FORSE
21
それは体のパーツのところどころが腐食していて寧ろ使い物にはならなかった。何故ならそれが鎮座してある空間は、腐乱臭が充満していたのだから。
十字架のようなものに釘で括りつけられたそれは神々しくそこに鎮座していた。腐乱していることをも忘れてしまうほどに。
「……おぉ、エヴァードよ。やはりまだ完全には成し遂げられていないのか!」
男は大袈裟に手を仰ぎ、叫んだ。その光景をライジャックはつまらなそうに眺めていた。
「……そりゃあそうだろう。まだ計画が完全体ではない。エヴァードがまだ充分に活動出来ない理由も解る気がするよ」
ライジャックは服のポケットに仕舞っていた時計を見て、言った。
「だからこそ早く進まねばなりません! この地に刻印を……!!」
「まぁ待て。慌てる気持ちも解るが、どうするというんだ? もう既にヒュロルフターム三台が始動して聖軍に立ち向かうんだぞ? いくら魔術を行使したにしろ、一台倒せるのが関の山じゃ……」
「大丈夫ですよ。『予言の偽典』を持たせてあります故に」
「予言の偽典……!! なるほど。最後まで組織はヒュロルフタームを計画に組み込みたい考えということだな?」
ライジャックの驚きに男はただ微笑んで、
「委員会はヒュロルフタームによる二次空白化の実行を最良のシナリオとしています。その為にもアダムとイヴ……人類のはじまりの番を決めなくてはなりません」
「当初のシナリオではメタモルフォーズを用いるものだったんじゃなかったのか?」
「そのようだったんですが……やはり人間を含めた方がいい、エンターテイメント性に欠ける、と」
「エンターテイメント性もくそもないだろう。結局必ずは皆同じ運命を辿っていく……。否、辿らざるを得ないんだからな」
「……ここで少しお目にかかってもらいたいものがあってですね」
男は唐突に言った。
「……なんだ?」
ライジャックが応答すると同時に男は、ライジャックの喉に剣先を突き刺そうとしていた。
「……何の真似だ?」
ライジャックが咄嗟に構えようとしたが、その前に男は剣をライジャックの喉から遠ざけた。
「見ていただきたいのはこれですよ」
そう言って男はあるものを取り出す。
それは……小さなメモリーカードだった。
「これは、とある紙を複製しデータ化したものです。なんせ紙が傷んで使い物にはなりませんでしたから」
男は恭しく笑って言った。
そう男が言っているのも聞かずに、彼女はメモリーカードを彼女自身が持つ端末に通した。
少し読み込みが遅かったものの、ちゃんと無事にデータの転送が完了した。
そして画面に映し出された文字を見て、彼女は驚愕した。
「『人類補完及び分散プログラム』……。これはいったい」
「それは旧時代に考案されたものです。よくお読みいただければ」
「……この計画は旧時代からあったってことか……。しかし……一次空白化で大半の人間が消えてしまったというのに、どうやって指示を仰いだというんだ?」
「神殿協会にいる全見の予言者……、ご存知ですよね?」
「よもや……彼女が?!」
「えぇ。少なくとも旧時代の2015年に生存が確認されています」
「……ということは、彼女がシナリオを作り上げた、とでも言うのか……」
「本人の口からそう言うのですから。……まぁ一万年前のことなんて誰も信用はしませんが……。しかし彼女の予言の力は本当でした。彼女はあっという間に世界を手玉にとることが出来たんです」
男はそう言って、振り返る。
「おっと、国王……。そろそろ公務の時間です。急がねばなりませんな」
「……そうだな。アルキメデス」
ライジャックはそう言って足早に空間から去っていった。
十字架のようなものに釘で括りつけられたそれは神々しくそこに鎮座していた。腐乱していることをも忘れてしまうほどに。
「……おぉ、エヴァードよ。やはりまだ完全には成し遂げられていないのか!」
男は大袈裟に手を仰ぎ、叫んだ。その光景をライジャックはつまらなそうに眺めていた。
「……そりゃあそうだろう。まだ計画が完全体ではない。エヴァードがまだ充分に活動出来ない理由も解る気がするよ」
ライジャックは服のポケットに仕舞っていた時計を見て、言った。
「だからこそ早く進まねばなりません! この地に刻印を……!!」
「まぁ待て。慌てる気持ちも解るが、どうするというんだ? もう既にヒュロルフターム三台が始動して聖軍に立ち向かうんだぞ? いくら魔術を行使したにしろ、一台倒せるのが関の山じゃ……」
「大丈夫ですよ。『予言の偽典』を持たせてあります故に」
「予言の偽典……!! なるほど。最後まで組織はヒュロルフタームを計画に組み込みたい考えということだな?」
ライジャックの驚きに男はただ微笑んで、
「委員会はヒュロルフタームによる二次空白化の実行を最良のシナリオとしています。その為にもアダムとイヴ……人類のはじまりの番を決めなくてはなりません」
「当初のシナリオではメタモルフォーズを用いるものだったんじゃなかったのか?」
「そのようだったんですが……やはり人間を含めた方がいい、エンターテイメント性に欠ける、と」
「エンターテイメント性もくそもないだろう。結局必ずは皆同じ運命を辿っていく……。否、辿らざるを得ないんだからな」
「……ここで少しお目にかかってもらいたいものがあってですね」
男は唐突に言った。
「……なんだ?」
ライジャックが応答すると同時に男は、ライジャックの喉に剣先を突き刺そうとしていた。
「……何の真似だ?」
ライジャックが咄嗟に構えようとしたが、その前に男は剣をライジャックの喉から遠ざけた。
「見ていただきたいのはこれですよ」
そう言って男はあるものを取り出す。
それは……小さなメモリーカードだった。
「これは、とある紙を複製しデータ化したものです。なんせ紙が傷んで使い物にはなりませんでしたから」
男は恭しく笑って言った。
そう男が言っているのも聞かずに、彼女はメモリーカードを彼女自身が持つ端末に通した。
少し読み込みが遅かったものの、ちゃんと無事にデータの転送が完了した。
そして画面に映し出された文字を見て、彼女は驚愕した。
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