どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

179

それはシルク達が海に行った時の事……。
シルクがいた街では騒がしく鎧を着た兵士達が慌ただしく走っていた。
この人達はなんだろう、兵士だろうか?

「どうだ、見つかったか?」
「ダメだ、東の方へ探しに行った奴も見つからないってよ……」

その街の大通り、息を切らせながら話し合う男……どうやら誰かを探してるらしい。

「……まったく、どこへ行ったんだろうな」
「あぁ、ほんとそれだよ……アホの癖に行動力はあるんだよな……」

はぁ……、ほぼ同時にため息をつく兵士、その内の1人が頭を面倒臭さそうにかきながら話し出す。

「まぁ、そんなアホなお方でも心配する方がいる……探そうか」
「そう……だな、じゃ俺は1度フドウ様に報告してくる」
「あぁ、任せた」

そんな話をして、兵士達は別れる。


「そうか、見付からないか……ふむ」
「申し訳ありません」

場所は移り変わる。
ここは立派なお屋敷の一室、そこに髭を蓄えた体格の良い灰色と白を使った気品溢れる服を着た男が腕を組んで窓を見る。
その男は先程、街にいた兵士の1人を見て目を細める。

「そんなに気に病むな、別に直ぐに見付け出して欲しい訳じゃない」
「しっしかし……」
「しかしもかかしもない……落ち着け、落ち着いて探せ、そうしなければ見付けられない」

なにやら人探しをしてるもよう、はて? だれを探してるのか……体格の良い男は顎に蓄えた髭をさすりながらまた窓を見る。

「わっ分かりました、落ち着いてさがします」
「うむ」
「では、失礼致します……」

鎧を着た男が深く頭を下げて部屋から出ていこうとする、その時……窓の方を向いたまま男はこう言ったのだ。

「待て……」
「はっはい!」

呼び止める、身体をびくつかせ敬礼する男……額に汗を
掻いてる、そんなに動いていないのに大量に……これはあれだろうか? 体格の良い男から出る雰囲気による物だろうか?

「人手は足りているのか?」
「えっ……あっ、はい! その点につきましては大丈夫です」

ビシッと姿勢を正して言い放つ、それを聞いた体格の良い男は……三度鎧を着ている男の方を向く。

「そうか……なんかすまんな、我だけ屋敷にいてあれこれ命令して」
「気になさらないでください、貴方様は我々の主なのですから……」

そう言われた体格の良い男は「うぅむ……」と呟き顎を擦る。

「だが、なんか罪悪感があるのだ」
「罪悪感なんてとんでもない、貴方様はドンと構えて命令を下さればいれば良いのです」
「それで……いいのか?」
「それで良いのです」

その言葉を聞いた体格の良い男は腕を組む、そして目を瞑った。
鎧を着た男は何やら焦っている様子、慌ただしく続けていった。

「元来主とはそう言うものです、じっとしていてください」
「だがなぁ、1人だけ屋敷にいるのは1人の人間としてダメな気が……」
「だっダメではありませんっ、どうか我々にお任せ下さい!」

勢い良く頭を下げる鎧を着た男……そしたら体格の良い男の眉がピクリと動き、少しムッとした表情でこう言ってくる。

「お前、我が外に出るのを頑なに阻止しておらんか?」
「っ! いっいえ、そんな事は……ありません」

目が泳ぐ鎧を着た男、体格の良い男が近付いて、じぃと男を睨む。
汗をタラタラかいて目が泳ぐ、完全に図星だ、確実に体格の良い男を外に出したくないのだろう。

「ふむ、決めた」
「なっ……何をですか?」

何を決めたのか? そんな疑問を抱いたのか恐る恐る口を開く鎧を着た男、なにやら大変な事が起きそうだ。

「我も探す」
「っ、おっお止めください! 私共が全身全霊っ、一生懸命っ粉骨砕身の気持ちで探していますので、どうか考え直してください!」

慌ただしく体格の良い男の両肩を持ち引き止める、なにか可笑しい、人を探しているのなら人手は多い方が良いのに……なぜ引き止めるのか?

「うるさいっ」
「ぐっ……」

腕をふり、男を引き払う……ズンズン扉の方へ向かい体格の良い男はこう言った。

「探しているのは我の娘、だから我が探すのが当たり前……それに我は今、外に出たい気分だ!」

そう言ってこの部屋から出ていってしまう、すると鎧を着た男の顔が真っ青になる……。

「まっまずい……まずいぞ、長年住んでいる屋敷なのにも関わらず未だに屋敷の内装を把握できずに迷っている主様が外に出ていってしまった……」

ガタガタと身体を震わせた後、汗を拭い部屋から出ていく。

「こっこうしてはいられない! 皆に報告しないと……」

男は走る、ドンドン走る……鎧をガシャガシャいわせながら走っていく。

そしてとある部屋の扉を開ける、そこには同じ様な鎧を着た男達がいた。
突然入ってきた男に対して「どうかしたのか?」と言葉を聞く前に入ってきた男は一旦深呼吸をして呼吸を整えた後、こう言った。

「たっ大変だっ! 主様……フドウ様が……フドウ様が外に出ていってしまった!」

その言葉を聞いた瞬間、場にいる男達の表情が凍りついた……。

「なっ、ふっフドウ様が外に出ただとっ!」
「自分の屋敷で迷うあのフドウ様がっ!」
「そんなもんっ、外に出たら確実に迷うだろうが!」
「自分の娘を探して自分が迷ったら洒落にならないぞ!」

口々に物凄い事を言う、自分の屋敷で迷う……物凄い方向音痴もいたものだ。

「とっ取り合えず追い掛けよう!」
「だがどうする? 娘様の方も探さないとダメなんだぞ?」

その言葉を聞いて険しい顔をする男達、すると1人の男が壁に拳を叩き付けながら言った。

「くそっ、ブレイブ家の人は強いがアホだから世話が掛かる!」
「まったくだ!」

酷い言い様である、……ん? ブレイブ……どこかで聞いた性だ、気のせいだろうか? 

「愚痴っても仕方ない、探しにいってる人にも状況を伝えてふたてに別れよう……」
「それしかないな……」
「じゃぁ、俺が伝えてこよう」
「頼んだぞっ!」

1人の男が部屋から出ていく……残った男達が続けて話し合う。

「伝えに行く人はまだいた方が良いだろう……じゃぁ、すまないがお前達、伝えにいってくれるか?」
「了解ですっ!」
「残った奴は探しに行こう、厳しいが同時進行だ……フドウ様とアヤネ様を見つけ出すぞ!」
「「おぉぉっ!!」」

っ!
フドウ……そしてアヤネ、全てが繋がった。
この人達はブレイブ家の従者達だ、この人達はアヤネを探していた。
その父であるフドウも……だが方向音痴と言われるその父がアヤネを探しに行った。

で、従者達は確実にあの方も迷うと思い探しに行く。
どうやらアヤネの家出の件が大きくなりすぎてるらしい、まっまぁ……2人共、無事に見付かってくれるのを願っておくとしよう。


……だがこの一件、後々、何らかの波乱が確実に起きそうなのは気のせいだろうか?

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