FORSE
26
「……運がよかったな」
フィレイオはそう言って炎の塊を自らの手で消し去る。
「どうやら一時休戦のようだ」
なぜだ?
「そんなことは聞くなよ。あのお方からの命令でな」
そう言ってフィレイオは自らを炎に包み込み――消えた。
†
一先ず、積もる話はあるにしろこの夢月夜草を持ってシスター・ビアスタの待つあの宿屋――グラン・モーレに帰らねばならない。そもそも、その為にここに来たのだから。
「それじゃあ、これくらいあれば十分でしょう」
そう言ってシスター・フィリアスは五本ほど花を摘んで、言った。
「それじゃあ帰りますか。この花を用いた治療はなぜか私にしか出来ないのでしてね……」
†
二日後。
一先ず彼らはシスター・ビアスタと姫様の待つ宿屋グランモーレに到着した。フィレイオという謎の男との謎めいた戦いは置いとくとして、最終目的地であったここに辿り着いた。
その後、と言ってはなんだが、その治療は成功した。
ただし回復するに三日の期間を要してしまったのだが。
リーフガットにその後連絡を取ったところ、
「遅すぎだ馬鹿。私がどれほど上層部に頭を下げたと思っている」
……逆に怒られたという。
そのころ。
「どうしてあの者を逃したのですか?」
フィレイオが宮殿のような、洞窟のような、暗闇がすべてを支配している、そんな空間にいて、誰かに問いを投げている。
「……つまり、私に責任があると?」
暗闇の中で、声は答えた。
「ええ。何故逃がしたのか、聞かせていただきたい。彼処で逃がしても我々にメリットは存在しないはずだ」
「あぁ、確かにその通り。我々にメリットはない」
暗闇は首肯する。あくまでもそれは実体化したわけでなく、そのように見えただけではあるが。
「だが、それは現在の我々にとって、なのだ。未来の我々にはそれ相応の価値がある、という『予言者』からの思し召しだ」
「また予言者か……」
そう言ってフィレイオの顔が苦悶の表情で染まった。
「まぁそう顔を歪めるな。せっかくの美貌が台無しだぞ?」
「この男顔を見てそう言うとは……。皮肉っているのか? エレキス」
「いやいや。君は立派な“女性”ではないですか」
エレキス、と呼ばれた人間と思しきそれは乾いた咳をひとつふたつして言った。
そして、サリドとグラムは本国に帰還するために飛行機――といっても来るときに乗った無機質な軍用機だが――に乗っていた。
「あー。今回も今回で大忙しだったな」
「そうだね。しかしまぁある意味ヒュロルフタームとドンパチやるより疲労がたまったかも」
「それは言えてるな」
「サリド・マイクロツェフとグラム・リオールはいるか?」
部屋でインスタントのコーヒーを飲んでいたサリドとグラムに突然リーフガットがやってきた。
「どうしたんです? まさかまたヒュロルフタームとなんかやれとか……?」
「もう俺はヒュロルフタームと曲芸大会しろって言われてもやるかもしんねぇな」
「違う違う。今回は『世界平和』に関わることよ。ヒュロルフタームは一切関係無し!」
そう言ってリーフガットは数枚のB5のレポート用紙をまとめただけの束を二人に渡した。
「……これは?」
「世界トライアスロンのプログラム」
リーフガットからそれを聞かされ、二人の目が点となった。
「……えーと、つまり、どういう……?」
「えーと簡単に言えば、あんたらもトライアスロンに出てもらうわ」
リーフガットはただ無感動にそう言った。
フィレイオはそう言って炎の塊を自らの手で消し去る。
「どうやら一時休戦のようだ」
なぜだ?
「そんなことは聞くなよ。あのお方からの命令でな」
そう言ってフィレイオは自らを炎に包み込み――消えた。
†
一先ず、積もる話はあるにしろこの夢月夜草を持ってシスター・ビアスタの待つあの宿屋――グラン・モーレに帰らねばならない。そもそも、その為にここに来たのだから。
「それじゃあ、これくらいあれば十分でしょう」
そう言ってシスター・フィリアスは五本ほど花を摘んで、言った。
「それじゃあ帰りますか。この花を用いた治療はなぜか私にしか出来ないのでしてね……」
†
二日後。
一先ず彼らはシスター・ビアスタと姫様の待つ宿屋グランモーレに到着した。フィレイオという謎の男との謎めいた戦いは置いとくとして、最終目的地であったここに辿り着いた。
その後、と言ってはなんだが、その治療は成功した。
ただし回復するに三日の期間を要してしまったのだが。
リーフガットにその後連絡を取ったところ、
「遅すぎだ馬鹿。私がどれほど上層部に頭を下げたと思っている」
……逆に怒られたという。
そのころ。
「どうしてあの者を逃したのですか?」
フィレイオが宮殿のような、洞窟のような、暗闇がすべてを支配している、そんな空間にいて、誰かに問いを投げている。
「……つまり、私に責任があると?」
暗闇の中で、声は答えた。
「ええ。何故逃がしたのか、聞かせていただきたい。彼処で逃がしても我々にメリットは存在しないはずだ」
「あぁ、確かにその通り。我々にメリットはない」
暗闇は首肯する。あくまでもそれは実体化したわけでなく、そのように見えただけではあるが。
「だが、それは現在の我々にとって、なのだ。未来の我々にはそれ相応の価値がある、という『予言者』からの思し召しだ」
「また予言者か……」
そう言ってフィレイオの顔が苦悶の表情で染まった。
「まぁそう顔を歪めるな。せっかくの美貌が台無しだぞ?」
「この男顔を見てそう言うとは……。皮肉っているのか? エレキス」
「いやいや。君は立派な“女性”ではないですか」
エレキス、と呼ばれた人間と思しきそれは乾いた咳をひとつふたつして言った。
そして、サリドとグラムは本国に帰還するために飛行機――といっても来るときに乗った無機質な軍用機だが――に乗っていた。
「あー。今回も今回で大忙しだったな」
「そうだね。しかしまぁある意味ヒュロルフタームとドンパチやるより疲労がたまったかも」
「それは言えてるな」
「サリド・マイクロツェフとグラム・リオールはいるか?」
部屋でインスタントのコーヒーを飲んでいたサリドとグラムに突然リーフガットがやってきた。
「どうしたんです? まさかまたヒュロルフタームとなんかやれとか……?」
「もう俺はヒュロルフタームと曲芸大会しろって言われてもやるかもしんねぇな」
「違う違う。今回は『世界平和』に関わることよ。ヒュロルフタームは一切関係無し!」
そう言ってリーフガットは数枚のB5のレポート用紙をまとめただけの束を二人に渡した。
「……これは?」
「世界トライアスロンのプログラム」
リーフガットからそれを聞かされ、二人の目が点となった。
「……えーと、つまり、どういう……?」
「えーと簡単に言えば、あんたらもトライアスロンに出てもらうわ」
リーフガットはただ無感動にそう言った。
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