FORSE
6
そのころサリドとグラムは通気孔を潜り抜け、なにかの施設にたどり着いた。
直方体の機械がたくさん並んでいて、それら一つ一つが赤やオレンジや緑、といった色が点滅したり激しく光ったりしている。
「ここは……何の施設なんだ?」
グラムが天井のほのかに光る蛍光灯を見て言った。
「携帯端末は圏外だからリアルタイムの情報は入らないけど、たぶんここがビッグ・フロートの真下じゃないかな」
サリドは携帯端末のタッチパネルを触りながら言った。
「敵のアジトの真下か。こいつぁ簡単に着くもんだな」
「油断するなよ。グラム。いつどこに敵がいるかわかんねぇからな」
そんな瞬間は、そう遠くはなかった。
刹那、グラムの首筋に冷たいものがあてられた。鋭く、冷たいものが。
グラムはそれに気づき振り向こうとした――が、あてられた冷たいものを見て、それをやめた。
「……どうやら襲撃のようだ」
サリドは何もできなかった。いや、しようと思えば出来たのだろうが、グラムの首筋にある鋭く冷たい刃がそれを許さなかった。
抜かった。よく考えれば社会連盟は資本四国などとは違って専門の傭兵部隊がある。仮にそれでないにしろプログライト帝国は少ないながらも皇帝の私設軍があることはブリーフィングで聞いていた。なのに、なにも対策をしなかった。誰が悪い? 無論俺が悪い。何も考えず通気孔という唯一であろう入口を発見して張り切っていたばかりに――!
「あ、あのー?」
そこでサリドの思考暴走が唐突に停止した。なぜならサリドとグラム以外――即ち襲撃者――の声が聞こえたからだ。
その声は資本四国の公用語である英語であったものの、なにかアクセントがおかしかったり、なんというか、英語を習いたての人間が話しているような、そんな感じだった。
「だからですね? 我々は、このプログライト帝国を、内から、潰そうとしている、ただそれだけの、ことなんです」
片言の英語で、その黒に身を包んだ人間は言った。
一時間前。
結果から言えば襲撃者は味方だった。ただプログライト帝国を内から潰そうと試みて半ば個人的に活動していたそうだが、今のところは秘密裏で表立った活動が出来ていないようだった。そしてなかば諦めかけていたようだが。
そこでサリドたちが潜入してきた。
即ち敵軍が、ここを潰すために、いや正確には『結界』を壊すためにやってきた。それに便乗しない手はない。と考えたらしい。
こうしてその人間はサリドたちを襲撃して、話の場を設けた、というわけだ。
「……話は解った。しかしなぜここにニンジャがいる?」
グラムはようやく口を開いて、言った。
ニンジャ。
それは古来より暗殺術や潜入術を学んだまさにアサシン的存在。
その元祖はかつてあった国、ニッポン。
今はレイザリーに取り込まれ、レイザリー王国ニッポン自治区となってはいるが、未だにその文化は生きている。そしてその文化はレイザリー王国の人間にも浸透しつつあった。
畳、抹茶、米を食べる文化、日本語などがそのいい例だ。
ニッポンは、『核戦争』前から生きる数少ない国の一つだ。なぜ生き残ったのかは判らない。噂には『冷凍保存した旧人類がいる』とか訳のわからぬ話があるくらいだ。
「なぜ、私たちニンジャがここにいるか、ですが」
その人間は綺麗な、声で話した。
口に布をあてているせいか、少し声が聞こえずらい。
「……すいません。一応、外すのが、常識でしたね。それと、日本語は、話せますか? 聞き取れますか?」
人間は布を外しながら、聞いた。それにサリドたちは視線を外さずに頷いた。
驚いた。
彼、いや彼女はくの一だったのだ。
くの一、とは女のニンジャである。
「……話を続けます。我々は3年前のプログライト潜入作戦のメンバーでした。たしかに我々ニンジャならば誰にも気付かれずに潜入することは簡単に出来ますからね」
「……仲間は?」
「先ほどのあなたたちを襲った時にいた二人だけです」
「なるほど。戦力が倍にはなったものの、それでも四人……か」
「プログライト帝国の要だけあって迷いやすいですし、罠もありますし、敵も多いです……。我々もやっと11Fまでの内部しか解ってないんですよ」
「11Fか……」
サリドはただそれとなく呟いた。
直方体の機械がたくさん並んでいて、それら一つ一つが赤やオレンジや緑、といった色が点滅したり激しく光ったりしている。
「ここは……何の施設なんだ?」
グラムが天井のほのかに光る蛍光灯を見て言った。
「携帯端末は圏外だからリアルタイムの情報は入らないけど、たぶんここがビッグ・フロートの真下じゃないかな」
サリドは携帯端末のタッチパネルを触りながら言った。
「敵のアジトの真下か。こいつぁ簡単に着くもんだな」
「油断するなよ。グラム。いつどこに敵がいるかわかんねぇからな」
そんな瞬間は、そう遠くはなかった。
刹那、グラムの首筋に冷たいものがあてられた。鋭く、冷たいものが。
グラムはそれに気づき振り向こうとした――が、あてられた冷たいものを見て、それをやめた。
「……どうやら襲撃のようだ」
サリドは何もできなかった。いや、しようと思えば出来たのだろうが、グラムの首筋にある鋭く冷たい刃がそれを許さなかった。
抜かった。よく考えれば社会連盟は資本四国などとは違って専門の傭兵部隊がある。仮にそれでないにしろプログライト帝国は少ないながらも皇帝の私設軍があることはブリーフィングで聞いていた。なのに、なにも対策をしなかった。誰が悪い? 無論俺が悪い。何も考えず通気孔という唯一であろう入口を発見して張り切っていたばかりに――!
「あ、あのー?」
そこでサリドの思考暴走が唐突に停止した。なぜならサリドとグラム以外――即ち襲撃者――の声が聞こえたからだ。
その声は資本四国の公用語である英語であったものの、なにかアクセントがおかしかったり、なんというか、英語を習いたての人間が話しているような、そんな感じだった。
「だからですね? 我々は、このプログライト帝国を、内から、潰そうとしている、ただそれだけの、ことなんです」
片言の英語で、その黒に身を包んだ人間は言った。
一時間前。
結果から言えば襲撃者は味方だった。ただプログライト帝国を内から潰そうと試みて半ば個人的に活動していたそうだが、今のところは秘密裏で表立った活動が出来ていないようだった。そしてなかば諦めかけていたようだが。
そこでサリドたちが潜入してきた。
即ち敵軍が、ここを潰すために、いや正確には『結界』を壊すためにやってきた。それに便乗しない手はない。と考えたらしい。
こうしてその人間はサリドたちを襲撃して、話の場を設けた、というわけだ。
「……話は解った。しかしなぜここにニンジャがいる?」
グラムはようやく口を開いて、言った。
ニンジャ。
それは古来より暗殺術や潜入術を学んだまさにアサシン的存在。
その元祖はかつてあった国、ニッポン。
今はレイザリーに取り込まれ、レイザリー王国ニッポン自治区となってはいるが、未だにその文化は生きている。そしてその文化はレイザリー王国の人間にも浸透しつつあった。
畳、抹茶、米を食べる文化、日本語などがそのいい例だ。
ニッポンは、『核戦争』前から生きる数少ない国の一つだ。なぜ生き残ったのかは判らない。噂には『冷凍保存した旧人類がいる』とか訳のわからぬ話があるくらいだ。
「なぜ、私たちニンジャがここにいるか、ですが」
その人間は綺麗な、声で話した。
口に布をあてているせいか、少し声が聞こえずらい。
「……すいません。一応、外すのが、常識でしたね。それと、日本語は、話せますか? 聞き取れますか?」
人間は布を外しながら、聞いた。それにサリドたちは視線を外さずに頷いた。
驚いた。
彼、いや彼女はくの一だったのだ。
くの一、とは女のニンジャである。
「……話を続けます。我々は3年前のプログライト潜入作戦のメンバーでした。たしかに我々ニンジャならば誰にも気付かれずに潜入することは簡単に出来ますからね」
「……仲間は?」
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