どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

149

あれから暫くするとヴァームが赤い顔をして戻って来た。
俺とラキュは既にコートに立っていて試合が始まるのを待っている、本当は始まって欲しくないけどな……。 

「りっリヴァイ……あの、その……」
「んだよ? 早く準備しろや」

現在ヴァームはリヴァイの後ろに隠れている……ぎゅっと後ろからリヴァイに抱きつく形でだ。

「こっこれ! はっ恥ずかしいので元に戻して下さい!」
「断る」

つっ冷たい一言だ……と言うかあんなヴァームを見たのは始めてだ。

「いっ意地悪しないで下さい! このカナヅチ!」
「うるせぇ……お前は可愛いんだから、どんっ! と構えとけば良いんだよ」

そんなキザな台詞良く堂々と言えるなぁ……こう言う所、鬼騎にも見習ってもらいたい。

「うっ……うぅ……むっ無理……絶対に無理です!」
「恥ずかしがる事ねぇっ……だろ!」

嫌がるヴァームを強引に前に引っ張り出す、するとつまずきながらもヴァームが出てきた。

「えっ! ちょっ……きゃ!」

可愛らしい声を上げ前に出たヴァーム、自分の胸を押さえて必死に後ろへ隠れようとする……だが、それをくい止めるリヴァイ。

「りっリヴァイ……こっこんな事をして……あっ後で酷いですよ?」

きっ!とリヴァイを睨むヴァーム、だがリヴァイはどこ吹く風……。

「あぁ……後で酷かろうが結構だ、俺はペタニストだ、ぺたっとした胸のヴァームが見てぇ、文句あっか?」

……きっキザに話している様に見えて中身は変態的だ! それに顔を赤くするのはどうかと思うぞヴァーム!

「もっ文句しかありませんっ! こう言うのは私じゃありません……大きい胸は私の憧れなんですよ」

……本当にこう言うヴァームは見た事がない、だから見てて変な感じがする。

「だから……お願いです」
「……」

……みっ見てて恥ずかしくなってきた、まるで本で見た恋愛シーンみたいだ、まっまぁ実際は胸を元に戻して欲しいと言うお願いなんだがな……。
そんなちょっと変な雰囲気を変えるかの様にリヴァイは、ぽんっとヴァームの頭に手を乗せる。

「……憧れなら仕方ねぇか」

そう言った後、リヴァイは微笑んだ。

「戻してやるよ」

そう一言呟いた後、指を鳴らした、すると……。

「っ、やっ……やっと元に戻りました……」

どう言う原理で戻ったのかは不明だが……ぼふんっ! と音を立ててヴァームの胸が大きくなった。
余程嬉しかったのかヴァームは自分の胸を抱き締めて喜ぶ、なんと言うか元に戻って良かったな……と言うか、もともと小さかったから元に戻ったと言うのは可笑しいか? まぁ……ややこしくなるから元に戻ったと言う事にしておくか。

「と言うか……泣くほど嬉しいんだな」

小声で呟いた後、俺はヴァームを見る、さっきまで恥ずかしがっていたのに今はイキイキして涙を流して喜んでる……変わり身早過ぎるだろ!

「リヴァイこの試合も勝ちますよ!」
「へいへい……わぁってるよ」

なんだがやる気なさそうなリヴァイ……くっ、元に戻ったと言う事は勝ちにくくなったと言う事だ、とかネガティブな事を思ってた時だ。

「ちょっと、作戦タイム……別にいいよね?」
「別にかまいませんよ?」

ラキュが口を開いた、きょとんとする俺を放置してヴァームが微笑んで応える。
作戦タイム……一体何を考えてるんだ? 首を傾げてるとラキュが近寄って来た、そして俺の肩を組んで囁いてくる。

「シルク君、弱気になっちゃ駄目だ」
「いやでも……相手はヴァームだぞ?」

これまで俺達の抵抗をことごとく潰してきた相手……しかもリヴァイと言うパートナーがいる、勝てる見込みなんて無い……俺達は負けるしか無いんだ、下を向き落ち込んでいるラキュが口を開いた。

「この試合、僕に秘策がある」

どくんっーー
その言葉に俺の心臓が強く脈打った……。

「なっひさ……」
「静かに!」

大声を出した俺の口を手で大いう、その後また囁いてくる。

「…………動くよ」

……っ! なん……だと? ラキュは俺の口を塞いでいた手を離し、にやりと妖しく笑う。

「 かっ可能なのか? そんな事が……」

焦る俺、それに対して真剣な顔をするラキュ……本気でその秘策を実行する気だ。

「うん、と言うかこれしか方法は無いんじゃない?」

たっ確かにそうだ……だが、お前の言うその秘策実現可能なのか? いや、疑問を抱くまでもない、それしか方法が無いならやるしかない!

「……やろう」
「くふふ、そう言ってくれると思ったよ」

微笑むラキュに俺も同じく微笑んだ、やってやる……罰ゲームなんて絶対に嫌だからな。

「お待たせ……もう良いよ」

ラキュがそう言うとヴァームは髪を弄りながら……。

「あら? もういいんですか?」

そう、答えた……まるで策を立てた所で無意味とでも言いたげだ。

「うん、いいよ……早く始めようよ」
「そうですか……では、サーブをどうぞ」

そう言ってボールを投げ渡して来るヴァーム、そのボールを受け取った。

「シルク君、分かってると思うけど……"あれ"を使ったら向こうも使うと思う」
「そっそうだな……」

再び小さな声でのやり取り……するとラキュが不安そうな顔をする。

「もっもしも"あいつ等"が来たらその時は……っ!」
「その時は任せろ」

暗い事を話すラキュの言葉を遮り俺はラキュの胸を、とんっ……と軽く叩いた。

「ありがと……」

にっこりと微笑むラキュ、そう……もしも"あいつ等"が現れた時、頑張るのは俺だ! 気合いを入れないといけない。


「じゃ……頼んだぞ」

俺は、ばんっ! とラキュの背中を叩き前衛を守る。
俺はヴァームとリヴァイを見る、2人共余裕が見える……完全に勝てる気でいる。
ちらりっ、と後ろを見てみるとラキュがボールを両手で持ち精神統一をしていた、目を瞑り深呼吸……集中力を高めている、そして不意に目を開き決意の言葉を口にした。

「頼まれた……じゃ、行こうか」

ピリッーー
そんな擬音がなりそうな程に空気が張りつめた、いよいよ……いよいよ俺達の戦いが始まる。
俺は前を向き、2人を睨み構えをとった!

「絶対に勝つよシルク君!」
「あぁっ!」

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