どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

164

ヴァームとリヴァイが肝だめしから帰って来て今度はヘッグが1人で肝だめしをしに行った。
本来ならラムも参加する予定だったんだが……空の星になってしまって1人になってしまった。
ヘッグ本人は「肝だめし……度胸を試す行事、故に1人で行くのはクールじゃないか 」と爽やかに笑って颯爽と肝だめしに向かった……いつでもブレない奴だなぁ。

「ふふふ……シルクさん、私久し振りに貴方のメイド服姿が見たいのですが……してくれませんか?」
「……いきなり変な事を言うのは止めろ」

さっきまでやる気を消失してたヴァームがいつもの状態に戻ってブレない奴になってしまった。

「あらあら、変とはお着替えの事を言ってるんですか?」
「そうは言ってない、だから手をわきわきさせながらこっちに来るな!」
「ふふふ、恥ずかしがらなくても良いんですよ? いつもみたいに身を委ねて下さい」

いや、あれ……身を委ねてるんじゃなくてお前が俺を取っ捕まえてコスプレさせてるんだからな? 分かってるのか?

俺はゆっくりと後退りする、だがヴァームは構わず俺にゆっくりと尻尾をふりふりさせながら歩み寄って来る。

「ヴァーム、すまぬが……今は止めてくれぬか?」

と、その時だ……いつもなら手を組んで俺を捕まえに来るロアが俺の前に立ってヴァームを静止させた。
不満げなヴァームは、じぃっとロアを睨み付ける。

「いくらロア様の頼みでも了承しかねます……可愛い男の娘をコスプレさせるのは私の生き甲斐、邪魔をしないでくださいませんか?」
「迷惑な生き甲斐だな……」

ため息まじりに言った台詞を見事にスルーされ、ロアは真剣な表情でヴァームを見つめる。

「頼む、そこをなんとかお願いするのじゃ」
「っ! ろっロア様、従者の前で頭を下げるのは止めてください!」

なっなんと……ロアが頭を下げた、こんなの見るのもはじめてだ、リヴァイもそれを見て目を見開いている。

「……わっ分かりました、今は退きます」
「すまぬ……」

そう言った後頭を上げたロアは俺に寄り添い腕を組んでくる。

「しっシルク……少し向こうで話をせんか?」
「話……?」
「そうじゃ……なっなに、そんなに難しい話ではない」

上目使い……頬は紅潮している。
俺の心がドキッーーと脈打った、これは断れない……だから俺は「分かった」そう言おうと口を開いた。

ドゴォォォンッーー

「「………っ!」」

その時だ、空気を震わす位に強烈な轟音が響いた、なっなんだ今の音は! 俺は辺りを見渡した、だが変わった様子は見られない。

「ロア様、側を離れないでください」
「うっうむ……シルクよ、絶対にわらわから離れるでないぞ?」
「あっあぁ、分かった」

緊張が走った……なんだ? なんなんだ今の音は、何かただ事じゃ無い事が起きた気がする。

ごくりっ、生唾をのむと同時に涼しい風が草木を揺らす……。

ガサガサっーー
っ! 茂みが動いた……皆の視線はそこに集中する。

ガサッガサガサーー
茂みの揺れは大きくなる、それが暫く続いた後……彼は現れた。

「皆、無事かい?」

ヘッグだ、息を荒げながら茂みからヘッグが出て来た。

「……えぇ、無事ですよ」
「それは良かった……突然轟音が聞こえたから何事かと思ってね、急いで戻ってきたのさ」

ふぅ……一息ついて髪を上にかきあげる。
出て来たのがヘッグで良かった、一瞬誰かと思った……。

「ふふふ、心配してくれて有難うございます」
「いや、礼には及ばないよ……当然の事をしたまでさ」

こんな時でもクールに返すんだな……と今はそんな事を気にしてる場合じゃない。
今起きている状況を確認しないと……っ! いっいや……それよりも大切な事があるじゃないか!

「おっおい! アヤネとラキュは大丈夫なのか?」
「……はっ! そっそうじゃ、あの2人、この場におらんぞ!」

緊張から一瞬、辺りに動揺が走った。
まっ不味い、こんな時に2人がいないなんて……くそっ!

「探しに行く!」
「まっ待つのじゃシルク! 何が起きておるか分からんのに行かせられる分け無いじゃろう!」
「はっ離せ! おっ俺は! 俺はっ……!」

ロアを振りほどこうと暴れる、だが離れてはくれない。

「落ち着いて下さい! ここは私が確認してきます」

ぱんっ! 柏手するヴァームは冷静に話す。

「いや、ヴァーム……おめぇだけじゃ俺が心配だ、俺も探すぜ」
「……分かりました、お願いします」

リヴァイの意見に頷くとヘッグがその2人に近付きながら話す。
くっ……俺も探しに行きたい、なぜなら純粋に心配だからだ! だがロアは俺から離れてくれない。
……だったら隙を見て探しに行けば良い。

「いや、ここはシルク君にも手伝って貰うべきだよ?」

っ! ヘッグが俺を見て話し出した……なっなんだと?

「なっ! 貴様何を言っておるかわか……」
「あぁ、分かってるさ……だが彼は必ず隙を見て探しに行くよ?」

……見透かされてた、勘の鋭い奴だ。
真剣な顔付きでロアを睨むヘッグは続けて話す。

「だったら探すのを手伝って貰った方が安心さ、心配なら魔王さんが隣にいれば良い」
「……分かったそうするのじゃ、と言う訳でシルク、絶対に離れるでないぞ?」
「あぁ、分かった」

ヘッグのお陰で俺も探しに行く事が出来た、ありがとなヘッグ。

「では私とリヴァイ音がした方に向かって見ます、ロア様とシルクさんは林の中を歩いて2人を探して下さい」
「了解じゃ」
「あぁ」

ヘッグに感謝しているとヴァームがそう言い放ち、リヴァイと一緒に林の中を素早く走っていった。

「じゃぁ俺は海の宿に行くよ」
「ん? お前は探しに行かんのか?」
「行くさ、でも人手は多い方が良いだろう?」

なるほど、鬼騎とメェを呼びに行くんだな? 
ヘッグはクールに笑って走って海の宿へと向かっていった、残された俺とロアは互いに顔を見つめ合う。

「……ゆくぞ、わらわも速い事2人をみつけんと心配じゃ」
「そうだな、速く見つけよう」

そう言った後、互いに頷き俺とロアも林の中へ走って行く。

突然鳴った轟音、何か……何か嫌な予感がする。
2人は大丈夫、そうに違いない! 心の中で何度もその言葉を思い浮かべた。
だが、それでも最悪を想定してしまっている俺がいた……どんどん焦っていくばかりだ。
頼む、頼むぞ……頼むから無事でいてくれよアヤネ! ラキュ!

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