FORSE

巫夏希

18

「あ~あ、全くなんでこんなことなっちゃうのかなぁ? カフェテリアで優雅に食事してたのに、軍用携帯のVM通知が五月蝿いのなんの。お陰で店員さんに何度も謝らなくちゃいけなかったじゃない」

フランシスカはどうやらご機嫌ナナメのようだった。頬を膨らまし、仏頂面を保ったままリーフガットの話を聞いていた。

「……フランシスカ。気持ちは解るわ。けれどね、一応言っておくけど私達は軍人なの。国が危険になったときは誰よりも先に危険と向かい合わなくてはならない」

「そうだけど……。相手も空気読めって話だよね。いきなり『無血開城しろ』とか頭がおかしいわよ」

「そうね。……ってあれ? まだフランシスカには何も言ってないんだけど? まさか、またデータベースから情報を抜き出したわけじゃ……」

「さ、さぁ? 何のことかしら?」

フランシスカはその事実を突きつけてもなお、自分は何もしていない、ということのアピールを始めた。

「……ま、ここでどうこう言ってる場合じゃないわね。何せ敵は今もなおここに向かっている。早く迎え撃たねば、首都、王都陥落も危うい程の勢いでね」

リーフガットは真剣な面持ちで告げた。

「とりあえず、クーチェとポートコルが後方支援、ルビンを主に作戦を実行するわ」

リーフガットが告げた内容はそれ以上でもそれ以下でもなかった。ただただ単純なことだったのだ。

まず敵軍にルビンが向かい容赦なく叩き潰す。残った(この場合は逃げられた、の方が正しいだろう)人間はクーチェとポートコルの出番というわけだ。世界一単純かつ残虐な作戦でもあった。

「……なるほど。まぁ、簡単な作戦ですねぇ。一言で片付けられちゃうくらいの、ね?」

最初に反応したのはフランシスカだった。

「でも、そんな簡単に潰せるとは限らないわ。何せ敵は“魔法”を使うのだから。あなただって見たでしょう?」

リーフガットは淡々と事実を述べた。要はそういうことだった。

リリーたちは科学により生み出されたヒュロルフタームという可視の力を使って戦う。

一方のディガゼノン聖軍は全てが謎の不可視な力、魔法を使うのだ。見えないだけに、それが一番厄介なものだ。

「それじゃ……もう一人の……ルビンのノータは? 彼女もいないと話が始まらないんじゃ?」

リリーは何かを考えていたようだったが、おもむろにそう言った。


「あぁ。そのことなんだけどね。彼女はもう現地に向かってるわ」

リーフガットの言葉を聞いてサリドたちは全員わけが解らなかった。

「……なんでもう行ってるんですか?」

「それがね……。演習をするために西の方に行ってたらしいんだけど、それが運よくディガゼノン聖軍のルートと合致しちゃって、それで向かわせてる。あなたたちは合流する感じかな」

「……なるほど」

最初に反応したのは、フランシスカだった。

「じゃあ、さっさと行った方がいいだろうな。新人に全てを任せてはられん」

フランシスカはそう言って一礼、彼女は部屋から出ていった。

「……あ、じゃあ、私も……」

リリーも一歩遅れて、部屋を後にした。

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