FORSE

巫夏希

3-9

日が明けた。次の競技までは半日を切った。

しかしながらフランシスカ、それにロズベルグは今や疲労困憊さらにロズベルグにとっては重体に近い症状だった。

そんな中サリドとグラムは手術室代わりになっているフランシスカのマンション、ベッドルームの前で祈るように座っていた。

「……大丈夫かな……。フランシスカにロゼ……」

サリドがまるで空気に溶け込ませたように呟いた。

「大丈夫……だろ。とりあえず俺らにはなにもできない……。こうやって祈ることしか……!!」

「解ってるよ!!」

サリドは今までの消えてしまいそうな声とは対称的に、絞り出したかのように叫んだ。

「……けど、けどさ。待っているだけじゃむず痒くなるじゃん……。ただ辛くなるじゃん……」

サリドは悲しんでいた。何も出来なむず痒さに。もう少し早く現場に辿り着けば彼女たちの傷も少なくて済んだだろう、という悲愴感。全ての気持ちが、彼の中で戦っていた。その中で、彼の本当の思いが孤軍奮闘を成し遂げようとしていた。

「……あぁ。解るさ。解るよ。けどな、俺たちには本当に何も出来ないんだ。祈るべき対象も居ないが、ここは祈ることしか出来ないんだ……!!」

グラムは気付くと、恐らく自分の気持ちとは逆に身体が働いているのだろうが、サリドの襟を持って殴りかかろうとしていた。

「……!!」

グラムはそれに気付くと、直ぐにサリドの襟から腕を放し、ソファに腰掛け、ただ項垂れていた。

手術室代わりのベッドルームの扉が開かれたのは、それから直ぐのことだった。

「……ラインスタイルさん。どうでしたか……?」

ちなみに手術を行っていたのは健康管理を担うラインスタイル。本業だからかてきぱきと進んでいた、らしい。

「成功ですよ。あんなキズなのに、出血が少なかった……。それもありますがね」

ラインスタイルは白衣を脱いで、笑って告げた。

「良かった……」

サリドはほっと胸を撫で下ろし、そして微笑んだ。それほど、心配していたのだ。

「すぐ回復しますよ。まぁ、あの薬を持っていって本当によかった……。あれは本国には流通してない貴重なものですけどね」

それは使っていいのか? とか思ったサリドとグラムであった。

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