どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

200

ここは医務室、さっきのメェの部屋と違って、こっちは普通の医務室、変わった所は何もない。

「呑気に寝てる、なんか腹立つなぁ」

そこにある、白いベットに寝る大きな鬼人、鬼騎を見下ろす。
今日で2回も気絶したと言う鬼だ。

実はこれ、珍しい事はない。
最高で1日に7回気絶した記録がある、7回だよ7回、信じられる? 嘘みたいでしょ? その理由全てが、メェに軽く触られた、だとか、ハグされたって言う理由なんだよ?

いくら想い人、じゃなかった、想い獣人だからって意識し過ぎだよ。
その盛りに盛った男気溢れる筋肉は飾りかって言いたいね。

「……」

と、色々思いながらベット横の丸椅子に座る。
鬼騎は、すぅすぅっと寝息を立てて寝ている。

先程、メェが濡れタオルを変えたのか、冷たい。
……さてと、こうやって、このヘタレ鬼を見てるってのは面白くないから、ここで一発仕掛けようか。

取り合えず頭を、思いっきり叩こうかな? いやいや、それじゃ生ぬるい。
側に置いてある、桶一杯に水を汲んで、顔に思いっきり掛けてやろう、うん、それが良い。

馬鹿みたいな悪戯を考えてたら、にやけてしまった。
まぁ、今からするのは……照れてないで、ドンッと構えろ! と言う意味の悪戯、悪い事じゃないよね?

という訳で準備しよう、って……ん? なんか布団がもこもか動いてる。

「くっ……んんっ、はっ!」

バッ! 布団を勢い良く吹っ飛ばして目覚めた。
そして、辺りを見渡す。
……うっわ、起きたよ、この脳筋、つまんないなぁ。

折角悪戯しようと思ったのに、あと5分くらい寝てなよ。

「めっめめっメェさん! おはようございますですま……」

悪戯が出来なかったら白い目線を向けてたら、鬼騎と目があった。
なんか喋ってたけど、僕を見た途端、喋るのを止めて口をあんぐり開けたまま、喋るのを止めた。

「いま、おはようって時間じゃないよ、遂に時間の感覚まで忘れた? と言うか、挨拶ぐらいちゃんと言おうね」

そんな鬼騎に対して、足を汲んで嘲笑いながら言ってあげた。
そしたら、ゆっくりと口を閉じ、口に力を入れて僕を睨んできた。
え、なに? 僕、睨まれる様な事したかな? と言う反応をしておこうか、きっと面白いくらい、怒るだろうからね、くふふふふ。

「ざまらんかい! なんだお前がここにいるんだっ、めっめめっメェさんは何処にいるんだっ」
「隣でご飯食べてるよ」

くははは、ほらっ、大声だして怒った。
しかも、メェの名前言う時だけ、震え声だね、あぁ面白い。

「何をヘラヘラしとんじゃ、舐めとんのか!」
「舐めてないよ? からかってるんだよ」

あっ、ベットから立ち上がった。
凄い見下ろしてきたね、この勢いで胸ぐら掴まれるかも。
くふふふふ、睨みも強くなってきたね。

「それくらい睨めるならさ、メェに対しても強気で行きなよ、じゃないと、いつまで経っても告白出来ないんじゃない?」

からかうのは、この言葉を最後に終わる事にしよう。
これ以上やったら1発殴られるかもしれない。

「んっ、なっ! おまっ、なっななっ何を言って……」

くふふふ、拳強く握って震えてるね。
確信突かれて動揺してるんだ、ほんと鬼騎って心を読みやすいから面白いよ。

まぁ、気に食わない奴ではあるけどね……。

「っ、なんだ、いきなり白けた目をして」
「別に?」

鬼騎の言葉を聞いて、そう呟いた後、立ち上がり鬼騎の後ろへと歩いていく。

「……ちっ、相変わらず会った時からいけすかん奴だな」

すると、吐き捨てる様に言って、鬼騎が僕の隣に歩いてきた。

「なに? 何で隣に立つのさ」
「あぁ? 別に意味はねぇよ」

だったら、もう少し離れれば良いのに。

「おいシスコン」
「なにさ、脳筋」

ぶっきらぼうに語るので、僕も同じ様に言ってやる。
そしたら鬼騎は部屋の出口へと歩いていく。

「今日の料理は誰が作った?」
「僕だよ、代わりに作ったんだから、感謝しなよ」

鬼騎が倒れなければ僕はやってないんだからね。
でも、好きな料理を食べれたから、その辺は「倒れてくれてありがとう」て満面の笑顔でいってやりたいね。

「そうか……」

ん? 鬼騎が僕の方を向いた。
そして、少しだけ視線を反らして軽く頭を下げてくる。

「ありがとよ、皆の飯を作ってくれて」
「……別にお礼なんて言わなくて良いよ、作りたくて作ったんだからさ」

こいつから、お礼を言われると変な気分がする。
だから、素っ気なく返してあげた。
そしたら、鬼騎は、少し間をあけた後「そうか」と呟いて部屋から出ていく。

一人医務室に残された僕、取り合えず、もう一度椅子に座る。
そして、そのまま天井を見上げる。

「全く、僕にお礼を言えるなら、メェに告白ぐらい出来るだろうに……」

やっぱり好きな相手だと緊張するものなんだね。
いや、あいつの場合は緊張し過ぎだ。

それに、うじうじ相手がどう思ってるか考え過ぎている。
そのまま前に進まないで、足踏みばかりし続けてる。

鬼騎との付き合いは長いから、そう言う様な事は何度も見た事がある。
最初の頃は良かったよ、それを見てニヤニヤしたものだよ。

でも、時を重ねていっても、あの常態から進展しない。
正直に言うと、見ていてイライラするレベルだね。

もうストレートにどんっ! と言って欲しい物だよ。

「って言う考えは、僕に好きな相手がいないから言えるんだろうね」

……僕に好きな人が出来た場合、僕はその人に対してどうするのか。
予想なんて不可能だ、もしかしたら鬼騎以上に好きな人を前にしたら挙動不審になるかもしれない。

だから、あんまり言わない方が良いんだろう。
……でもね、僕はこう思うよ、好きって気持ちは、早く伝えた方が良いってね。

「……うっわ、柄にもなく青臭い事考えてるね、恥ずかし」

顔を紅くした僕は、ぺちんっと頬を叩いて落ち着く。

まぁあれだね、鬼騎の事も、シルク君の事も早く解決すると良いって事だね。

「……」

その時だ。
ふと、アヤネの事が頭に過った、何でかは分からない。

「そろそろ何処かへ行こうかな……」

僕は立ち上がり、気持ちを切り替える為に手を叩く。
アヤネの事は、僕がどうこう考えて良い事じゃない。
僕は姉上の恋路を応援してる。
結果的にアヤネの気持ちを踏みにじっている様な物だからね、僕にアヤネを心配する資格はないよ。

そう心の中で語った後医務室を後にした。
今日は自室でゆっくりしようかな。

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