どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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「おはようございます、シルク様」
「おっおはよう……ヴァーム」

なんてこった、もう一度言う、なんてこった。
リヴァイに着いていったら導かれた場所はヴァームの所だった。
俺とロアとアヤネと同じ内装の部屋、畳の上にクッション……か? 紫色の四角い物を敷いて正座している、服装は何時ものメイド服だ。

「あらあら、なぜ固まっているんですか? ほらっ、こちらに来て下さい」

で、入り口で固まってたらヴァームが微笑み手招きしてくる、このまま逃げたい……だがそれは叶わないだろう。
なぜなら既にリヴァイによって退路をたたれているからだ、くそっ……さっき前にいたのに何時の間に背後にまわったんだよ!

「今はコスプレする気分じゃないんだが?」

逃げるのが無理なら抵抗だけしてみる、だから本音をぶつける、今はこんな事をしてる時じゃないんだ。
すると、ヴァームは驚いた様に目を見開きくすりっと笑う。

「あらあら、何か勘違いしてる様ですね」
「……なっなに、勘違い……だと」

ちっ違うのか? ヴァームがいると言う事はそう言う事だと思ったんだが……違うらしい。
だっだが油断はしてはダメだ、きっと裏がある筈……って、おぉっ!?

「りっリヴァイっ! 担ぐな!」
「うっせぇ、てめぇは黙って言う事聞いてりゃ良いんだ」

ぐぉっーー
勢い良く持ち上げられる俺、リヴァイに肩に担がれヴァームの側に下ろされ強制的に座らされる、その後リヴァイはヴァームの横にあぐらをかく。

「ふふふ、随分と困惑してますね……今すぐにでもコスプレさせたいくらいです」
「ぐっ……やっやっぱりさせるつもりじゃないか!」
「いえいえ、ほんの冗談ですよ? メイドのお茶目な戯言です」

気にしてはいけません、そう呟いてウィンクしてくる。
なっなんなんだ、この状況……俺はいったい何をさせられるんだ?

「……さて、そんな戯言は置いておいて、そろそろ本題に入りましょうか」

さっきとうって代わって真剣な表情になる、場の空気がピリッと張りつめた。

「単刀直入に言いますね」
「っ……」

ごくりっーー
唾を飲み込む俺、ヴァームとリヴァイは俺を見つめながらこう言った。

「今日はアヤネ様とロア様とで遊んで下さい」
「……あっ遊ぶ……?」

えっ……なっ……遊ぶって、そのまんまの意味の遊ぶだよな。
と言うか、なんでヴァームとリヴァイがこんな事を言ってくるんだ?

「てめぇ今、なんでこんな事を言うんだって思ったか?」
「っ!」
「……図星か、分かりやすい奴だ」

リヴァイは舌打ちをしつつ畳を軽く殴る。

「最初に言ったよな? てめぇは固いんだよ、もう少し柔らかくなりやがれ」
「……」

呆れた顔を見せため息をつくと、次にヴァームが口を開いた。

「私とリヴァイは考えたんですよ? きっとあの3人は深く悩んでいると……」

たっ確かに悩んでいる……だがなんで一緒に遊ぶって結論になったんだ、他にすべき事があるんじゃないのか?

「ふふふ……まぁあれです、固い話しは抜きにして遊んで下さい」
「あっ、遊ぶって言っても……俺は!」

身をのりだしながら言う俺、その言葉を遮る様に……リヴァイはこう言った。

「昨日の原因は自分にあるだとか、どうやって元気つかせるとか……正直まどろっこしいんだよ、んなもんは全部ひっくるめて忘れて遊べ!」
「っ、いっいや……流石に忘れるのは……」

ダメだろ、そう言おうとした、そしたらまた言葉を遮られた。

「この場合空気なんて読まなくて良いと思いますよ? テンション高めに遊びに誘って下さい」
「でっ……でも」
「あらあら、まだ悩みますか?」

ふぅ……。
やれやれ、と言いたげに手を広げるヴァーム、なっ悩みますかだって? そりゃそうだ……悩むに決まっている。
あの時の原因を作ったのは俺、そんな俺が遊びになんて誘ったら……アヤネはどう思うんだ?

「立場がどうであれ、アヤネさんは誘ってくれたら嬉しいと思いますよ?」

……はたしてそうだろうか、何時ものアヤネならそうだろうが今の状態じゃ、誘ったら怒るかもしれない。

「私は何もしないよりかはマシだと思います、この方法が納得いかないのでしたら……シルク様は他に考えている方法があるんですか?」
「っ……そっそれは」

……無い、あれだけ悩んで置いて何も考えついてない。

「だったら俺等の案をのみやがれ」
「その通りですよ、あっ……その時はロア様も誘ってくださいね? きっと2人きりだと知ると嫉妬して大変な事になるので」

……正直、普通の方法では無いと思う。
これでアヤネが元気になるとは思えない……昨日の俺はアヤネを選ばなかった。
そんな奴が今更遊びに誘おうとしてるんだ……どう考えても可笑しいだろう。

と言うか選ぶとか選ばなかったとか……あの状況で俺は考えるべきじゃ無かったんじゃないか? くっ……だめだ、考えすぎて頭が痛くなってきた。

「考え事の最中、申し訳ないのですが……1つ言わせて下さい」
「なんだ?」
「考えるのを止めるのも選択の1つですよ」

……考えるのを止める、か。
ははっ、そんなの出来る訳が無い。
なぜなら、考えないと答えが出ないからだ、まぁ……さっきは考えても答えは出なかったけどな……。

「ふふふ、どうしますシルクさん……やってくれますか?」
「………あぁ、やるだけやってみるよ」

悩んだ結果の答えだった。
この選択でどう動くかなんて分からない……。

「そうですか、やってくれますか」

微笑むヴァームは、静かに立ち上がると俺の前へとやって来る。

「では、お部屋まで送ります……」
「あぁ……」

頷いた後、俺も立ち上がる、するとリヴァイも立ち上がって俺の前に立った。

「俺からも1つ言わせろ……」

っ……凄い威圧感が出ている、なっなんだ? 何を言うつもりだ?

「遊ぶ時は遊びに集中しろ……よけいに悲しませたく無いんならな」
「………あぁ、肝に命じておく」

そんな俺の言葉を聞いたリヴァイは「おぉ……」と呟き後ろを向く。

「後は頼んだぞ……ヴァーム」
「えぇ、任せて下さいリヴァイ」

そんな挨拶を交わした後、俺とヴァームは部屋から出ていく、それからは静かに元いた部屋へと戻っていく……。

アヤネとロアを遊びに誘う、そう言えば俺から誘うのは無かったかもしれない。
……こんな状況で初めて誘う事になるなんて思わなかった。

……よし、遊びに誘うと決めたならしっかり誘おう。
そしてアヤネには元気になってもらう、ロアともギクシャクした感じになっていたからな……それも何とかして見せる。

さぁ……しっかりやるんだぞ、俺!

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