どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

178

「能筋、それ何のお肉?」
「ミノタウロスの肉だシスコン」

ジュゥゥッーー
肉が焼ける良い匂いがする、そんな匂いを楽しみながら俺達はBBQをしてる。
空は茜色と紺色が混じった様な空……うん、とても綺麗だ。

「野菜っ、野菜は全部メェのですっ」
「あらあら、焼く前に食べちゃダメですよ?」

メェが焼く前の野菜を食べようとするのを阻止するヴァーム、それを横目で見た鬼騎が微かに微笑んでる……だがその微笑みはちょっと怖い。

「ヘッグてめぇBBQしてんのに果物食ってんじゃねぇよ」
「俺はコレしか食べられないのさ、イケメンだからね」

串焼き肉を食べながら海パン姿で果物をかじるヘッグ。
水着姿でいるのはヘッグだけ、他は涼しい服を着ている、なぜ1人だけ海パンなのか……答えは簡単だ、イケメンだからだそうだ。

で、イケメンだから果物しか食べないのは違うだろ、と思ったが口に出さずに俺は皿に乗せられた肉を食べる……うん、ミノタウロスとか言う肉は旨いな。

モグモグと咀嚼そしゃくしながら騒がしくて食事を楽しむ皆を少し遠くで椅子に座り見てる……。
横にはもちろんロアとアヤネがいる。

「肉、肉、肉……くふふふ、BBQとは素晴らしいものじゃのぅ、肉が食べ放題じゃ」
「ロアは分かってない、BBQと言えば野菜、特に焼いたカボチャが至高、異論は認めない……でもお肉も旨い」

食べづらい、とっても食べづらい……そう思いながらも肉を食べる、柔らかくて美味しい。

「くふふふ、なにをふざけた事を……と言いたい所じゃが今は言い争うのはよしておくかの」
「うん……今はシルクとイチャイチャしながら食べたい気分」

……2人の視線を感じる、見てないで食べればいいのに、早くしないと欲しい物全部食べられるぞ。

「では、お約束の……あーんじゃ」
「私もあーんする」
「俺は良いから食べろよ……」

と、そんな事を言っても無理矢理ねじ込んでくるのがこの2人だ。
イチャイチャしたかったらもっとやり方があるだろうに、ってこれだと俺がイチャイチャしたいみたいだな、……違うぞ、ご飯は静かに食べたいんだな、本当だぞ。

だが……騒がしく食事するのもたまには悪くないな。

「あっ……シルクが笑った」
「笑っちゃダメなのか?」
「そんな事ない」

だから自然と笑みがこぼれてしまう、楽しいな……。

「くふふふふ、ではもっと笑わせる為に今から口移しを……」
「しなくて良いからな?」

ペシッーー
強めのチョップをロアの頭にぶつける、アヤネも何かをしそうだったので同じ様にチョップ……騒がしいのはたまには良いと言ったが限度はある。

「……なぁ、ロア」
「ん、なんじゃ?」

と、ここで頭にふと思い浮かんだ……と言うか、ここに来て暫くしてからも思ってた事だ、だから今聞いておこう。

「いつ魔王城に帰るんだ?」
「海に飽きたらじゃが?」

なるほど、真顔で凄いことを言ってきたな。
そうか、飽きたらか……正直言えば俺はもう飽きたんだが、ロアはまだ飽きてないらしいな。

「なんじゃ、その呆れた顔は……不服か?」
「いや、何でもない……気にするな」

ここで、「俺は飽きた、だから帰ろう」と言ったらロアは不満そうな顔をして「そんな事を言う口は塞ぐのじゃ」とか言ってキスしてくるだろう。

はぁ……受け入れると決めたんだが、中々しんどいな。

「浮かない顔してる、私のお肉をあげる」
「あっ……ありがとう」

アヤネが俺の皿に肉を置いてきた。
と言うかさっきから食べ過ぎだ……食べる、肉と野菜を取ってくる、食べる、の繰り返しだ。

少食の俺にはとても考えられない量を食べている気がする……。

「のぅ、シルク……」
「ん?」

ロアは、じぃ……と俺の顔を見てくる。
っ……そんなに見られると恥ずかしい、だから少し視線を反らして返事をする。

「食べ終わったら花火、その次は散歩しないかえ?」
「いや……出来れば寝たいんだが」
「抜け駆けは許さない……私も同行する」

……もう次やる事を決めてるんだな。
まっ、ロアとアヤネらしいと言えばこその言葉だと思うが……少し遊び過ぎだと思う。

「うふふふ、油っ……油があたしの身体を巡りに巡ってますわぁ」

とか思ってたら、ラムの体内が偉いことになってる。
もう、水と油が分離してる……なんか、キモい。

「くふっ、くふふふ……楽しみじゃのぅ、さぁシルク! 楽しむ準備をするのじゃっ」
「うん、楽しむ準備は必要……だからエネルギーを蓄える為にお肉食べてね」
「いや、もう食べられないからいらない」

俺はもう腹一杯だ、鬼騎に水貰ってくるか……。

「そう言えばシルク」
「ん?」

立ち上がった時、ロアが俺の服を引っ張って来た。
なんだ、今度は何を言ってくるんだ?

「酒は呑まんのか?」
「呑まない、ぜったいにっ」

呑んでたまるか、呑まされそうになったら全力で暴れてやる……。

「私は呑んでる」

アヤネはコップを手に取る、シュワシュワ言ってる紅い酒だ……綺麗な酒だな。

「ほぉ……その割りには様子が変わらんのぅ」
「酒には強い娘、アルコールには負けない」
「だからと言って呑みすぎるなよ?」
「ん」

くぴくぴお酒を呑むアヤネ、そしたらロアが立ち上がってきた。

「では、わらわも呑もうかの」
「そか、呑みすぎるなよ」
「くふふふ、魔物のアルコールの強さを舐めるでないぞ?」

あぁ……そりゃ人間と魔物では身体の構造が違うよな、だが……。

「その言い回しは酔う振りか?」
「ちっ違うわぁぁっ!」

微笑みながら言ってやる、そしたら顔を真っ赤にしてポコポコ叩いてきた。

「このっ……わらわをからかうなと言っておるのに」
「たまには良いんじゃないか?」
「良くないっ!」

そんな言い合いをしながら鬼騎の所へ行く俺とロア、アヤネはそこで待っているのか? と思って振り替えると……アヤネも着いてきた。

「シルク、夏ならではの事をやり尽くすぞ」
「全部楽しまなきゃダメだよ?」
「あぁ……そうだな、やり尽くすし楽しむよ」

体力が持ったらな……と小声で呟いた後、俺は微笑んだ。

どうやら、まだまだ俺達の海での生活は続きそうだ、全く……帰るのはいつになる事やら。

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