どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

153

心臓がゾクッゾクッと激しく音をたてる、くっ……ラキュがあんな事言うからさっきから動揺が止まらない。
そんな俺は今、砂浜のコートに立っていた。
因みに前衛が俺で後衛がラキュだ、ネットの向こうには不適に笑うロアとアヤネがいる、サーブを打つのは向こうから……緊張して来た。

「シルクよ、必ずわらわ達が勝ちシルクの水着姿を拝んでやるのじゃ」
「いつも思い通りに行くと思うなよ?」

ボールをぽんぽんと軽く上に投げながら挑発されたので言い返してやる……するとアヤネも何か言ってくる。

「シルク、あとラっ君……覚悟」

むふぅ、と鼻息を出して俺を睨む……と言うかラキュをついでみたいに言うな。

「僕をついでみたいに言わないでくれる?」

あっ、同じ事思ってた見たいだ……するとアヤネは申し訳なさそうに「ごめんね」と謝る、素直な事は良いことだ。

「さて……早速試合開始といくかの」
「むーちゃん、ごーごー」

俺達に確認も取らずに試合を始めるな! と言いたかったが「分かりました、では試合開始!」ヴァームがそう言うとロアがいきなりサーブを仕掛けてきた!不意打ちはいけないと思う。

「相変わらず姉上は……攻めるのはだけは上手いよね!」

ボールをレシーブするラキュは打ち上げる、次は俺がボールに触れなければいけない。

「むっ……それはどう言う事じゃ?」

多分そのまんまの事を言ってるんだと思うぞ? たまに俺が頭とか触った時物凄く動揺するから……おっと、そろそろボールが落ちる、集中しないと……ふわりと上がるボールが落ちてきた所でトスを上げる。

「ラキュ、頼んだ!」
「頼まれた!」

バシィッーー
強烈な音が鳴り砂浜へと勢い良く斜め下に落ちていく。
だがそれをロアが上手く拾い上げる、この流れだとロアがアタックしにくる……その時、脳内にさっきラキュに言われた事が頭に響く。

"次の試合シルク君がブロックに動けば勝てるよ"

聞いた時は「なに言ってるんだ?」と思った。
ラキュも俺の体力の無さを知ってる筈……なのに真剣な目で言ってきた。
本当に俺がブロックをすれば勝てる……ラキュはそう思ってるんだ、そんなもん俺がブロックした瞬間吹っ飛ばされて砂浜に頭から落ちるに決まってる……だがラキュはそう思って無いんだな? なっなら…… 信じるからな? 余裕の表情を見せるロア、……アタックの体制に入る。
くっ……なるようになれ! そう思うしかない!

「はぁぁっ!」

掛け声を上げてロアが跳んだ! それに合わせて俺も跳ぶ! 両手を真っ直ぐ、脇を閉めて……そして真っ直ぐとロアを見つめた。
近い、こんなにロアを近くで見たのは久々……って呑気すぎるだろう! 集中しろ! と……自分で活をいれた時だ。

「っ! ひゃぅぅ!」

妙な声を出した……そしたらボールを打ち損ねてからぶった、そのボールがロアの頭に、ぼむっ! と当たりロアの後ろに飛んでいってしまった。

「こら、魔王なにやってるの!」
「いっいや! だってシルクが目の前に来るから……」
「気持ちは分かる、でもしっかりして」

 なっなんか軽い喧嘩が始まった、いや……今はそれよりも。

「ブロック出来た……のか?」

ロアのアタック失敗によって初得点は俺とラキュに入った……それは良いんだが何かしっくりこない。

「……っち」

おい、聞こえたぞヴァーム……露骨に嫌そうな顔をして舌打ちするな。
そんなに俺とラキュに得点が入るのは嫌か? 嫌なのか?

……ん? 何か視線を感じる、っうぉ! ロアが俺の方を見てた。
顔が紅い……ん? 睨んでるのか? しかも少し涙ぐんでるし小声で何か言ってる、近い距離なんだが何を言ってるのか分からない。
えっえと……あまり睨まないで欲しいな、と思っていた時だ、いきなりバシッ! と背中を叩かれる、いっいたい。

「ナイスブロック、シルク君」
「……あれ、ブロックって言うのか?」

背中をさすりながら言うと、ラキュはにっこりと笑って首を縦に振った。

「紛れもないブロックだよ」

ブロックか、そう言うなら良いんだけど……なんかふに落ちない。

「次も頼んだよ……この試合はシルク君の頑張りに掛かってるんだからね?」
「なっなら……せめて……攻撃は……ラキュが……してくれ」

そうしてくれなきゃ俺は試合の途中で倒れてしまう、そうなったら向こうの勝ち……それだけは避けたい。

「分かった、任せて」

にこっ、微笑むラキュに俺は苦笑する。
ほんと……頼むぞ? そう思いつつ俺は前を見据える。
……ロアが前衛、まだ顔が紅いし睨んでくる、だからそんなに睨まないでくれ。

「……わいい」
「ん? 何か言ったか?」

俺が色々と考えていたらロアが何かを粒やいた。
何を言ったか分からない、気になってしまった、なので聞いてみた。
すると、身体をびくっ! と震わせて震える口でゆっくりと上目使いでこう言った。

「可愛い……といったのじゃ」
「……可愛い言うな」

録な事言って無かった……俺は直ぐに突っ込んだ、だが疲れてるのでキツくは言わなかった。

「そろそろ攻撃するよ」

と、そんな事をしていたらアヤネがサーブをしようとしていた、いけない……今は試合中だ、集中しよう。
サーブをするアヤネ、さぁ……やるだけやってる! そう思うなか試合は続く……。


「うっ……あぅぅ」
「こらアヤネ! 何をしておる!」
「シルクがブロックに来るのがいけない」
「気持ちは分かるがしっかりせんか!」

また得点を決めた、いや正しく言えば向こうがへまをして得点を得た。

「ぐぬぬっ、えぇぇい! 次はわらわが前に出る!」
「ずるい! 次は私!」

なんか知らんが変な争いが見える、そんな様子を「こんな暑いのによくやるなぁ」と思いつつ見る。

「今の動き良かったよ」
「そっそうか……」
「ね? この作戦上手くいったでしょ?」

確かにラキュの作戦は効果抜群だ、だがラキュよ……俺はこの作戦長く続ける自信がないぞ? だってあの数回の行動で俺は……。

「でぇ……はぁ……でぇ……はぁ」

既に息切れを起こしてるんだからな。

「汗だくのシルク……くっ、萌えてしまって試合に集中出来ぬ!」
「さすがシルク……侮れない」

こいつ等……言ってる事は意味不明だが……とてつもなく不快だ、疲れてなければ突っ込んでるのに……。

「シルク君、残り7点……向こうは無得点だから気楽に行こう」
「おま……え、簡単に……言うけど……ぜぃ……ぜぃ……もう……」

限界近いんだからな? 分かってるのか?

「本当に体力無いね……」
「分かってるなら……あんな作戦……言うな」

くっ、魔法の耐性がどうのが無ければ今頃楽に動けていたのに……いや、これは日頃身体を鍛えていなかった罰だな。

「シルク君、辛いだろうけど頑張って……これを続ければ確実に勝てるよ」

そう……だな、ラキュの言う通りだ。
俺がブロックに出るとロアもアヤネも顔を真っ赤にして動きがぎこちなくなる。
つまり隙が出来る……だがそれは俺がブロックにで続ければの話し、俺がブロックしなければ普通に攻撃してくるだろう。
つまりこれは俺の気力が鍵となるわけか……ははっははは、どうしよう、負ける運命しか見えない、こんなので本当に勝てるんだろうな?

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