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FORSE

巫夏希

というわけなので、サリドたち三人はショッピングモールで遊ぶこととなった。

ショッピングモールはサリドたちが今までいたプログライトのベースキャンプ(あれでも一つの国がすっぽりと入ってしまうくらいなのだが)が二個ほど入ってしまうほどの大きさだ。とても一日では回り切れない。

「んじゃー、まずどこ行くか」

グラムがマップをつまらなさそうに眺めて、言った。

「お兄ちゃん、私洋服買いたいんだけど」

妹が話しかけてきた。

「あ、そう? わかった。じゃあそこまで行くよ。キャティ」

グラムがそう言うとキャティは嬉しそうに小走りになって、通路の先に向かった。

「兄弟、っていいなぁ」呟くようにサリドは言う。

「そうか? あれでも会ったらいつも喧嘩だぜ? 思春期の妹、って結構めんどくさいもんなんだ」

「そんなもんなのか?」

「あぁ」

そんな世間話をしながら二人もキャティの後を追った。


そのころ。リーフガットはとある場所にいた。

いつものように軍服じゃなく、黒いスーツでびしっとしている。ところで、ここは何処なのだろうか?

ここは、議員会館、と呼ばれる場所で、この国の全議員の事務所がある所だ。

彼女はその最上階にいた。そこには噴水やら小高い山やら、はたまた滝まで付けられた庭が広がっていた。

「これが事務所ねぇ……。もはや別荘じゃない」

ここにいる人間はただひとり。

ヴァリヤー・リオール。

先の戦争で妨害行為を行なったと見られている人間。そんな現在は自主的に中に籠っている。

「なにも工作していなければいいのだが……」

そう言って、リーフガットは庭の終着にある扉にたどり着いた。

「やぁやぁ。リーフガットくん。よくここまでやってきたなぁ」

扉を開けると、その嗄れた声。

ヴァリヤーの声だった。

「ひとつ、お尋ねしたいことがございまして来たのですが」

「まぁ、座るがいい。大丈夫だ。罠なんぞ仕掛けてはおらんよ」

ヴァリヤーがそう言うのでリーフガットはそれに従って近くのソファに腰かけた。

「……して、聞きたいこととは?」

「これ、読ませていただきました」リーフガットはカバンからある本を取り出す。

それを見てヴァリヤーは僅かに眉をひそめて、「いかんなぁ。これは書物庫に保管されていた、持ち出し厳禁のやつじゃないかね? こんなものを持ち込んで……、君も只では済まんだろう?」

「こんかいは委員会の協力を得た上です」

リーフガットは即座にそれについて返す。

それを聞いたヴァリヤーは思わず立ち上がった。


「まさか……!! 委員会は私を裏切って……! こんなことを」

「なにを仰いますか?」

リーフガットは笑って、

「貴方が国を裏切ったんでしょう?」

「違う! 私はただ……っ。世界の安寧とヒュロルフタームのことを思って……」

「その結果のためにやったことが妨害か? ほんと何を思っているのやら?」

「……もう、我慢ならん」

「ん?」

「許さん…… 許さんっ!! せめて貴様だけでも殺すっ!!」

そう言ってヴァリヤーは近くにあったボタンを押す。

「なんでわしがこんなビルの最上階にいるのか、わかるかね?」

ゴウン、と低い唸り声が部屋の中に響いた。

「まさか……、このためだったと……?」

そこにいたのは小型の人型戦闘兵器。

ヒュロルフタームだった。

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