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FORSE

巫夏希

さて、サリドの方はというと、ゲンコツロケットを被弾した後、ヒュロルフタームの管理を担当しているガンテの元へ向かった。ガンテの居る場所は言わずもがなヒュロルフタームが保管されている第一倉庫であった。

「……これが新しいヒュロルフタームか……」

サリドは倉庫に入り、開口一番そう呟いた。

何故なら倉庫の目の前には既にヒュロルフタームの躯体が聳え立っていたからだ。ヒュロルフタームの倉庫は、ヒュロルフターム自体が巨大であるためか、その半分以上が地下に収められている。そういう工夫をしないと、敵に見つけられてしまうからだ。

しかし、サリドは違和感を感じていた。何故なら、ヒュロルフタームは50mはあろうかという超巨大人造人型兵器。しかし、それはその半分もなかった――まるで職人が作ったミニチュアのように、それは今までのヒュロルフタームと同等な装備を誇っていたのだ。

「何をボケッとしとるんだ? 遅刻した割には随分と呑気なんだな?」

見とれていたサリドを呆れた顔で見るガンテの声がかかるまで、サリドの眼はそれに釘付けになっていた。

「……いや、すいません。あまりにもすごいもんでして」

「こりゃ第三世代だな。コンパクトなフォルムに高性能というのが特徴だ」

ガンテは口を開き、答えた。


「確か名前はルビンとか言ったかな。高さが23.7mだから、今までのヒュロルフタームの53mの半分以下になる。これは素晴らしいぞ。なんといったってコンパクトだからな。木の葉隠れして、相手が油断した隙に奇襲をかけることだって出来る。まさにヒュロルフタームの常識を覆した一台。まぁ、クーチェとかが持つ武器が持てなくなるのは難点だが、そんなのを考慮しても効果はプラスに働く。まさに最強のヒュロルフタームだと思うよ」

ガンテはルビンの方を見上げ、言った。

「……そんなに凄いですか。これは?」

「あぁ。だって考えてもみろ。どんなものでもコンパクトになるのは色々なメリットがあるだろう? 例えば材料が少なくて済む、例えば小回りがきく……とかな。そういう新しい、革新的なのが生み出されるとエンジニアとしてはワクワクが止まらないよ」

「……そういうものですか?」

「サリド、といったな。君は正直価値観がエンジニアに向いていない気がするんだが……、いや、言いすぎた。忘れてくれ」

ガンテは溜め息混じりにサリドに向かって呟き、そして歩いていった。サリドに『こっちにこい』と合図して。

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