FORSE
9
2時間後。
日が傾いてきたころにようやく三人を載せたトラックは首都ウェイロックに到着した。
ウェイロックはもともと城塞が建築され、それを中心として広がった、言わば城下町である。
堅牢な建物の間を、蜘蛛の糸のように張り巡らされている石畳の道路を軍用のトラックが走っているのだ。
一応、レイザリーとリフディラは同盟関係にあるためこういうことはしても構わないのだが、やはりなんだかそういうのは緊張してしまうものなのである。
「何処だろうな。宿屋は……」
トラックに乗りながら、サリドとグラムは慎重にリーフガットから言われたマークの旗が掲げられた宿屋を探す。
「彼処じゃない? ほら『グラン・モーレ』って書いてあるとこ」
サリドが唐突に言ったので、グラムもその方を見た。
すると確かにその通り、白地に赤の十字架のマーク……シスター部隊のマークの旗が掲げられていた。
「彼処か」
そう呟いてグラムは宿屋グラン・モーレの傍に車を停めた。
「失礼する」
グラムはグランモーレの扉を開けた。
中は質素ながらも埃一つない綺麗さだった。なるほど、シスター部隊が駐留する宿屋らしいかもしれない。
カウンタに座る無精髭を顎に生やした男にサリドは話しかけた。
「ちょっと聞きたいんだけど」
「ん?」新聞を読んでいた男はサリドの言葉に怪訝な表情を見せて言った。
「ここにシスター部隊がいると聞いたんだが」
その言葉を言った瞬間、男の眉がぴくりと痙攣したかのように動いた。
「……あんたら余所者だろ? しかも服装からしてレイザリーだな?」
サリドは頷く。
「だめだ。諦めな。シスター部隊は今は結構忙しいらしいからな」
そう言ってまた男は新聞を読み始めた。
「どうしたんですか?」
サリドたちが諦めて帰ろうとしたそのとき、奥の方から声が響いた。
それはとても透き通った声で、声を聞いた者を優しく包み込むような……そんな声だった。
「シスター・ビアスタ。何故この時間にここへ?」
宿屋の店主は先程とはうってかわって、緩めた口角をこれでもかというほど高くあげ、優しい声で言った。先程の峻厳そうな近寄りがたい雰囲気を放っていた店主は何処へやら。
そしてシスター・ビアスタと呼ばれた方は白いローブを着ていた。頭に被る帽子の部分は今は後ろの方に置いてあり鮮やかな黄色の髪を見せている。彼女はまるで羽と輪っかさえあれば天使のようにも見えてしまう存在だった。
「薬草を調合していたのですよ。ところで……そちらは?」
シスター・ビアスタが困惑の表情を示しその視線をサリドに送った。
「あぁ。こちらは……」
今度は店主が困惑の表情を示した。
サリドはここぞとばかりにまくし立てるように言った。
「透明病の患者がいます」
空気が凍りついた。
誰も何も言わない状況。
「……おや。それは不味いですね?」
シスター・ビアスタは先程の困惑の表情のまま首を傾げた。しかし、その眼は獲物を狙う蛇のように鈍く光っていた。
「とりあえず二階に運んで下さい。店主。奥の昇降機を借ります」
そう言ってシスター・ビアスタは素早く階段を登った。三人の返答を得ないまま。
日が傾いてきたころにようやく三人を載せたトラックは首都ウェイロックに到着した。
ウェイロックはもともと城塞が建築され、それを中心として広がった、言わば城下町である。
堅牢な建物の間を、蜘蛛の糸のように張り巡らされている石畳の道路を軍用のトラックが走っているのだ。
一応、レイザリーとリフディラは同盟関係にあるためこういうことはしても構わないのだが、やはりなんだかそういうのは緊張してしまうものなのである。
「何処だろうな。宿屋は……」
トラックに乗りながら、サリドとグラムは慎重にリーフガットから言われたマークの旗が掲げられた宿屋を探す。
「彼処じゃない? ほら『グラン・モーレ』って書いてあるとこ」
サリドが唐突に言ったので、グラムもその方を見た。
すると確かにその通り、白地に赤の十字架のマーク……シスター部隊のマークの旗が掲げられていた。
「彼処か」
そう呟いてグラムは宿屋グラン・モーレの傍に車を停めた。
「失礼する」
グラムはグランモーレの扉を開けた。
中は質素ながらも埃一つない綺麗さだった。なるほど、シスター部隊が駐留する宿屋らしいかもしれない。
カウンタに座る無精髭を顎に生やした男にサリドは話しかけた。
「ちょっと聞きたいんだけど」
「ん?」新聞を読んでいた男はサリドの言葉に怪訝な表情を見せて言った。
「ここにシスター部隊がいると聞いたんだが」
その言葉を言った瞬間、男の眉がぴくりと痙攣したかのように動いた。
「……あんたら余所者だろ? しかも服装からしてレイザリーだな?」
サリドは頷く。
「だめだ。諦めな。シスター部隊は今は結構忙しいらしいからな」
そう言ってまた男は新聞を読み始めた。
「どうしたんですか?」
サリドたちが諦めて帰ろうとしたそのとき、奥の方から声が響いた。
それはとても透き通った声で、声を聞いた者を優しく包み込むような……そんな声だった。
「シスター・ビアスタ。何故この時間にここへ?」
宿屋の店主は先程とはうってかわって、緩めた口角をこれでもかというほど高くあげ、優しい声で言った。先程の峻厳そうな近寄りがたい雰囲気を放っていた店主は何処へやら。
そしてシスター・ビアスタと呼ばれた方は白いローブを着ていた。頭に被る帽子の部分は今は後ろの方に置いてあり鮮やかな黄色の髪を見せている。彼女はまるで羽と輪っかさえあれば天使のようにも見えてしまう存在だった。
「薬草を調合していたのですよ。ところで……そちらは?」
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