どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

138

時は経ち、青かった海は夕日によりオレンジ色に染まった。

「ふぅ……ふぅ……くそっ、半日アヤネと格闘してしまったのじゃ」
「時間無駄にした……」

ロアとアヤネは肩で息をしていた、信じられるか? こいつらあれからずっと海水の掛け合いしてたんだ……見てて止めようと思ったが止めた、その結果がこれだ、まぁ精神的に助かったから良しとしよう。

「ふぅ……良い波に乗れたよ」
「はっはっはぁ! 良い太陽を浴びれたよ!」

棺桶でサーフィンを続けていたラキュ、少し疲れたのか肩で息をしている、そしてヘッグだが……少し日に焼けていた、あまり日焼けすると身体に悪いぞ?

「しっ死ぬかと思いましたわ……」

ずりっずりっーー
音をたてながら遠くに見える岩からラムがやって来た、おぉ……無事生還したか、苦しい表情をしながら俺の近くへ座り込む、すると身体に白い砂が入っていくのが見える……それ大丈夫か? 後で「砂が全くとれませんわぁー」とか言って泣きそうなんだが……まぁ良いか。
あ……そう言えば、鬼騎とメェは無事か? ヴァームとリヴァイもいたから無事だと思うが……心配だ。

「皆の者、1度海の家に行くのじゃ……宿の事を聞かねばならんからな」
「……あぁ、そう言えばそうだな」

ロアの言葉を聞いて気付く、全く宿の事を考えていなかった、海の家に泊まるスペースなんて無い、周りには宿らしき物なんて1つもない。
あるのは丘にある灯台、その近くに林、そして広大に広がる海、ごらんの通り泊まるなら野宿をするしか無い、そんなの嫌だから城に戻る! なんて事はないよな?
皆はロアの言葉に頷き、ロアを先頭に海の家に行く。


「うっ……きっきー君、そっそこ……らっらめ…ですぅ…あぁぁっ! 」
「あっあんまり、こっここっ声をあげないでくだいますです」

……俺達は海の家に戻ってきた、そしたら凄い事になってた、何かもう……言葉がでない状況に出くわしたからだ。

「いっ痛いですぅ! もっと優しくするですよぉ!」
「えっ……でっでも」
「いっいいから……優しく…して、ほしいですぅ」

妙に艶っぽい声を上げるメェと動揺しまくりの鬼騎……。

「じゃ……行きますですよます?」

メェの前では変な口調になる鬼騎がより変な口調になる、そんな鬼騎の屈強で大きな手が震えていた、その手の震えを押さえつつメェの柔らかなふくらはぎにそっと手を当てる、その時だった。

「ふっ! あぁっ!」

メェがびくんっびくんっと震えながら身体を弓なりにしならせ苦しむ……だが鬼騎はその手を止める事なく上へ上へと滑らせていく。

「ぜぃ……はぁ……ぜぃ……はぁ」
「ふぅ……うぅ……はぁはぁ」

メェの艶っぽい息使いとは真逆で息を荒げる鬼騎、そして遂にその手はメェの太ももへと登って……。

「ぬぅぁぁぁ! なんじゃこれはぁぁ!」
「ふぇぁっ! ろっロア嬢!?」
「まっ魔王様ぁ!?」

その光景に耐えきれなくなったロアが声あげた、「お主達は今何を始めようとしたぁ!」とか矢継ぎ早に問い質す。
だが俺には分かった、これは決して如何わしい物でもなんでもないと言う事を……それを知らないロアに2人は恥じらいながら説明をする、まとめるとこうだ。

・鬼騎が鼻血を出して倒れた
・看病の為に薬を飲ませた
・絶対安静を命じる
・その為にメェは鬼騎に膝枕で見守る事にした
・そしてその結果……脚が痺れて動けなくなった
・その治療の為にメェが鬼騎に懇願して楽にしてもらっていた

つまり2人は……マッサージをしていた、と言う事になる。
それを聞いたロアは自分の勘違いに恥ずかしくなり俺に向かってダッシュして来て俺の胸に顔を埋めて来た。
小声で「はじゅかしぃ」を連呼している……まぁ、あの声だけ聞けば誰だって勘違いするさ……そんな事もあってリヴァイとヴァームが俺達の前にやって来る。

「おぅ……茶番はすんだか?」
「ふふふ、定番の勘違いでしたよロア様」

「うるしゃい!」と言う声があがった、ヴァーム……今弄るのは止めてあげてくれ。
そしてアヤネ、俺の背中をぽこぽこ殴るのは止めろ……地味に痛い。

「済んだらしいから言うけどよ……テメェ等の宿を用意した、有り難く思え……とその前に、裏でシャワー浴びて来いよ」

やけに荒っぽいが宿を用意してくれたのは嬉しい……だがその宿はどこにある? 誰もがそう思ってるに違いない、だがその前にシャワーは浴びたい、海水に濡れたから身体がベタベタする……と言うことで皆シャワーを浴びに行った、簡易型のシャワーだが清潔な造り、はぁぁ……癒される、のは良いんだが勿論この時。

「わらわがシルクを洗うのじゃ!」
「違う、私が洗う!」

と言う風な口喧嘩が始まったのは言うまでも無い。


さて暫く時間が経ちシャワーを浴びた皆、きちんと着替えて後は宿に行くだけ、しかし……その宿はいったい何処にある? 先程の疑問を皆を代表してラキュが言ってくれた。

「リヴァイ……その宿は何処にあるのさ? まさか魔王城に宿をつくったんじゃないよね?」

それを聞いたリヴァイは頭をぽりぽりとかきむしる。

「ちげぇよ……ここまで来てそれはねぇだろうが」

確かにそうだ、だがそれが違うのなら本当にどこにあるんだ?

「では皆様、外に出ましょうか」

ヴァームがスカートをたくしあげて頭を下げ、皆を外へ案内する、皆は困惑しながら案内に応じる。


「……で、ここには何もないではないか!」

外に出て立ち直ったロアが言う、全くその通りだ……目の前には波打つ綺麗な海しかない、まさか……ここで野宿とは言わないよな?

「あらあら……慌ててはいけませんよ? リヴァイ、準備は出来ましたか?」
「いつでも良いぜ……」

その声は後ろから聞こえた、後ろには海の家しかない、振り向いて見ると……浮き輪を身に付けたリヴァイがいた、スタスタと歩いて俺達の前へやって来て海に足を踏み入れたと同時に立ち止まる……何故浮き輪をつけてるんだ? と言う質問は今しちゃいけないかな?

「てめぇら、これからの宿を紹介してやらぁ」

そう言ってリヴァイは右足を思い切り振り上げた……そしたらザッパァァンーーっと轟音を上げて海がパッカーンと割れた。

「「っ!!?」」

その光景に皆は驚いて口をあんぐり開けた……えと、リヴァイさん? 何してるんだよ……。

「おら行くぞ?」

そう言ってスタスタと歩き出す、驚きで反応が遅れたが皆は着いていく……うおっ、魚ピチピチ跳ねてる、クラゲが横たわってる……あと魚みたいな人間も横たわってる、と言うか当然の事ながら海の底歩いたのは初めてだな……ははは。

「のっのぅ……海を割って歩くのなら腰につけてる浮き輪はいらんのではないかえ?」

おっと、ここでロアが気になる質問をぶつけた、リヴァイは歩きながら答えてくれる。

「ばぁろぅ……万が一があるだろうが、俺は泳げねぇんだよ」
「魔界の海の万人なのか?」
「そうだよ、文句あっか?」

これも驚くべき事実なんだろうが、驚く事は無かった、驚きのレベルが違いすぎてな……。

「……もしかして、あれが宿か?」
「おぉ、そうだ」

暫く歩いて少し遠くに建物があるのが気付いた、切り開かれた海の先にはお伽噺に出てくる様なお屋敷……ではなく、古風な感じの立派な宿があった、入り口の上の看板には海星や貝がへばりついており、そこには文字が書かれていた、その文字は何と書いてあるか分からない……何故かって? 恐らく魔界の文字だからだろうが……読めないんだ、俺には字が汚すぎて読めないんだと思うが……違うんだよな? いや、文字がどうのの問題はどうでも良い、問題は暫くはここで過ごすと言うことだ、つまり俺は生まれて初めて海の中で過ごす訳だ……ははは、これロアに襲われたは逃げれそうにないな、色々気を付けて生活しよう。

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