どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

124

「疲れた……」

数時間後、クータンはラキュの言った通り放っておいたら直った。
これで万事解決……やれやれ、これで一息つけるな……と思いきや今度は俺が倒れた……色んな事が重なった疲労でな。
今度は俺がソファーに横たわってる、因みにラキュは痛みが引いたのか俺の横に座っている。

「大丈夫?」
「大丈夫じゃない」

そう、精神的に大丈夫じゃないんだ……頼むから今この瞬間だけは変な事は起きるんじゃないぞ? 絶対だぞ? 絶対だからな! これ、振りじゃなくてマジな方だからな。

「どっ……どうぞ……カボチャのお茶……です」

おっと、クータンがお茶を淹れてくれたみたいだ……起き上がって飲むとしよう。

「さっきは……すみません」
「いや、気にしなくて良いぞ?」

俺が変な対応をしたらクータンはまたネガティブモードになってしまう、なので平静を装う、このカボチャのお茶も飲みたいしな、ティーカップを手に取りお茶を口に含む……暖かい、そして口一杯に香ばしさと仄かな甘さが広がった……あぁ旨い。

「ラキュくんも……どうぞ」
「頂くよ」

ラキュにもお茶を薦め、それを飲む……するとラキュはほっこりした顔になる。

「……クー、そろそろ座ったら?」
「ふぇ!?……あっ……はい……そうします」

さっきから立ちっぱなしのクータン、俺も気にはなっていた……代わりに言ってくれた、おどおどしているが座るクータン…。

「ねぇ……何かあったの?」

そしたら続けてラキュが話し掛ける……ここに来た時、クータンは明らかに何かに怯えていたよな? 「来ないで」って言って、あんな重いキャンドルスタンドをラキュに投げつけたんだもんな……普通はあんな事しないよな?

「え……あ……うぅ」

口ごもるクータン……あぁ、この反応は何かあったな、だが言い辛そうだ……余程酷い目にあったらしい。

「あっ、嫌なら無理に言わなくて良いよ……ごめんね?」
「えっ……いっいや……違うんです! まだ……落ち着かなくて……言いごもった……だけです」

だから言えます、と呟く……これは相当心に来てるらしいな、言ってくれるなら俺とラキュがきちんと話を聞いて元気つけなきゃいけないな。

「では……いいますね?」
「うん」
「あぁ……」

そしてクータンは話していく、それは朝の出来事らしい……。

クータンは俺とラキュが知っての通り魔王城地下に住んでいる、基本地下からは出ない生き方をしているが……今日は地上に出たらしい。

理由は雨だからだそうだ……晴れの日は太陽が出てて嫌だけど雨の日は太陽が隠れてるから平気らしい……それと水浴びが好きだから雨の日は決まって地上に出てくると言った。
雨の日にしか出ない……どこどの生物みたいだな、と、そんな事はさておき……クータンは買い物をしに色々店を見て回った、茶葉や砂糖や色々と買ったらしい……で、それから時間が余ってしまったので久し振りに地上を歩きたくなって裏道を歩いた、そこで事件は起きた。
クータンはいりくんだ裏道を通っていたら曲がり角を通った……そしたら誰かにぶつかった。
そしてお互い尻餅をついた……クータンが倒れていたら、相手の方が近付いて来てゆさゆさ揺らして来た……倒れた相手に乱暴な事をするな……と思って聞いていたら相手の容姿を言った。
黒髪のポニーテールで身体はスマート、黒い服を着ていた女性……と言った……うっうん、ある人物が思い浮かんだが他人のそら似かもしれないよな? で、クータンが驚いて謝って逃げた……まぁ当然の反応だと思う。
それで終わったかと思ったら……何故かそいつは追い掛けて来た、えっ何で? と聞いたらクータンは「知りませんよ!」と言われた……成る程、訳も分からず追い掛けられた訳か。
話を聞いていたらそいつは訳の分からん事を言ったらしい……「勝負だ!」だとか「負けない」だとか……俺も聞いていて訳が分からない。
あとそいつは魔物に負けずとも劣らない体力の持ち主見たいで長い時間追い掛けられたとの事……最後はカボチャの被り物をお腹にぶつけて撃退して今に至るらしい。

そうか、だいたい分かった……ラキュにキャンドルスタンドを投げつけたのは、そいつがここまで来たと勘違いしたからだな? 物の見事にとばっちりを受けた訳か……はははっ。

「と言う事が……あったんです」
「そっそうか……」
「へぇ……」

少し考える仕草を取るラキュ、小声で「それって……あの娘だよね?」と呟く、あぁ……その推理は間違ってないだろうな、その外見と阿呆みたいな行動の情報、思い当たる奴なんて1人しかいないじゃないか。

「ごめんなクータン」
「えっ……えっ?なんで……シルクくんが謝るんですか?」

俺は深々と頭を下げた、いや正確に言えば、あいつの代わりに深々と頭を下げた、くっ……何他人に迷惑を掛けてるんだよあいつは! 城に帰ったら説教してやる!

「本当にすみませんでしたぁっ!」
「ふぇっふぇぇ? なっ……えっ……かっ顔を上げて下さいよぉ!」

兎に角今は訳も分からず恐怖を与えてしまったクータンに謝らなければならない、ふふふっ……アヤネ、城に帰ったら覚えとけよ?

「どうやら魔王は俺と結婚したいらしい」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く