FORSE

巫夏希

19

サリドとグラムは軍事用トラックの荷台に乗っていた。ヒュロルフタームが三台も始動するからか、いつもより整備班の分量が多かった。

「ちくしょう……。いつもより狭苦しく感じるぜ……」とグラム。

「人が多いから仕方ないね。……それに使おうと思えば小型トラックもいけたんだろうけど、この大雨じゃね……」と相変わらず携帯端末を操作するサリド。

確かにいつもより人間が多いように感じられた。それほどこの作戦に力を入れている、ということか。

しかし何故かトラックの大きさと台数は変わらなかった。いくらなんでもこれはひどかった。

「……ったくいくらヒュロルフターム量産の予算の皺寄せだからってこれは酷いんじゃねぇか?! こんなじめじめした所に男だらけで何十人もいちゃあ、むさ苦しくてたまんない」

「それを喜ぶ人間もいるけどね?」

サリドは苦々しい顔で呟いた。

「……俺の妹のことをいってるんだな?」

グラムは眉を痙攣させていた。それほど、イライラしていたのだろう。

「さぁ? どうだろうね?」

サリドはただせせら笑うだけだった。





ディガゼノン聖軍はそんなことを考えてすらいないだろう。否、彼らは考えてはならないことを強いられていた。

ディガゼノン聖軍は訓戒として様々な訓示をしている。宗教に根深い軍隊だからこそのことである。

その中に『汝、他のもののことを考えるべからず』と訓示されている。これこそが強い軍隊を作り上げた所以ではないかと考える専門家も少なくはない。

なぜならこれは究極の自分主義だ。他人がどんなことになろうとも助けることは一切しない、というもの。母体である神殿協会と比べると矛盾を感じるものであった。


さて、今高台から一台のヒュロルフタームがそれを臨んでいた。

「……結構気付かれないものね……」

『ライラ、大丈夫か?』

「ガンテさん。えぇ、大丈夫よ」

コックピットで一人の少女が、操縦かんを握って待機していた。

『ライラ。初めてのミッションがこんなもので申し訳ない。これは一番難しく、厄介な役目だ。失敗したら国が滅びることも充分有り得る。……頼むぞ』

そう言ってガンテは通信を切った。

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