現世(うつしよ)と幻(うつつ)の世界で……
閑話休題、基本、紫野は責任感が強い方です。
『一体、どないなっとんかいな……』
言いながら、一旦実家から近い小さいながらも独り暮らしの自宅に戻り、パスポートとカードを手にイングランドに渡る。
実は双子だが、標野とある程度同じ行動をしているようで、紫野は実家の跡取りとしての自覚が強く、自分が兄であることを自覚しており、今は一人だが、そろそろ実家に戻ることも考えている。
伝統をそのまま受け継ぐ……そう言うことは、ご先祖さんにも良いことだが、それだけでなく、もっと家のために、将来のためにと思っている。
標野のことは、一応、実家を一旦出た20才のときに、
『シィは、好きなことおし。あては、シィほど度胸ないさかいに』
と伝えている。
『それにしても……たいぎょうなことや……歴史と伝統……あてが受け継ぐ言うもんは、修業はつろうてもおきゃくはんに喜んで貰える。それがうれしいて、思とるさかいに……』
父の指導は厳しいと言うよりも、見ておけである。
で、それを繰り返して、覚えるのである。
しかしそれを自分の手で同じように作り上げるのは、不器用な方の紫野は実は何度も泣いたほど辛かった。
特に、標野は器用で、さほど苦もなくそれなりに仕上がるため、余計に悔しかった。
そのために必死に、裏で努力を重ねたのである。
しかも、8才下の醍醐などは、もっと素晴らしく、本人は覚えていないらしいが、幼稚園の時のねんどあそびで、お菓子の菊を作った。
菊は、はさみ菊と言い、大雑把にいうと楕円に作った周囲を、専用のはさみで切っていく、それは繊細な作業と技術が必要である。
父の嵐山の作る様子を熱心に見ていた醍醐が、
『おとうはんの菊』
と言って差し出したのを、羨ましく思ったものである。
しかし、父は、
『羨まし思うなら、それ以上になると思うんや。できひんことはない。あてのこや』
と一度だけ悔しくて泣いていたときに頭を撫でてくれた。
その手が言葉が、励みで、努力を重ねていったのである。
『イングランドか……まぁ、地図はあるさかい、いこ言うて、いけせんがな。どないひょ』
キョロキョロしていると、
『さきさん‼』
『ひなやないか』
『よく、来ましたね。店は……帰らないといけないでしょう?』
『そやさかいに……あぁ、めんど。それできた』
紫野は、実は3人のなかで、一番しゃべるのが嫌いである。
口が達者な双子の弟がいるのである。
しゃべる必要はない。
『じゃぁ、こっちです』
と、ごく普通の車に乗り、長時間の車のなかで、日向から話を聞く。
『……はぁ?自分が遊びたい言うて、遊びで生まれた子供を、妖精に売った?あほか‼いや、くずやなその男』
吐き捨てる。
それでなくとも、祐也や風遊は苦労し、そして、風遊は醍醐の嫁になる。
年上だが、辛い目に遭っていると言うのに、どうにも危機感がないと言うか、こんなのでよく今までと思ったものである。
『で、戻ってくるんです。今は10人ほど、そして、4月の末にも……』
『……アカンな。その男、生きとる資格ないわ』
『で、心を癒して貰おうと思っているのですが、あのMEGの代わりに、チェンジリングしていた、本当のマーガレットさんが、日本にいきたいって言うんです』
『はぁ⁉』
『MEGのことを話して、説得しているのですが、こっちは辛い。日本の桜を見たいって言うんです』
話していると、ウェインの領地の邸宅に入る。
『わぁぁ‼紫野お兄さん‼』
ピョコピョコ跳び跳ねるウサギ……ではなく、
『あきちゃんやんか。はぁ、ええこやなぁ』
『……うえぇぇ。お腹いたい~』
『だからおとなしくしとけって……』
『ねえねえ。ゆうにいちゃん。誰?』
ジャック・ラッセル・・テリアまでおり、祐也の回りは、ピョコピョコだらけである。
『すみません。紫野さん。お久しぶりです。妹の紅です。で、このジャック・ラッセル・テリアはアンジュと言います。紅。醍醐先輩の8才上のお兄さんの紫野さん』
『わー‼きれいな名前。紫野って、あの和歌の……。あ、ごめんなさい。はじめまして。安部紅です。よろしくお願いいたします』
『紅って、いうんも、きれいな名前や。ようにおとる。堪忍な。あては、どうも、しゃべるんは苦手やさかいに。松尾紫野いうんよ。よろしゅうに』
微笑む。
『で……』
『彼女です』
日向に示された女性。
同じような髪の色をしているが、一人は淡いブルー、もう一人はアイスブルー……。
そして、顔立ちは整っているが表情が違う。
コロコロと表情が変わる淡いブルーの女性……後で、ヴィヴィアン・マーキュリーと紹介されるが、しかし、もう一人はひどく緊張と恐れ、怯え……そして虚無……に襲われていた。
言いながら、一旦実家から近い小さいながらも独り暮らしの自宅に戻り、パスポートとカードを手にイングランドに渡る。
実は双子だが、標野とある程度同じ行動をしているようで、紫野は実家の跡取りとしての自覚が強く、自分が兄であることを自覚しており、今は一人だが、そろそろ実家に戻ることも考えている。
伝統をそのまま受け継ぐ……そう言うことは、ご先祖さんにも良いことだが、それだけでなく、もっと家のために、将来のためにと思っている。
標野のことは、一応、実家を一旦出た20才のときに、
『シィは、好きなことおし。あては、シィほど度胸ないさかいに』
と伝えている。
『それにしても……たいぎょうなことや……歴史と伝統……あてが受け継ぐ言うもんは、修業はつろうてもおきゃくはんに喜んで貰える。それがうれしいて、思とるさかいに……』
父の指導は厳しいと言うよりも、見ておけである。
で、それを繰り返して、覚えるのである。
しかしそれを自分の手で同じように作り上げるのは、不器用な方の紫野は実は何度も泣いたほど辛かった。
特に、標野は器用で、さほど苦もなくそれなりに仕上がるため、余計に悔しかった。
そのために必死に、裏で努力を重ねたのである。
しかも、8才下の醍醐などは、もっと素晴らしく、本人は覚えていないらしいが、幼稚園の時のねんどあそびで、お菓子の菊を作った。
菊は、はさみ菊と言い、大雑把にいうと楕円に作った周囲を、専用のはさみで切っていく、それは繊細な作業と技術が必要である。
父の嵐山の作る様子を熱心に見ていた醍醐が、
『おとうはんの菊』
と言って差し出したのを、羨ましく思ったものである。
しかし、父は、
『羨まし思うなら、それ以上になると思うんや。できひんことはない。あてのこや』
と一度だけ悔しくて泣いていたときに頭を撫でてくれた。
その手が言葉が、励みで、努力を重ねていったのである。
『イングランドか……まぁ、地図はあるさかい、いこ言うて、いけせんがな。どないひょ』
キョロキョロしていると、
『さきさん‼』
『ひなやないか』
『よく、来ましたね。店は……帰らないといけないでしょう?』
『そやさかいに……あぁ、めんど。それできた』
紫野は、実は3人のなかで、一番しゃべるのが嫌いである。
口が達者な双子の弟がいるのである。
しゃべる必要はない。
『じゃぁ、こっちです』
と、ごく普通の車に乗り、長時間の車のなかで、日向から話を聞く。
『……はぁ?自分が遊びたい言うて、遊びで生まれた子供を、妖精に売った?あほか‼いや、くずやなその男』
吐き捨てる。
それでなくとも、祐也や風遊は苦労し、そして、風遊は醍醐の嫁になる。
年上だが、辛い目に遭っていると言うのに、どうにも危機感がないと言うか、こんなのでよく今までと思ったものである。
『で、戻ってくるんです。今は10人ほど、そして、4月の末にも……』
『……アカンな。その男、生きとる資格ないわ』
『で、心を癒して貰おうと思っているのですが、あのMEGの代わりに、チェンジリングしていた、本当のマーガレットさんが、日本にいきたいって言うんです』
『はぁ⁉』
『MEGのことを話して、説得しているのですが、こっちは辛い。日本の桜を見たいって言うんです』
話していると、ウェインの領地の邸宅に入る。
『わぁぁ‼紫野お兄さん‼』
ピョコピョコ跳び跳ねるウサギ……ではなく、
『あきちゃんやんか。はぁ、ええこやなぁ』
『……うえぇぇ。お腹いたい~』
『だからおとなしくしとけって……』
『ねえねえ。ゆうにいちゃん。誰?』
ジャック・ラッセル・・テリアまでおり、祐也の回りは、ピョコピョコだらけである。
『すみません。紫野さん。お久しぶりです。妹の紅です。で、このジャック・ラッセル・テリアはアンジュと言います。紅。醍醐先輩の8才上のお兄さんの紫野さん』
『わー‼きれいな名前。紫野って、あの和歌の……。あ、ごめんなさい。はじめまして。安部紅です。よろしくお願いいたします』
『紅って、いうんも、きれいな名前や。ようにおとる。堪忍な。あては、どうも、しゃべるんは苦手やさかいに。松尾紫野いうんよ。よろしゅうに』
微笑む。
『で……』
『彼女です』
日向に示された女性。
同じような髪の色をしているが、一人は淡いブルー、もう一人はアイスブルー……。
そして、顔立ちは整っているが表情が違う。
コロコロと表情が変わる淡いブルーの女性……後で、ヴィヴィアン・マーキュリーと紹介されるが、しかし、もう一人はひどく緊張と恐れ、怯え……そして虚無……に襲われていた。
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