FORSE

巫夏希

4-3

そして扉は滑らかに右にスライドして開いた。

中にはライズウェルトにラインスタイルが待機していた。

「……すげぇ。まさに基地そのものだ……」

ただサリドは息を漏らすようにそう言うことしか出来なかった。

「この島はもともとレイザリーが所有していた基地でね、こういう風に倉庫に似せてヒュロルフターム保管基地にしたり、地下に作ったりしているの。もともとこのセントラルターミナルがあった辺りはただぽつんと見晴塔があっただけで、それをベースに作り上げたのがセントラルターミナル。実際世界トライアスロンで使用されてる建物の八割は新規に建設したものだし、ホテルやマンションなんてなかったからね」

「……? 確かここは気候研究の為に置かれた島と聞いたような……?」

サリドはリーフガットの言葉に対して、そんな疑問を投げ掛けた。

しかし、答えたのはラインスタイルだった。

「その通り。確かにサリドくんの言う通り、ここは島全体が気候の研究をしている施設でした。その名残は今もオリンピアドームを包む『永久とわ蒼穹そうきゅう』にも残されています」

しかしながら、ラインスタイルは微笑みながらそう言って、話を続けた。

「そんなことはもう昔の話。今はただ、何も科学技術なんて残されてない、謂わば『捨てられた島』なんですよ」

ラインスタイルはそんなことを言って、テーブルに置かれていたホットコーヒーを一口飲んだ。

「……作戦会議を開始する」

リーフガットの一声でテーブルに視線が集まる。そして、その声と同時にライズウェルトがテーブルに地図を敷いた。地図はこの――セントラルターミナル周辺の――辺りの地図なので、何処と無く見覚えのある建物もちらほらと見受けられた。

「中心となるのはこの辺だと思うわ」

リーフガットが胸ポケットに差していたボールペンを使って円柱状の建物を指した。それは何処を見てもわかる、あの建物だった。

「……セントラルターミナル……!! ここを狙われたらこのオリンピアドームに来ている人間は袋の鼠になりますよ?! それに、パニックを誘うことだってあり得る!」

「それを狙っているんだよ、神殿協会は。パニックになった人々を装って敵の場所へ向かう……。なんとも、心理的な意味では非常に巧妙な作戦に為り得ると思うが?」

リーフガットは憤るサリドを抑えるように、そう言った。

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