どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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そいつは突然現れた……扉を蹴破って涙ながらに現れた、当然焦る俺とラキュ…そいつの正体は……。

「ちょっと聞きたい事があるですよ!」

ラムだった、片手で鬼騎の腕を掴んでいる、鬼騎は部屋から出ていった筈……まさか捕まえてここまで引っ張ってきたのか? まぁそれはどうでもいい……問題は手を掴まれてる鬼騎だ。

「あっ……う……え……あ……」

もう動揺しまくりだ、少し落ち着いたらどうだ?

「聞きたい事ってなにかな?」

そんな事をスルーしてラキュは笑顔で言った、そしたらメェが怒りの表情になる……そしてラキュの胸ぐらを掴んで叫んだ。

「ラキュ君が、きー君に告白したってどう言う事ですか!」

聞き間違いだろうか、とんでもないことをメェが言った気がする。

「黙ってないで何か言ってください! ってうぎゃぁぉっ! へっ君が変態になってるですぅぅっ!」
「失敬な羊さんだね……イケメンと言いたまえ!」

ブーメランパンツ姿のヘッグを見付け叫ぶメェ、それが普通の反応だろうな……何故俺達は叫ばなかったんだろう。

「それはどうでもいいんだよ……メェ、今の不愉快な言葉の意味、教えてくれないかな?」
「ぅぅぅっ、惚けるなですよ! 全部ラムが見てたんですよ!」

怒ってるメェはぐわんぐわんとラキュを揺らす、ラキュも訳の分からない事を言われて怒ってるのか顔が怒りに満ちている、互いにそんな表情を見せる、メェは何がどうしたのか説明してくれる、簡単にまとめると……ラキュが鬼騎を壁ドンして告白した、その告白を鬼騎が受けたと言う事らしい……。
それを聞いたラキュと鬼騎が口をポカーンと開ける、そしてラキュはメェを軽く突き飛ばす、鬼騎はどしどしとメェに歩み寄る。

「はぁ? 何気持ち悪い事言ってるの? 冗談でも言って良い事と悪い事があるよね? あの脳筋と付き合う? 同じ男でもごめんこうむるよ」
「メェ……さん、その冗談は……笑えませんですます」

そしてラキュは鬼騎に指差し、鬼騎はラキュを指差し憎しみに満ちた顔で互いを睨む。

「……はえ? でっでもラムが……」

どう言う事か理解できない、メェよ……お前は盛大に勘違いしたんだ。

「あの変態ドMスライムが何を見て何を話したのかは知らないけどさ……違うからね?」

目をパチクリして動揺するメェ……数秒間硬直した後深呼吸をして恐る恐るラキュに話し掛ける。

「じゃ……じゃぁ、本当に付き合ってないんですね?」
「だからそう言ってるでしょ?」

はぁ……ため息をつくラキュ、それを聞いてメェは。

「……はぅぅぅ、良かったですぅ」

ぺたんっと床に座り込み安心しきった顔をする。

「全く……とんだ勘違いをしてくれたね、不愉快だよ」
「同感だな、わしも不愉快だと思った」

2人は睨み合って「ふんっ!」とそっぽを向く、タイミングが同じ……本当は仲が良いんじゃないか? そう思ったが、言ったら確実に怒られるので黙っておこう。

ダダダダダッーー
バタァァンッーー

「ラキュ様っ、鬼騎っ! 2人の馴れ初めを聞かせて下さい!」

ヴァームが走って現れた、扉は蹴破られ壊れてしまった、ヴァームは興奮しながらラキュの両肩を掴み「はぁはぁ」言って問いただす、この後ラキュがぶちキレたのは言うまでもない。


「さて……なんやかんやあったが、皆の者準備は出来たかえ?」

あの後ラキュがぶちキレたと同時にロアが登場した……そして荒ぶるラキュや興奮するヴァームを静め、全ての誤解を解いた。

「ヴァーム、ラム……後で覚えておきなよ?」
「ふふふ……ちょっとしたメイドのお痛です、許してください」

あぁ……また険悪な雰囲気になりそうだ、すると。

「……こほんっ」

空気を変えるかの様にロアが咳払いする。

「もう一度聞くのじゃ? 準備は出来たかえ? わらわは出来ておる」

そうだろうな、ロアの足元には荷物がある、そこに色々と入ってるんだろう。

「メェも出来てるですよ!」
「わしもだ」

ラキュとヴァームの騒動があった時、いつの間にか荷物を取りに戻っていたメェ、随分な大荷物だな、それ……持ち上げられるのか?

「俺も完璧かつクールに出来てる……何故なら! イケメン…」
「僕も出来てるよ」

ヘッグの言葉に被せてくるラキュ……少し不満げな表情を見せたがラキュは無視をした。

「私は用意も何も持っていく物はありません」
「あたしもないですわ」

そう言う2人の足元には荷物が置いていない、何故かは分からないが……まぁ別に良いだろう、ん? あれ? 1人足らなくないか? きょろきょろ周りを見渡してみる、そしたらパタパタと足音が聞こえて来た。

「クータン、海は無理……って言った、誘えなかった」

がっくりと肩をおとして現れたのはアヤネだ、いない事に今気付いたが……何処に行ってたんだ?

「アヤネ、海に行く準備は出来ておるか?」
「それはばっちり……持ってきた」

アヤネの手には大袋、入り口から服がはみ出ている……ちゃんと収納しろ。

「……あっ、俺は何も用意できないぞ?」

と、ここで俺は気付く……用意するも何も俺はここに誘拐されたから用意出来る物なんてない。

「それなら心配は無用じゃ、わらわとヴァームで用意した」
「それ心配しかないんだが……」

俺に用意したのはきっとコスプレグッズが大半だろうな……。

「と言うか今から行くのか?」
「勿論今から行くのじゃ!」

カッ! と目を見開いて両腕を拡げる……そして、パンっ!と柏手した、その瞬間俺達はこの部屋から消えた……。


「着いたのじゃ!」
「いや、着いたのじゃじゃないだろ!」

いきなり目の前が真っ暗になった時は死んだかと思ったぞ、文句を言う為にロアに歩み寄る俺「まぁ……まぁ……」とか言われるが文句を言わないと気がすまない。

「シルク! 見て……海!」

そんな時だ、アヤネに声を掛けられた、その方に振り向いてみる。

「……凄いな」

そこには息をのむような景色が広がっていた、まさに白い砂浜、青い空、青い海……そして潮の香、この香を感じるだけで海に来たと思わせる事が出来るだろう……そんな景色を見てしまえば文句など言えなくなった。

「くふふふ……では各自自由行動じゃぁ! 行くぞシルク!」
「えっ……おっおい! 引っ張るな!」

ロアに腕を掴まれ海に向かって走る……楽しそうな顔だ、そして皆はロアの言った通り各自自由行動を開始するのであった、これから何が始まるか……不安で仕方ないな。

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