちょく切ってはいたが長すぎだな、仕方無いか……あの娘との約束だから……な。

「では、始めるのじゃ」

ロアは俺の背後にまわる、他人に身体を洗われるのは久しぶりだ……しかも相手は魔王、俺って何か凄い経験をしているな……。
さて、ロアも流石に体調が悪い俺に何もしないと思うし任せようか……。

そう思っている間にロアは俺の身体を拭き始めるのであった……俺は目を瞑って終わるのを待つ事にした。

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