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FORSE

巫夏希

茶屋の奥は普通の民家となっていた。これは昔から使われている古民家をリサイクルしたものだ。だから誰も不思議には思わない。

“何処に何かが埋まっている”ことぐらい、解ることもなかった。

この国は所謂コンクリートといったものをあまり好まない傾向にあり、度々戦争が発生するこの時代であってもなお、コンクリートが使われている建物は国が重要視する建物(例えば、国会議事堂など)にしか使われていない。あとは昔から使われている茅葺きなどを用いている。

この茶屋も例外ではない。茅葺き屋根というのは年を重ねるごとに味を染めていく珍しいものだ。コンクリートで作られた無機質なそれとは明らかに違う。趣、とはそういうものである。

ストライガーは女将に連れられその民家の奥へと足を踏み入れた。そこは小さな井戸だった。普通の人間ならば、そこに違和感などは感じないはずだ。

だが、ストライガーは普通の人間ではなかった。代々続く忍――ニンジャの家系に育ち、ニンジャとしての極意を叩き込まれてきたのだから。

女将はそう何も考えず、井戸を構成している煉瓦を一つ外す。そこから出てきたのは、小さなスイッチだった。女将はそれに感動もせず躊躇いもせず、押した。

ガコン、と小さな落下音がして井戸が割れた。否、割れたのは間違っていないが、何かが競り上がってきた。

それは、螺旋状の階段だった。だが細いところを無理矢理に繋げたからか、ところどころ補修が為されていた。だがそれも完璧な訳ではなかった。この国の科学力を見れば、それは解ることだろう。

女将は階段が競り上がったのを見て、迷うことなくそこへ足を踏み入れた。ストライガーも一歩遅れて、それを追い駆けた。

暫く階段を降りていくと、小さい扉へとぶち当たる。ここに行くにはその螺旋状の階段を降りなければならず、他に方法はない。

昔、この辺りに油田があったらしい。普通の油田に比べれば、油の量も少なく、直ぐに枯渇していったのだが。

結果として残されたのはこのがらんどうとなった空洞だけだ。油田の成れの果て、といえばまだ言葉の力は和らぐだろうか。

女将が扉のノブを握り、回す。そして手前に扉を、開く。

そこに広がっていたのは小さな会議室だった。そして、そこには13の椅子が用意されていた。

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