FORSE
10
彼女は閉じ込められていた。
強度は世界最強とまでいわれる青い服は、ところどころが破れていて、そのところどころから血が滲み出ていた。
彼女は、資本主義国の列強『資本四国』の中にあるレイザリー王国の人間だ。
――その国で、最強と呼ばれた存在。
――国を、まもる存在。
彼女は、ヒュロルフタームのパイロット、ノータだった。
そのころサリドとグラム。
「畜生。ここで姫様の生体反応が切れてる。ここで捕まっちまったのか?」
「そうかも。だって見てみろよ」
サリドが指差した方向には、なにもなかった。
「……なにもねーぞ?」
「ちゃんと見なよ。雪にあんなに変な感じに埋もれてるとかおかしいだろーよ」
「……だな」
グラムは納得した。
戦争はヒュロルフタームどうしの戦いである。
故に狙われるのはヒュロルフタームと、その操縦士、そしてそれを整備する機材や替えのパーツなど、だ。
だから、機材は隠す必要がある。
「だからってあんなあからさまに隠すとはな……。よくバレなかったな……」
サリドは笑いながら、「今まで機材に直接攻撃がこないからじゃない? この国がヒュロルフターム一機しか持ってなくてよかったよ」
「しかも紛い物だけどな」
サリドの言葉にグラムは続けた。
サリドとグラムはその不自然に盛り上がった雪を払った。
すると、
「やっぱりな。俺の言った通りだ」
その下には銀色の金属が見えた。
「しかしだな、サリド」
「なんだ? グラム」
「今敵の本拠地を発見した。これはいいことだが」グラムは顔をしかめ、「実際入口はどこにある? まさかこのだだっ広い空間のどこかに埋もれてるとするなら探すには骨が折れるぜ」
「簡単じゃん。そんなの」サリドの答えは意外にもあっさりしたものだった。
「別にだだっ広い雪の中を虱潰しに探さなくていいんだよ。どう考えたって入口は雪に一番近いところかつなにか物体、しかも自然の、があるところだよ」
「……なんでそうだって言えるんだよ」
「グラム。考えてみろよ。今や電気通信がすべて手玉にとれる戦場で無線なんか使ってみろ? 虚偽の事実を流されて自軍が混乱させられちまう」
「つまり……、どういうことだよ?」
「お前はほんとに閃きが鈍いな。それでも兵隊か?」
「……所詮俺は『貴族』で父親が政治家の七光りですよーだ」
「ヴァリヤー上院議員だっけか。ヒュロルフタームプロジェクトを推進する一人だったな」
「ああ、そうだよ。『クリーンな戦争』を心がけていたらしいが、最近は結果主義で結果を得られない兵は即辞めさせられる。嫌ってるやつも相当いるんだろうな」
「ヒュロルフタームが中心となった戦争でどう活躍すりゃいいんだろうな」サリドは手元にあるアサルトライフルを眺めながら、「本題に戻すか。つまりさっきの理由から無線は無理だ。即ち有線にする必要がある」
「しかしそれじゃあ断線とかさせられて閉じ込められるんじゃ? それにチャンネルを逐次変えるサイン無線波なら大丈夫だと思うんだが」
「サイン無線波はコストがかかるし資本主義国内にしか流通してない技術だからそれは有り得ないよ」
サリドはアサルトライフルを構え、言った。
「つまり、このあたりの雑木林にスイッチがあって、そこから入れる。……『建物は下から入る』という常識を覆してはいるよね」
「おまえそんなこと言ったら地下室は常識の範囲外なのかよ?」
グラムはサリドの言葉に苦言を呈する。
「……そんなことより、さっさと行こう。『地下帝国への入口』を探しに」
間違えた恥ずかしさを無くすためか、一瞬物事について深く考え、そして言った。
強度は世界最強とまでいわれる青い服は、ところどころが破れていて、そのところどころから血が滲み出ていた。
彼女は、資本主義国の列強『資本四国』の中にあるレイザリー王国の人間だ。
――その国で、最強と呼ばれた存在。
――国を、まもる存在。
彼女は、ヒュロルフタームのパイロット、ノータだった。
そのころサリドとグラム。
「畜生。ここで姫様の生体反応が切れてる。ここで捕まっちまったのか?」
「そうかも。だって見てみろよ」
サリドが指差した方向には、なにもなかった。
「……なにもねーぞ?」
「ちゃんと見なよ。雪にあんなに変な感じに埋もれてるとかおかしいだろーよ」
「……だな」
グラムは納得した。
戦争はヒュロルフタームどうしの戦いである。
故に狙われるのはヒュロルフタームと、その操縦士、そしてそれを整備する機材や替えのパーツなど、だ。
だから、機材は隠す必要がある。
「だからってあんなあからさまに隠すとはな……。よくバレなかったな……」
サリドは笑いながら、「今まで機材に直接攻撃がこないからじゃない? この国がヒュロルフターム一機しか持ってなくてよかったよ」
「しかも紛い物だけどな」
サリドの言葉にグラムは続けた。
サリドとグラムはその不自然に盛り上がった雪を払った。
すると、
「やっぱりな。俺の言った通りだ」
その下には銀色の金属が見えた。
「しかしだな、サリド」
「なんだ? グラム」
「今敵の本拠地を発見した。これはいいことだが」グラムは顔をしかめ、「実際入口はどこにある? まさかこのだだっ広い空間のどこかに埋もれてるとするなら探すには骨が折れるぜ」
「簡単じゃん。そんなの」サリドの答えは意外にもあっさりしたものだった。
「別にだだっ広い雪の中を虱潰しに探さなくていいんだよ。どう考えたって入口は雪に一番近いところかつなにか物体、しかも自然の、があるところだよ」
「……なんでそうだって言えるんだよ」
「グラム。考えてみろよ。今や電気通信がすべて手玉にとれる戦場で無線なんか使ってみろ? 虚偽の事実を流されて自軍が混乱させられちまう」
「つまり……、どういうことだよ?」
「お前はほんとに閃きが鈍いな。それでも兵隊か?」
「……所詮俺は『貴族』で父親が政治家の七光りですよーだ」
「ヴァリヤー上院議員だっけか。ヒュロルフタームプロジェクトを推進する一人だったな」
「ああ、そうだよ。『クリーンな戦争』を心がけていたらしいが、最近は結果主義で結果を得られない兵は即辞めさせられる。嫌ってるやつも相当いるんだろうな」
「ヒュロルフタームが中心となった戦争でどう活躍すりゃいいんだろうな」サリドは手元にあるアサルトライフルを眺めながら、「本題に戻すか。つまりさっきの理由から無線は無理だ。即ち有線にする必要がある」
「しかしそれじゃあ断線とかさせられて閉じ込められるんじゃ? それにチャンネルを逐次変えるサイン無線波なら大丈夫だと思うんだが」
「サイン無線波はコストがかかるし資本主義国内にしか流通してない技術だからそれは有り得ないよ」
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「つまり、このあたりの雑木林にスイッチがあって、そこから入れる。……『建物は下から入る』という常識を覆してはいるよね」
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