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FORSE

巫夏希

3-8

そしてそれを頭上から眺めるポイントにグレイペヤードがいた。それには到底サリドたちには気付くことはなかったが。

「……まぁ……あそこで来るとはある意味好都合であったよ」

グレイペヤードは真摯な面持ちで語る。

「しかしながら……サリド・マイクロツェフ……。あのお方のお気に入りというから観察対象に含めておいたが……、なんだあれは? あれじゃただの……」

グレイペヤードがその言葉を言い切る前に短い電子音が夜の街に響いた。

「はい、こちらグレイペヤード」

グレイペヤードは懐から携帯端末を取り出して耳に当てた。

『グレイペヤード、ですね? 任務の方へいかがですか?』

「……レイシャリオ枢機卿……ですか?」

『質問に答えなさい』

電話の主は語気を強めて質問を再び言った。

「ご心配為さらずとも、任務は無事完了いたしました」

グレイペヤードは平坦のないのっぺりとした感じで答えた。

『そうですか。それは何より。これからも頼みますよ。総ての平和を求める人へ』

「総ての平和を求める人へ……」

そう会話を交わし、グレイペヤードの携帯端末は通信を終了した。





そのころ、レイシャリオはオリンピアドームの空港そばにある廃倉庫にいた。

彼女はその場所には似つかわしい感じであった。しかし彼女は嫌そうな表情を一つも見せずにいるのはやはり人の上に立つ人間ということなのか。

「枢機卿、」

不意に声がかかり、レイシャリオがその方を見ると見覚えのある人間の姿があった。

「ナウラス……?」

「左様で御座います」

ナウラスはレイシャリオがナウラスの姿を確認したのを見てからお辞儀をした。

「何の用だ……? 作戦ならば差し支えなく行われているはずだ」

「えぇ、何も問題は発生しておりません。全てが順調です」

「……そう言うということは報告はそれだけか?」

レイシャリオが冷静に尋ねると、ナウラスは静かに頷いた。

「そうか。……で、それだけなら携帯端末を用いればいいだろう? どうして直接ここまで来た?」

「……私はそういうデジタルものが嫌いでして。やはりアナログで直接会って伝えた方が確実ですからね」

「なるほど……。しかし何の事もなしに来ては困るな。私とて神殿協会の重鎮。捕まってはならない、全世界に我々の真の目的……それが知られてしまうからな」

「ご心配なく、それなら……」

ナウラスはそう言って笑った。それと同時にドサドサと黒装束をした人間が倒れていった。

「私めが始末しておきました故、」

「……そうか。それなら別に……という訳でもないだろう? お前は自分の力に頼りすぎだ。少しは“ほかのもの”を信頼したらどうだ?」

「すいません。さすがに枢機卿のご判断とはいえ、これは私のポリシー。例え死してなおこれは変えることはなりませぬ」

「ふむ……。なぜ、そうなったのかは尋ねぬ信条ではあるが……、まぁ仕方ない。とりあえず、報告ご苦労だった」

そうレイシャリオが労うと何も言うことはないと言ったかのようにナウラスは闇に溶け込んでいった。




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