どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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腕を引っ張られ海に向かって連れられた直後の事だった、そこから地獄が始まった。

「くふふふぅ、待つのじゃシルクぅぅ」

 白い砂浜で走って追い掛けてくるロア、俺は追い付かれないように逃げる。

「はははっ、捕まえてみろよー……ってアホかぁ! こっちくんなぁっ!」

何故逃げているか? 答えはもう分かるだろう? 

「ヴァームがこの日の為に秘密裏に作ったこの服を着てほしいのじゃ!」

何時もの服装で叫んで走るロアは白くてひらひらしている服を見せ付けてくる、その服は胸元がやけに開いていてスカートと服が一緒になっている、それは"ワンピース"とか言う物らしい……可愛い服なんだから自分が着れば良いのに。
絶対着ない着てたまるか、必死になって逃げている時皆は呑気に海を満喫していたりしていた、約1名を除いて……。

「ラキュ様、是非この激エロビキニを着て下さい!」
「嫌に決まってるでしょ? だっだから……猫をけしかけるのは止めてぇぇ!!」

俺と同じ境遇のラキュ、背後に猫が沢山「にゃーにゃー」言いながらラキュを追い掛けてる、ラキュよ……頑張って逃げるんだ! ヴァームの言うエロビキニは本当にエロい……胸の部分の布が極端に少ない、下のビキニが普通なのは幸いだな……いや、幸いじゃないか。
それを見ていた鬼騎とメェ……少し遠くに見える。
「ざまぁみろ」と言いたげに鬼騎は鼻で笑う、そんな鬼騎は海の家に入っていった、メェはその後ろを付いていく、因みにメェの荷物は鬼騎が持っていた。

ラキュ、結局今回も逃げれなかったな……泣いていいよな?

「シルク、走るのなら私も走る」

と、ここでロアと同じく何時もの服装でアヤネがそんな声を掛けてきた……気楽に話し掛けて来やがって……いや待てよ? これを上手く使えば初逃げ切り成功じゃないか?

「だったらロアを止めてくれ!」
「……ん、いいよ」

素直な奴は大好きだ! アヤネはロアの前に立ちはだかる、さぁ……足止めをしてくれる間に俺は遠くへ逃げるとしよう。

「アヤネよ、これをみるのじゃ!」

そんな時だ、ロアが大声をあげた……俺は気になって走りながら後ろを向く、ロアは立ちはだかるアヤネに、ばっ! とワンピースを見せつけた。

「これをシルクに着せたら可愛いと思わないかえ?」
「………したい」

ワンピースを凝視するアヤネ、暫く黙ったあと悪魔の様な一言を言った、ちくしょう敵が2人になった、俺は前を向いて走る! 気が付くと隣にラキュがいた。

「シルク君! このまま転移しよう!」
「それに賛成だ!」

後ろからヴァーム、ロア、アヤネが追い掛けてくる……転移しても連れ去られてここに戻されるが関係あるか、俺達は今逃げるんだ! って、前に誰かいる……いや気にしてる場合じゃない!

「やれやれ……海ではしゃぐのは良いけどよぉ、ちと煩すぎやしねぇか?」

その人は日に焼けた白髪の細マッチョの男だった……そいつは鋭い目で俺とラキュを睨んでくる。

「あとよ、綺麗な身体してんだからよ……綺麗な服装はした方が良いぜ?」

そいつはスタスタと歩いてきた、驚く俺とラキュ……だが直ぐに正気に戻り走り出す、そうしてその男を通りすぎた……その瞬間、俺の身体に違和感が走った。

「……似合ってるじゃねぇか」

男はハイビスカス柄のシャツを着ていた、渋い声で俺達を見てくる、違和感に気付いた俺は足を止める、同時にラキュも足を止めた。

「……なっ! なんだこれぇぇ!!」

咄嗟に声をあげた……当たり前だ、何を言っているのか分からないと思うが……俺はワンピースを着ていたんだ。

「いつ……のまに……」

ラキュはそう呟いた後、がくっと砂浜に膝をつけた、そんなラキュはビキニを着ていた。
当然俺達は着ていない……着る筈がないんだ、なのに着ていた……意味が分からない。

「ワンピースの奴はよぉ……これを被れば尚良しだと思うんぜ? ビキニの奴は、そうさなぁ……これでも腰に巻いとけ、見えない方が萌える時もあるからな」

訳が分からなくて呆然と立ち尽くす俺に麦わら帽子を被せる謎の男、その男はラキュには可愛らしい布を被せた。
すると直ぐにラキュは立ち上がる、俺もそいつを見る……そしたらまた驚いてしまった、だってそいつは……。

「んだよその顔は……俺の顔になんかついてんのかよ」

人には無いものがついていた、腕には青白い三日月のヒレ、よく目を凝らしてみたら横原には魚についている様なエラがあったのだ。

「ねぇ、君が誰だか分からないけどさ……着替えさせたのって君かな?」

屈辱的な格好をさせられて苛立ちからかくってかかるラキュに平然と謎の男は答えた。

「あぁ? 勿論俺だが……んだよ、文句あんのか?」

いや、文句しかない……いやそれよりもだ、こっこの褐色細マッチョは誰だ? 主婦にモテそうな渋い顔をして、尚且つ渋い声をしている、人間じゃないのは分かるんだが……あっ、何か尻尾らしき物が見えた、上が青で下の方が白い……艶々してそうだ、先の方には斧みたいなのがついてる。
こっこいつ……ヴァームやヘッグと同じドラゴンか? と自身で考えていた時だった。

「ふふふ……相変わらずの手際ですね」
「たりめぇだ……」

ヴァームがやって来た、なんか親しげにその男に話しかける。

「しっシルクぅぅぅ! いっ今のそなたの格好は可憐そのものじゃぁぁ!」
「ぐぇぇ!?」

タックルされた……勿論ロアにだ、砂浜に倒された俺はロアに迫られる、だがアヤネが直ぐにやってきて引き剥がしてくれる……助かった。

「……シルク、あの人魔王とヴァっちゃんから服をとったあとはや着替えさせたんだよ」

その時だ、アヤネが起きた事を説明してくれた、はっはや着替え? つっつまり……俺とラキュを通り過ぎたと同時に着替えさせたと言う事か? あっあり得るかそんな話!

「ふふふ……そろそろ説明しなければなりませんね」
「いらねぇよ、ぽっと出た奴の説明なんかよぉ……」

頭をポリポリかいて素っ気なく話す謎の男とは裏腹にヴァームは笑顔で続けて説明する。

「彼の名はリヴァイ、この常夏の大地で海の家を経営するリヴァイアサンです」

りっリヴァイアサン? それが何なのか分からないが……ここで海の家と言うのは分かった。

「私と同じコスプレさせるのが大好きなんですよ? ふふふ……気が合いますよね?」
「そっそうだな……」

正直言えば気が合ってくれない方が良かった、そのせいで酷い目にあったからな……。

「あっ……私とした事が最初に言うべき事を忘れてました」

「ふふふっ」と笑ってぺこりと頭を下げるヴァーム、言い忘れた事……この場にいる奴が気になる、注目されながらヴァームは恥じらいながらこう答えた。

「リヴァイは私の夫です……ふふふ、恥ずかしいですね」
「……改めて言う事でもねぇだろうが」

2人は恥ずかしそうに顔を隠す、うん、とても恥ずかしい告白だったんだが……1つ良いか?

「ヴァームっ、結婚してたのかぁぁぁ!!」

間違いなく今世紀最大の驚きだ、ヴァームが結婚、ははっはははは……俺はここで理解した、ヴァームは久し振りに旦那に会いたかったんだな……と。

「紹介はもう良いだろう? お前ら取り合えずこっちに来やがれ……飯を用意してやらぁ」

偉く粗暴な物言いで案内される俺達……のっけから強烈に驚いてしまった、これが最初なら今後どうなるか不安で仕方ない……取り合えずあれだ……驚き過ぎて倒れないように頑張るか。

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