FORSE
4-5
彼がヒュロルフタームに惹かれた理由をレイシャリオ自身は尋ねたことはなかったが、何処と無くレイシャリオにも覚えのあることがあるのは明らかだった。
たとえば、彼女の兄。
彼女の兄は神殿協会御用達の武器開発会社『オプグランドセキュリティ社』の社員だ。それなりの功績もあり、今や神殿協会の使用している武器の七割が彼女の兄が製作、または設計したものである。
マイクロツェフ家はもともと『どんなことでも完璧に』出来る家系として知られている。そして、神の悪戯か、何人かに子供が生まれるとその優れた才能が均しく分配されるのだという。これに関しては未だに現代科学でも解明されていないためか、神殿協会では『神の一族』として揶揄されることもあるのだ。
これに、彼は、サリドは、不信感を持ち、もしくは劣等感、いやそれ以外の他の感情を持ち、本家を飛び出し、レイザリーにある伯父の家へ駆け込んだのではないか、とレイシャリオは推測していた。
何故伯父の家を選んだか。これもひとつ考えられる理由が存在する。
サリドの伯父――母方の兄とのこと――は、かのヒュロルフターム・プロジェクトに職位はないものの、参加した人間であった。彼はレイシャリオの中で一番嫌いな人種であったらしいが、彼は気にせず誰にも均しく接したのだという。
 * * *
「時間です」
男の声を聞いて、レイシャリオは長い――夢のような、はたまた現実の映し鏡のような――時間から振り戻された。
「ナウラスか……?」
「左様で」
「……そうか」
「お疲れの御様子ですが?」
「そうか? 私は別に疲れてなんぞ居ないのだが」
レイシャリオはナウラスから飛び出た不思議な質問に、ただ何の感情をも生まず、答えた。
「……そうですか。ならば、よいのですが、」
「なんだ。何かあるならはっきりと言うがいい。私とお前の付き合いがそう短いものであったのか?」
レイシャリオに問い詰められ、ナウラスは言葉を失う。
しかし、決心して、彼は告げた。
「……あなたの心は今ややじろべえの状態です」
「なに?」
レイシャリオの回答も気にせず、続ける。
「何があったのかは知りませんが……、今のあなたの心は不安定だ。それも、簡単に崩れてしまうくらいに。そんなあなたが指揮を行い、正直この戦いに勝てるのか……。おっと、度が過ぎました」
「いいのだ。ナウラス。お前にはやはり解ってしまうのだな……」
「……やはり、弟君の問題ですか?」
「それもあるわね。あの子、あれでも精神は強くないから私と会ってどうなるやら」
 * * * 
そして、
戦いの幕は一発の銃声により開かれた。
「サリドとグラムは怪しいところを虱潰しに探して! リリーとフランシスカはそれぞれのヒュロルフタームに乗り込み待機! ロゼはここにいなさい! そして……私たちが色々と指示をするから通信機器は持っておくこと。……じゃあ」
「……行くわよ。科学が勝つか、魔法が勝つか!!」
リーフガットはサリド以下全員に向かって、そう言った。
たとえば、彼女の兄。
彼女の兄は神殿協会御用達の武器開発会社『オプグランドセキュリティ社』の社員だ。それなりの功績もあり、今や神殿協会の使用している武器の七割が彼女の兄が製作、または設計したものである。
マイクロツェフ家はもともと『どんなことでも完璧に』出来る家系として知られている。そして、神の悪戯か、何人かに子供が生まれるとその優れた才能が均しく分配されるのだという。これに関しては未だに現代科学でも解明されていないためか、神殿協会では『神の一族』として揶揄されることもあるのだ。
これに、彼は、サリドは、不信感を持ち、もしくは劣等感、いやそれ以外の他の感情を持ち、本家を飛び出し、レイザリーにある伯父の家へ駆け込んだのではないか、とレイシャリオは推測していた。
何故伯父の家を選んだか。これもひとつ考えられる理由が存在する。
サリドの伯父――母方の兄とのこと――は、かのヒュロルフターム・プロジェクトに職位はないものの、参加した人間であった。彼はレイシャリオの中で一番嫌いな人種であったらしいが、彼は気にせず誰にも均しく接したのだという。
 * * *
「時間です」
男の声を聞いて、レイシャリオは長い――夢のような、はたまた現実の映し鏡のような――時間から振り戻された。
「ナウラスか……?」
「左様で」
「……そうか」
「お疲れの御様子ですが?」
「そうか? 私は別に疲れてなんぞ居ないのだが」
レイシャリオはナウラスから飛び出た不思議な質問に、ただ何の感情をも生まず、答えた。
「……そうですか。ならば、よいのですが、」
「なんだ。何かあるならはっきりと言うがいい。私とお前の付き合いがそう短いものであったのか?」
レイシャリオに問い詰められ、ナウラスは言葉を失う。
しかし、決心して、彼は告げた。
「……あなたの心は今ややじろべえの状態です」
「なに?」
レイシャリオの回答も気にせず、続ける。
「何があったのかは知りませんが……、今のあなたの心は不安定だ。それも、簡単に崩れてしまうくらいに。そんなあなたが指揮を行い、正直この戦いに勝てるのか……。おっと、度が過ぎました」
「いいのだ。ナウラス。お前にはやはり解ってしまうのだな……」
「……やはり、弟君の問題ですか?」
「それもあるわね。あの子、あれでも精神は強くないから私と会ってどうなるやら」
 * * * 
そして、
戦いの幕は一発の銃声により開かれた。
「サリドとグラムは怪しいところを虱潰しに探して! リリーとフランシスカはそれぞれのヒュロルフタームに乗り込み待機! ロゼはここにいなさい! そして……私たちが色々と指示をするから通信機器は持っておくこと。……じゃあ」
「……行くわよ。科学が勝つか、魔法が勝つか!!」
リーフガットはサリド以下全員に向かって、そう言った。
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