どうやら魔王は俺と結婚したいらしい
160
肝だめしが始まった。
ルートは簡単、1組ずつ灯台を目印に林の中を通っていく、灯台についたら入り口付近にある木の札を1つ持ってここに戻ってくる。
以上だ、で……今俺とロアがそのルートを歩いている、勿論手を繋ぎながら……。
最初は恥ずかしかったが繋いでしまえば後は時間と共に慣れていく。
なので俺とロアは、肝だめし開始から周りの景色を見ながら雑談をしている。
ほんとに他愛の無い軽い雑談だ、こう言う話をロアとするのは初めてかもしれない……たいがいは向こうのハードスキンシップでハチャメチャになるからな……。
「……涼しいのぅ」
「あぁ、そうだな」
少し前の事を思い出し精神を痛めているとロアがそう言ってくる。
確かにロアが言う様に周りの空気はひんやりしている、昼間とは違い夏の気温も夜になると涼しくなるんだな、まぁ……ここが海の側と言うのもあるんだろう。
ヂヂヂヂ……
ビビビビ……
ギチギチギチ……
で、さっきから聞こえる虫達の羽音……これはここが林だからだろうな。
正直言って……今ここにロアがいて良かったと思っている、何故なら俺は虫が苦手だからだ。
くそっ、なんで虫がこの場にいるんだ! と、何を怒っている俺……当たり前だろう、ここは林なんだから。
当然だが辺りは木々が生えている、満点の星空に静寂な雰囲気をもつ林、それ等が風で、さわさわ揺れる。
森林浴を楽しむのなら最高だろう、虫がいなければだが……。
あぁ、そう言えばリヴァイが言っていた。
「近くには崖があるから気を付けやがれ」と、だがルートは灯台に向かって歩けば良いだけ、崖の方にいくには横道に反れなければいけない。
だから迷って向かった先が崖……と言う風な事にはならないだろう。
「くふふふ、それにしてもあれじゃな……肝だめしなのに驚かす奴がおらんの」
「主催者お前だろ? 何とかならなかったのか? これじゃただの散歩だ」
「くっ……そう言うな、それもこれもだらけておったヴァームが悪いのじゃ」
人のせい……じゃかった、竜のせいのするのはいけないんじゃないか? だが、俺としては何も無い方が嬉しいんだけどな。
「しかしあれじゃな、本当に静かじゃな」
あぁ……本当に静かだ、風も気持ちいいし、少しだけだが参加して良かったと思ってしまう。
「シルク……」
「どうした?」
声を低くして俺の手を少しだけ強く握ってくるロア……暗くてよく分からないが顔が赤いのが辛うじて分かる。
……やばい、なんか変に意識してしまっている。
「あっ、あの時……なぜわらわを選んだのじゃ?」
「え?」
ロアの髪が風で靡く……。
あの時? 一体なんの事……あっ、あれか? 「わらわとアヤネ、どっちと行きたいのじゃ?」って質問の事を言ってるんだな。
「そっそれは……その、自分の立てた約束の為だ、お前を見るって……俺は言っただろ?」
「……そう、じゃな」
恥ずかしげに語る俺と同じく恥じらうロア……なんだこれ、さっきまで「夜風が気持ちいいな」とか「おぉ、星が綺麗なのじゃ!」って言う雑談をしていたのに……何故今一距離感が取れないあと一歩踏み込めば好き同士になれるカップルみたい雰囲気がでているんだ!
「あの時のシルクは格好よかったのじゃ、今も格好良いがの……あっ、可愛いと言うのも足しておこう」
「足さなくて良い……と言うかあの時の事は忘れろ」
俺は男だから可愛くない、何度も言ってるんだがな……。
ん? なんだ……ロア、にやにやしてないか?
「良いのかえ? 忘れたらシルクの約束が果たせぬぞ?」
こいつ……意地でも忘れない気だな?
「……恥ずかしがったり、悪戯っぽく笑ったり、忙しいやつだな」
「くふふふ……シルクがそうさせているのじゃ」
人のせいにするな……俺はそう呟いて前を向く、するとロアが俺の手を離して腕に抱き付いてくる。
「ちょっ! なっなにを……」
立ち止まった俺はロアを引き剥がそうとする、しかしロアがそれを許さなかった、痛いくらいに俺の腕をぎゅっと締め付けてきたからだ。
「ひっ1つだけ確認したいのじゃ」
っ! 凄く熱がこもった目で俺を見てくる……。
ロアの体温、匂い、表情を感じる、暖かい……それに少し震えている? まさか緊張しているのか? そしてこの香り……ロアの匂いだ、いつも近付いて来たら感じる匂い、いつもと同じく心地良い甘い香り、そして表情……まるで甘えた子犬の様な表情、それらをまとめて一言で言うのなら……。
可愛い。
これ以上の言葉は無いだろう……色々と思ってる間、ロアは喋っていない、いや……性格に言えば口ごもっている、だから俺は優しく問い掛けた。
「どうした? 少し落ち着いてから……」
「いっいや! 今っ、今この瞬間に言わねばならん」
! やけに気合いが入った声だ、いつものロアじゃない……だが、なんでそんなにやる気を出している?
「シルクが、その……わらわを見る、もう逃げないと言ったんじゃ……ならばわらわもそれに応えねばならぬ……だから今言いたい事を言う」
うつむき加減でもじもじするロア、そうか……俺の態度に応える為にロアはこんなにやる気を出していた。
それほどまでに俺の事を好きなんだな……とこの時、俺の脳内にある言葉が生まれた。
自分の気持ちを確認したとして……ロアとナハトが別人だと確定した時、俺はロアの事をどうするんだ? と……。
………考えてなかった。
どうする? どうするんだ? 俺は振れるのか? こんなに俺の事を好きでいてくれる奴を俺は……。
「シルク」
「っ! なっなんだ?」
いっいけない、今はロアの話に集中しないといけない……。
「シルクは……約束をしていなくても……わらわを選んだかえ?」
「…………え」
数秒間……沈黙してしまった、それほど驚きの問いだったからだ。
約束を抜きにして……つっつまり、俺が自分に立てた約束を抜きにしてロアを選んだのか? って事だよな。
……答えは出てこない、そんなの急に出る訳がなかった、何故なら……頭が真っ白になったからだ。
だから俺は何も話せなかった、するとロアは慌てた様子で離れてまた俺の手を繋ぐ。
「あっ、いっいや……いっ今のは忘れてくれ! さっさぁ! 早く先に行くのじゃ」
「っ! おっおい! 急に走るな!」
そして、勢い良く走っていく。
俺も釣られて走らされる……「止めろぉぉっ!」って叫んでもお構い無しだ……。
この後は普通に灯台に行って、木の札を取って歩いてスタート地点に戻ってきた。
その間何も話さなかった……俺はロアから言われた事が頭の中でぐるぐる回っていた。
なんにも言えなかった……俺はあの時どう答えれば良かったんだ? そんな思いを残したまま俺とロアの肝だめしは終わった……。
ルートは簡単、1組ずつ灯台を目印に林の中を通っていく、灯台についたら入り口付近にある木の札を1つ持ってここに戻ってくる。
以上だ、で……今俺とロアがそのルートを歩いている、勿論手を繋ぎながら……。
最初は恥ずかしかったが繋いでしまえば後は時間と共に慣れていく。
なので俺とロアは、肝だめし開始から周りの景色を見ながら雑談をしている。
ほんとに他愛の無い軽い雑談だ、こう言う話をロアとするのは初めてかもしれない……たいがいは向こうのハードスキンシップでハチャメチャになるからな……。
「……涼しいのぅ」
「あぁ、そうだな」
少し前の事を思い出し精神を痛めているとロアがそう言ってくる。
確かにロアが言う様に周りの空気はひんやりしている、昼間とは違い夏の気温も夜になると涼しくなるんだな、まぁ……ここが海の側と言うのもあるんだろう。
ヂヂヂヂ……
ビビビビ……
ギチギチギチ……
で、さっきから聞こえる虫達の羽音……これはここが林だからだろうな。
正直言って……今ここにロアがいて良かったと思っている、何故なら俺は虫が苦手だからだ。
くそっ、なんで虫がこの場にいるんだ! と、何を怒っている俺……当たり前だろう、ここは林なんだから。
当然だが辺りは木々が生えている、満点の星空に静寂な雰囲気をもつ林、それ等が風で、さわさわ揺れる。
森林浴を楽しむのなら最高だろう、虫がいなければだが……。
あぁ、そう言えばリヴァイが言っていた。
「近くには崖があるから気を付けやがれ」と、だがルートは灯台に向かって歩けば良いだけ、崖の方にいくには横道に反れなければいけない。
だから迷って向かった先が崖……と言う風な事にはならないだろう。
「くふふふ、それにしてもあれじゃな……肝だめしなのに驚かす奴がおらんの」
「主催者お前だろ? 何とかならなかったのか? これじゃただの散歩だ」
「くっ……そう言うな、それもこれもだらけておったヴァームが悪いのじゃ」
人のせい……じゃかった、竜のせいのするのはいけないんじゃないか? だが、俺としては何も無い方が嬉しいんだけどな。
「しかしあれじゃな、本当に静かじゃな」
あぁ……本当に静かだ、風も気持ちいいし、少しだけだが参加して良かったと思ってしまう。
「シルク……」
「どうした?」
声を低くして俺の手を少しだけ強く握ってくるロア……暗くてよく分からないが顔が赤いのが辛うじて分かる。
……やばい、なんか変に意識してしまっている。
「あっ、あの時……なぜわらわを選んだのじゃ?」
「え?」
ロアの髪が風で靡く……。
あの時? 一体なんの事……あっ、あれか? 「わらわとアヤネ、どっちと行きたいのじゃ?」って質問の事を言ってるんだな。
「そっそれは……その、自分の立てた約束の為だ、お前を見るって……俺は言っただろ?」
「……そう、じゃな」
恥ずかしげに語る俺と同じく恥じらうロア……なんだこれ、さっきまで「夜風が気持ちいいな」とか「おぉ、星が綺麗なのじゃ!」って言う雑談をしていたのに……何故今一距離感が取れないあと一歩踏み込めば好き同士になれるカップルみたい雰囲気がでているんだ!
「あの時のシルクは格好よかったのじゃ、今も格好良いがの……あっ、可愛いと言うのも足しておこう」
「足さなくて良い……と言うかあの時の事は忘れろ」
俺は男だから可愛くない、何度も言ってるんだがな……。
ん? なんだ……ロア、にやにやしてないか?
「良いのかえ? 忘れたらシルクの約束が果たせぬぞ?」
こいつ……意地でも忘れない気だな?
「……恥ずかしがったり、悪戯っぽく笑ったり、忙しいやつだな」
「くふふふ……シルクがそうさせているのじゃ」
人のせいにするな……俺はそう呟いて前を向く、するとロアが俺の手を離して腕に抱き付いてくる。
「ちょっ! なっなにを……」
立ち止まった俺はロアを引き剥がそうとする、しかしロアがそれを許さなかった、痛いくらいに俺の腕をぎゅっと締め付けてきたからだ。
「ひっ1つだけ確認したいのじゃ」
っ! 凄く熱がこもった目で俺を見てくる……。
ロアの体温、匂い、表情を感じる、暖かい……それに少し震えている? まさか緊張しているのか? そしてこの香り……ロアの匂いだ、いつも近付いて来たら感じる匂い、いつもと同じく心地良い甘い香り、そして表情……まるで甘えた子犬の様な表情、それらをまとめて一言で言うのなら……。
可愛い。
これ以上の言葉は無いだろう……色々と思ってる間、ロアは喋っていない、いや……性格に言えば口ごもっている、だから俺は優しく問い掛けた。
「どうした? 少し落ち着いてから……」
「いっいや! 今っ、今この瞬間に言わねばならん」
! やけに気合いが入った声だ、いつものロアじゃない……だが、なんでそんなにやる気を出している?
「シルクが、その……わらわを見る、もう逃げないと言ったんじゃ……ならばわらわもそれに応えねばならぬ……だから今言いたい事を言う」
うつむき加減でもじもじするロア、そうか……俺の態度に応える為にロアはこんなにやる気を出していた。
それほどまでに俺の事を好きなんだな……とこの時、俺の脳内にある言葉が生まれた。
自分の気持ちを確認したとして……ロアとナハトが別人だと確定した時、俺はロアの事をどうするんだ? と……。
………考えてなかった。
どうする? どうするんだ? 俺は振れるのか? こんなに俺の事を好きでいてくれる奴を俺は……。
「シルク」
「っ! なっなんだ?」
いっいけない、今はロアの話に集中しないといけない……。
「シルクは……約束をしていなくても……わらわを選んだかえ?」
「…………え」
数秒間……沈黙してしまった、それほど驚きの問いだったからだ。
約束を抜きにして……つっつまり、俺が自分に立てた約束を抜きにしてロアを選んだのか? って事だよな。
……答えは出てこない、そんなの急に出る訳がなかった、何故なら……頭が真っ白になったからだ。
だから俺は何も話せなかった、するとロアは慌てた様子で離れてまた俺の手を繋ぐ。
「あっ、いっいや……いっ今のは忘れてくれ! さっさぁ! 早く先に行くのじゃ」
「っ! おっおい! 急に走るな!」
そして、勢い良く走っていく。
俺も釣られて走らされる……「止めろぉぉっ!」って叫んでもお構い無しだ……。
この後は普通に灯台に行って、木の札を取って歩いてスタート地点に戻ってきた。
その間何も話さなかった……俺はロアから言われた事が頭の中でぐるぐる回っていた。
なんにも言えなかった……俺はあの時どう答えれば良かったんだ? そんな思いを残したまま俺とロアの肝だめしは終わった……。
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