FORSE
20
そのころ。
サリドとグラムはヌージャヤック麓に聳える村に辿り着いた。
エンジンをオーバーヒート寸前まで動かしたからか半日もしないでそこに辿り着いた。
そして今は村にある小さな宿屋で今後の計画を建てていたのだった。
「どうやらヌージャヤック内は洞窟になっていて無限に入り組んでいるらしい。シスター・ビアスタから聴いた『夢月夜草』はその洞窟の奥地にあるらしく、そこにいるんじゃないか、ということだ」
サリドは既に長い間運転をしたのと直射日光に浴び続けたのとでへとへとになっていたグラムに言った。既に疲れきったグラムの代わりにサリドが村を回り、情報を収集していたのだ。
「……なるほど。つまりはその洞窟を抜ける必要がある、と。厄介だな」
「辺りには金属が埋まってるらしくて時計もコンパスも正確なそれを表さないみたいなんだ。ほんとうにめんどくさいよ」
サリドはそう言ってグラスに注いだ炭酸水を飲み干した。
『夢月夜草』とは透明病唯一の対処治療薬となりえる薬草のことだ。
それは副作用が多少あるものの透明病の進行をある程度遅らせることが出来る、とされている。しかしながらその情報はまだ臨床実験を行っていないからか確証のあるものではない。だから世間に大々的にアピールされているものでもない。
これはあくまでもシスター部隊が独自に研究を進めていった上で知り得た情報であって、これはまだ『知識』の片鱗に過ぎぬものだった。故に確認がとれない限り、発表は出来ない。それから行けば、姫様に夢月夜草を用いて治療を行うことが初めてとなり、これが成功すれば歴史的な快挙であることもまた明らかであった。
「……まさに最後の一手、って訳だな。それによっては俺たちゃ歴史に名が載るぜ」
「でもまぁ、ここまで来ると寧ろ何かいろいろとあって怖いんだけどね」
サリドは携帯端末を片手につまらなそうに呟いた。
「何だよ。サリド。やる気ないなぁ。一体どうしたってんだ?」
「君は簡単そうに言うけどヌージャヤックってのは人食い山って罵られるほど遭難者が出てる山なんだよ。それを緊張感無しに登ろうとする君がいろいろとおかしいよ」
「緊張感がない、って? 馬鹿野郎! 俺だってそれくらい感じてるよ。でも緊張感だけじゃあ登山は出来ないぜ?」
グラムは笑って、コップに残った炭酸水を飲み干した。
「さて、明日も早いことだし、寝るとするかい? ……まぁ君は早く寝ないだろうけど」
サリドはひとつ欠伸をして、携帯端末をスリーブモードにする。
「当たり前だ。軍務とはいえ、今はプライベートタイムだからな。好き勝手にさせてもらうぜ」
そうかい、とサリドはベッドに潜り込んで呟く。
「ま、明日苦労するのは君だし。それは別に問題ないもんね」
サリドとグラムはヌージャヤック麓に聳える村に辿り着いた。
エンジンをオーバーヒート寸前まで動かしたからか半日もしないでそこに辿り着いた。
そして今は村にある小さな宿屋で今後の計画を建てていたのだった。
「どうやらヌージャヤック内は洞窟になっていて無限に入り組んでいるらしい。シスター・ビアスタから聴いた『夢月夜草』はその洞窟の奥地にあるらしく、そこにいるんじゃないか、ということだ」
サリドは既に長い間運転をしたのと直射日光に浴び続けたのとでへとへとになっていたグラムに言った。既に疲れきったグラムの代わりにサリドが村を回り、情報を収集していたのだ。
「……なるほど。つまりはその洞窟を抜ける必要がある、と。厄介だな」
「辺りには金属が埋まってるらしくて時計もコンパスも正確なそれを表さないみたいなんだ。ほんとうにめんどくさいよ」
サリドはそう言ってグラスに注いだ炭酸水を飲み干した。
『夢月夜草』とは透明病唯一の対処治療薬となりえる薬草のことだ。
それは副作用が多少あるものの透明病の進行をある程度遅らせることが出来る、とされている。しかしながらその情報はまだ臨床実験を行っていないからか確証のあるものではない。だから世間に大々的にアピールされているものでもない。
これはあくまでもシスター部隊が独自に研究を進めていった上で知り得た情報であって、これはまだ『知識』の片鱗に過ぎぬものだった。故に確認がとれない限り、発表は出来ない。それから行けば、姫様に夢月夜草を用いて治療を行うことが初めてとなり、これが成功すれば歴史的な快挙であることもまた明らかであった。
「……まさに最後の一手、って訳だな。それによっては俺たちゃ歴史に名が載るぜ」
「でもまぁ、ここまで来ると寧ろ何かいろいろとあって怖いんだけどね」
サリドは携帯端末を片手につまらなそうに呟いた。
「何だよ。サリド。やる気ないなぁ。一体どうしたってんだ?」
「君は簡単そうに言うけどヌージャヤックってのは人食い山って罵られるほど遭難者が出てる山なんだよ。それを緊張感無しに登ろうとする君がいろいろとおかしいよ」
「緊張感がない、って? 馬鹿野郎! 俺だってそれくらい感じてるよ。でも緊張感だけじゃあ登山は出来ないぜ?」
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サリドはひとつ欠伸をして、携帯端末をスリーブモードにする。
「当たり前だ。軍務とはいえ、今はプライベートタイムだからな。好き勝手にさせてもらうぜ」
そうかい、とサリドはベッドに潜り込んで呟く。
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