FORSE

巫夏希

10

「……そういやことになるな。だが、レイザリー王国はそれを隠してる。……何故か解るか?」

「神殿協会に存在意義を与えてしまうから……ですか?」

「その通り。神殿協会は今でさえ必要悪として撃退してよいと為されている。そんなやつらに『方舟が見つかりました』なんて言ってみろ? さらに増長して我儘をエスカレートさせて行くだろうな」

ガンテは何処か遠い場所を見つめ、言った。

「……話が過ぎてしまったな。本題に入るとしよう」

「お願いします。パルス位相のシンクロ実験でしたよね?」

「あぁ、多分そろそろパイロットスーツを着たノータがチェックにやって来るはずだ」

ガンテが言った、その時だった。

「へぇ~。これがヒュロルフタームなんだぁ~。もうちょっとゴツゴツしてるイメージあったけど、実物で見るとそんな変わりないなぁ……」

サリドは入口の方から何処かで聞いたことのあるような、甲高い声を聞いて、少し鳥肌が立った。

「……ま、さか……?」

「どうした? サリド。もしかして知り合いか?」

「いや……、あの、腐れ縁って奴でしてね……」

サリドは溜め息混じりに呟いた。






「ライラだ。よろしくな?」

彼女は開口一番、そう言ってサリドに握手を求めた。サリドもそれに従って握手をする。

(こう見ると結構作法もちゃんとしてるし。何処の方なのかな……?)

サリドはそんなことを思っていたが。

直ぐにその事は撤回せねばならなくなる。

握手をして、直ぐのことだ。

サリドは掌に違和感を感じ、見た。

「……、」

そこにあったのは、食べ終わったガム。べっとりと粘ついたそれはサリドの掌に頑固で離れない。

「おい、お前!」

サリドは激昂して叫んだ。

「……言っておくけど、この正式な訓練が終わったら私はあんたの上司になるのよ? それなのにお前呼ばわりはねぇ」

「名前を知らんからしょうがないだろ!」

「あらそうでした。……じゃあライラよ。ライラと呼びなさいな」

そう言ってライラは鼻息混じりにヒュロルフタームのコックピットへ歩いていった。

「なんなんだ。一体……。というかまじであいつが上司になるのかよぅ……」

サリドはあの言葉が相当響いたらしく、暫く落ち込んでいた。

「おい! ボケッとしてんじゃないよ! 始めるぞ!!」

ガンテに乱暴な口調で言われ、耳を引っ張られ半ば強引に連れていかれるまでは。

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