FORSE
18
そのころ、サリド。
「ちくしょう!! 食らってる素振りすら見せねえ!! これじゃあうちらは蚊かよ?!」
「いや……迷惑がってないから、それ以下じゃないか? とりあえず無視されるのは腹立たしいね」
「そうだよな……。とりあえずこのままだとあいつがヒュロルフタームの方へ向かっちまう。もう時間的についただろうが、いくらあいつらでも寝込みを襲われたら元も子もねーぞ」
「寝込みではないけどね。実際には油断しているところだ。……まぁ、どっちにしろこっちが不利ってことには変わりないけど」
サリドの言葉にグラムはなんどもサリドの顔を見て、
「お前……? よく冷静でいられるよな? こんなときに。普通なら一気に走って逃げる余裕すらないんじゃないか?」
「そうか? 別に俺はそうとは思わないけどなぁ。とりあえず……っと!!」
サリドの動揺にグラムは気になり、振り向くとサリドは倒れていた。恐らく下にあった瓦礫に引っかかったのだろう。
「あの……馬鹿っ!!」
グラムは焦って、急いでサリドの方へUターンしようとした。
その時だった。
『何やってるんだ?』
まるで拡声器かなにかで無理矢理引き延ばしたような声が、空に響いた。
そしてサリドに殴りかかろうとしていた獣はいつになっても殴りには来なかった。
「……なんだ?」
サリドは恐る恐る目を開ける。
そして、そこにいたのは、
オレンジのカラーリングをしたヒュロルフタームに、それと随伴して立つ灰色のヒュロルフタームだった。
「ロゼ!」
『いいから急いでっ!!』
ロゼの言葉に従い、サリドは態勢を立て直し、一気に走った。そして、それを観たグラムもサリドと並ぶようにペースを調整して走る。
「……にしても、なんでロゼが? 彼女はシャルーニュの人間だろ……?」
「たぶん神殿協会がこっちに侵攻してきただのでこっちに流れてきたんじゃねぇのか? あまり詳しくは解らねぇが味方であることは間違いないだろ?」
グラムの言ったことにサリドは首を傾げながらも頷いた。
リリーとフランシスカがヒュロルフタームに乗り込んでやってきたのも、その時だった。
――結果として、四台のヒュロルフタームが邂逅することになったのだった。
『ちょっとロゼ、どうしてあんたがここに……!!』
フランシスカがヒュロルフターム内の拡声器を利用して、大声を上げた。拡声器を利用して、かつ大声なので超音波にも聞こえかねないそれが空に響き渡った。
『そんなことよりあんたはどうしてサリドたちを守らんの?! 一般人はこれにやられてしまうだけだぞ!!』
ロゼも同じように語気を強めて、叫んだ。超音波と超音波のぶつかり合いの為か、衝撃が地面へと走る。
「わわわ……。二人の放つ超音波がぶつかり合って、こいつはやばいな」
「冷静過ぎるだろお前。もうちょいなんか慌てろよ」
『……とりあえず、ここは私たち二台で何とかする。レイザリーは被害者の救出にあたって!』
『解ったわ』答えたのはフランシスカではなく、リリーだった。
『な……。リリー、あんた勝手に……!!』
『行きましょ。フランシスカ。まだ助けを求めてる人は沢山いるわ』
そう言って、クーチェはゆっくりとこの地を後にした。それを見て、フランシスカ、最後にサリドとグラムも。
「……大丈夫か? ウィンド」
通信を終え、リリーは内線通話に切り替える。話の相手は今回のパートナー、ウィンドだった。
「えぇ。にしてもこの仮設6号機、ちゃちくありません? なんだかロズベルグさんのとも性能が劣るような……」
「それは仮設機だからな。仕方ないだろう。初めて我が国で作り上げた量産型ヒュロルフタームだしな。レイザリーが5号機を失った今を好機だと思っているんだろうが……、最近のシャルーニュの動向はどうも好きになれない」
「……どういうことですか?」
「考えてもみろ。今まで温厚を突き通し、“外交でのポーカーフェイスは天下一品”とも言わしめた我が国家がだぞ、他の国の技術を登用して大量に兵器を作り、レイザリーを盛り返すだけが目的、とは到底思えない。何かが裏にある。きっとそうだ」
「……つまり、何が言いたくて?」
「シャルーニュの裏には何か別の巨大な力が蠢いている。恐らく、神殿協会もそれに操られているのだろう。ここ最近の事件などは全てそれが原因だ。その組織が昔から何かを計画していた。ヒュロルフタームもメタモルフォーズもノータも全てがコマだ。双六のコマのようなものだよ。そしてその計画は……恐らく世界を揺るがすものだ」
「……、」
ウィンドはもう何も語ることはなかった。
何処かに消えた獣の足跡をただ眺めるだけだった。
「ちくしょう!! 食らってる素振りすら見せねえ!! これじゃあうちらは蚊かよ?!」
「いや……迷惑がってないから、それ以下じゃないか? とりあえず無視されるのは腹立たしいね」
「そうだよな……。とりあえずこのままだとあいつがヒュロルフタームの方へ向かっちまう。もう時間的についただろうが、いくらあいつらでも寝込みを襲われたら元も子もねーぞ」
「寝込みではないけどね。実際には油断しているところだ。……まぁ、どっちにしろこっちが不利ってことには変わりないけど」
サリドの言葉にグラムはなんどもサリドの顔を見て、
「お前……? よく冷静でいられるよな? こんなときに。普通なら一気に走って逃げる余裕すらないんじゃないか?」
「そうか? 別に俺はそうとは思わないけどなぁ。とりあえず……っと!!」
サリドの動揺にグラムは気になり、振り向くとサリドは倒れていた。恐らく下にあった瓦礫に引っかかったのだろう。
「あの……馬鹿っ!!」
グラムは焦って、急いでサリドの方へUターンしようとした。
その時だった。
『何やってるんだ?』
まるで拡声器かなにかで無理矢理引き延ばしたような声が、空に響いた。
そしてサリドに殴りかかろうとしていた獣はいつになっても殴りには来なかった。
「……なんだ?」
サリドは恐る恐る目を開ける。
そして、そこにいたのは、
オレンジのカラーリングをしたヒュロルフタームに、それと随伴して立つ灰色のヒュロルフタームだった。
「ロゼ!」
『いいから急いでっ!!』
ロゼの言葉に従い、サリドは態勢を立て直し、一気に走った。そして、それを観たグラムもサリドと並ぶようにペースを調整して走る。
「……にしても、なんでロゼが? 彼女はシャルーニュの人間だろ……?」
「たぶん神殿協会がこっちに侵攻してきただのでこっちに流れてきたんじゃねぇのか? あまり詳しくは解らねぇが味方であることは間違いないだろ?」
グラムの言ったことにサリドは首を傾げながらも頷いた。
リリーとフランシスカがヒュロルフタームに乗り込んでやってきたのも、その時だった。
――結果として、四台のヒュロルフタームが邂逅することになったのだった。
『ちょっとロゼ、どうしてあんたがここに……!!』
フランシスカがヒュロルフターム内の拡声器を利用して、大声を上げた。拡声器を利用して、かつ大声なので超音波にも聞こえかねないそれが空に響き渡った。
『そんなことよりあんたはどうしてサリドたちを守らんの?! 一般人はこれにやられてしまうだけだぞ!!』
ロゼも同じように語気を強めて、叫んだ。超音波と超音波のぶつかり合いの為か、衝撃が地面へと走る。
「わわわ……。二人の放つ超音波がぶつかり合って、こいつはやばいな」
「冷静過ぎるだろお前。もうちょいなんか慌てろよ」
『……とりあえず、ここは私たち二台で何とかする。レイザリーは被害者の救出にあたって!』
『解ったわ』答えたのはフランシスカではなく、リリーだった。
『な……。リリー、あんた勝手に……!!』
『行きましょ。フランシスカ。まだ助けを求めてる人は沢山いるわ』
そう言って、クーチェはゆっくりとこの地を後にした。それを見て、フランシスカ、最後にサリドとグラムも。
「……大丈夫か? ウィンド」
通信を終え、リリーは内線通話に切り替える。話の相手は今回のパートナー、ウィンドだった。
「えぇ。にしてもこの仮設6号機、ちゃちくありません? なんだかロズベルグさんのとも性能が劣るような……」
「それは仮設機だからな。仕方ないだろう。初めて我が国で作り上げた量産型ヒュロルフタームだしな。レイザリーが5号機を失った今を好機だと思っているんだろうが……、最近のシャルーニュの動向はどうも好きになれない」
「……どういうことですか?」
「考えてもみろ。今まで温厚を突き通し、“外交でのポーカーフェイスは天下一品”とも言わしめた我が国家がだぞ、他の国の技術を登用して大量に兵器を作り、レイザリーを盛り返すだけが目的、とは到底思えない。何かが裏にある。きっとそうだ」
「……つまり、何が言いたくて?」
「シャルーニュの裏には何か別の巨大な力が蠢いている。恐らく、神殿協会もそれに操られているのだろう。ここ最近の事件などは全てそれが原因だ。その組織が昔から何かを計画していた。ヒュロルフタームもメタモルフォーズもノータも全てがコマだ。双六のコマのようなものだよ。そしてその計画は……恐らく世界を揺るがすものだ」
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