閉じる

FORSE

巫夏希

「これからパルス位相のシンクロ実験を行う。だから、そろそろお前にもそういう系の機械を見せてやらねばならんのでな」

ガンテは歩きながら、話す。当たり前だがサリドはその表情を見ることが出来ない。だからこそ、不安になった。

サリドはいずれヒュロルフタームの設計士として働くつもりがあるから、この後こんな底辺(サリド自身がそう思っているかは解らないが)の事などやらなくて済むのだ。だが、この貴重な機会でもし失敗してしまえば軍事裁判は免れない。例え学校からやって来た軍人擬きでも。

ガンテは立ち止まり、考え事をしていたサリドはガンテの背中にぶつかりそうになった。

「……どうしたんですか? いったい、何が?」

「お前、ヒュロルフタームについてどれぐらい知ってる?」

ガンテは唐突にそんなことを尋ねた。

「どれぐらい……と言われましても。ヨシノ博士が作り上げたプロトタイプ・エヴァードとズリが始まりとして作られていて、しかしそこまで量産されていても、未だに設計図が解明されていないとしか……」

「結構解っているな。……だが、その中には的を得てないものもある」

ガンテはサリドの言った答えに頷き、そして言った。

「……少し話を遡れば、我々人類は遥か昔に生まれ、一度滅んだ。その時にとある人間が『方舟』を作り上げた。そしてそれに250のつがいの人間を載せ、安息の地へと旅立った……。これが『方舟伝説』の顛末。神殿協会はこれを元に布教活動をしているわけだ」

「だが、それは大きな間違いをも犯していることになる。神殿協会は今の人類を『方舟に選ばれし人間』などと言ってるが、実際はそうじゃない。その逆なのさ」

「……それは、どういうことなんですか?」

「まぁ聞けよ。極東の島国ジャパニアは知ってるか?」

ガンテの言葉に、サリドはゆっくりと頷く。

「実はあそこに昔方舟があった。実在していたんだよ。……だが、それは神殿協会が謳う超巨大船じゃなかった」

「?」

「その番で一つ、冷凍カプセル……これは、レイザリー王国の科学技術班が調べたから間違ってないはずだ。それが地下に埋まってた。そしてそこにはちゃんと人間が入ってた。……確か神殿協会が作り上げた暦を見ると今年がちょうど10000年なんだが、その冷凍カプセルはどうやらその時から眠っているらしいんだよ」

「10000年……ですか。ということは旧時代から生き延びた……ってことですよね?」

「FORSE」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「その他」の人気作品

コメント

コメントを書く