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FORSE

巫夏希

12

そのころ。リーフガットたちがいる基地では掃除諸々を行っていた。なんとなく兵士の覇気がないようにみえるのは敵のアジトまでようやく辿り着いたら実はもぬけの殻だった、ということが響いているからだろう。

「ほら、シャキッとするー。でないと暫定休暇の日数が減るよー」

パイプ椅子に腰かけて書類の束を団扇代わりに使っているのはリーフガット・エンパイアーだ。彼女もまた、今回の作戦のあまりにも呆気ない結果に少なからず落胆していた。

リーフガットは自分の部屋の書類の整頓を行っていた。といってもそこまでではなく、例えば書類の束で机や床その他諸々が覆われているとか、精々軽い掃除くらいだった。

斯くして今はテレビを見ながらアフタヌーンティーを飲んで一段落ついているところであった。

「夏とはいえこの辺は寒いな……」

そう呟きながらリーフガットはアフタヌーンティーを一口、口に含む。

テレビではちょうど祭りのシーズンからかその宣伝しかやっていなかった。といっても今は、仮にそれを見ているのが資本四国の人間としても、うざったく感じることだろう。

何故ならば今はレイザリーの首都にて行われている慰霊祭の放送をしているからだ。たぶん世界のどこを見ても故人を偲ぶ時に世界トライアスロンの宣伝なぞするとは思えない。

しかしながらレイザリー王国は資本主義国の最大権力を持つ国であり資本四国でも中心代表国を担う重要な国であり、それを仮に行っても誰も注意しない。だからレイザリーでは資本と人心倫理の欠如が見られ、それが社会問題にまで発展してしまっているのだ。

話を戻すと、『慰霊祭』とは10年前に発生したとある事故で亡くなった人間を慰霊するためのものである。

その事故は未だ多くの謎が解明されておらず遺族と国との間で亀裂が走っている。

その事故とは、ヒュロルフタームの“暴走”。

現在使われているヒュロルフタームのナンバリングは初号機からとなってはいるが、その大本となる零号機が存在していた。

その名はズリ。

ヒュロルフターム・プロジェクトが母体となって試作品エヴァードを作り上げ、それを基にしてズリが誕生した。その後次いでクーチェが完成するのだが……。

その間に起きた事故である。先程にも言った通りに多くの謎が解明されておらず、また、それを原因として反ヒュロルフターム派が生まれたことも事実であった。

「そうか……。もうあれから10年か……。時代も変わったものだな」

リーフガットはそう言って、またアフタヌーンティーを口に含んだ。

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