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FORSE

巫夏希

35

それを、リーフガットは目の前で目撃していた。

助けようとした、少女は無惨にもただの肉塊へと姿を変えた。

「……、」

リーフガットは何も出来なかった。するだけの力があったはずなのに、彼女は間に合うことが出来なかった。

それをせせら笑うかのように、少女は獣の掌に乗り、ゆっくりと立ち去っていった。

彼女はただそれを眺めているだけだった。





リーフガットはその後、生き残った兵士たちを探した。無論、救護信号を本国に報せて、から。

「……五十人しか生き残らなかったんですか……!!」

「はい。あの時はヴァリヤー氏もいたのですが、運よく離れたところにキャンプを構えていた故に、」

リーフガットはあの後、あの事故で生き残った人間を尋ねて回っていた。

そして皆が共通して言うこと。

『あれは吸血鬼だ。伝記にある吸血鬼が蘇ったのだ』と。

実際、見たことがない(それは即ち経験がないことを指す)人間にとって、突然『吸血鬼を見た』等と言われてもはいそうですか、と信じる人は居ないだろう。



しかし、彼女は実際にそれを見たのだ。物理法則を完全に無視した獣を、彼女は見たのだ。

目で見たのだから、それは信用に足る情報である。

にもかかわらず、誰も彼女の話を聞こうとはしなかった。

彼女は徐々に『これは実はレイザリー(じぶんのくに)も一枚噛んでいる』のではないか、と思い始めるようになった。

ただ、彼女の話は今もなお推測の域を越えないものばかりだった。証拠がないからである。

証拠が無いものは、そう簡単に信じられるものではなかった。

だが、彼女の可能性を再び現実へと引き摺り戻したものがある。

ヒュロルフターム、そしてメタモルフォーズである。

ヒュロルフタームはレイザリーが開発した人型兵器だ。それに対してメタモルフォーズは神殿協会が独自に編み出した化学兵器という建前だ。

なぜ建前と述べるのかといえば、その情報は九割九分あってるかと言われれば実はそうではないからだ。

まず、ヒュロルフタームを“人間がゼロから開発する技術がない”からだ。つまり、ヒュロルフタームにはオリジナルが存在し、今の量産されたヒュロルフターム、クーチェやユロー、があるのではないか、とリーフガットは推測を始めた。


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