閉じる

FORSE

巫夏希

0-1

そのころ。

見るからに国の重要人物、所謂VIPが乗るような絢爛豪華な飛行機に一人の少女が乗り込んでいた。

その少女はただ何も言わず、何か怒りを感じているようにも見られたが、彼女自身いつもこの感情であるため変わりはない。

「アリア、気分はどう?」

彼女――アリアが誰もいないファーストクラスの真ん中の座席にこじんまりと座った直後、ちょうど彼女からみて目の前に備えられていた小型テレビに映像が流れ始めた。

それは真っ白な壁に白衣を着た茶髪の女性を撮しており、声はその人間から発せられたものだ、ということが見てとられた。

「あぁ……大丈夫ですよ。何も問題はない」

適当に返事をして彼女は目を瞑った。

「そう。ならいいわ。なんかあったらいってね」

テレビに映し出された女性は笑って言った。その直後にテレビの電源が自動的に切れ、彼女もまた深い眠りについた。





「フランシスカ=リガンテ=ヨシノ様ですね。こちらがパスポートと旅客券のチップとなります。大切に保管しておいてください」

カウンターにて軍用服を着た清楚な感じの女性がそう言ってカウンター越しに立っている少女に手のひらほどの大きさしかない透明なプラスチックのケースを渡す。

少女はなんだか腹の居心地が悪いようで終始なんだかぎこちない表情を見せていた。

少女はそれを受け取って、何も言わずに一礼し、立ち去った。

パスポートや飛行機旅客券などの所謂公共交通機関に乗るために必要なものも、今はデータ化されている。データの方が管理がしやすいし、仮に何かあった場合直ぐ様反応が出来るようにしてあるためだ。

少女は軽い鼻歌混じりでショッピングモールの大通りを進む。彼女は時々花屋や服屋、さらには本屋によって自分の欲しいものをチェックしているがそれもウィンドウショッピングまでに留めている。

何故ならば。

「いっけない……。あと3分で待ち合わせの時間じゃない?! あの護衛[バカ]なんで起こしてくんなかったのよ!!」

そう言って彼女は乱暴にキャリーバッグを引き摺って走り出した。

「FORSE」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「その他」の人気作品

コメント

コメントを書く