現世(うつしよ)と幻(うつつ)の世界で……

ノベルバユーザー173744

第84話、とても幼い恋と言う苗が愛と言う花を咲かせました。

先にトラックに逃げ込んだ祐也ゆうやは、荷台に穐斗あきとを乗せ、自分も乗り込む。
そこには先程の毛布があり、穐斗を包もうとするが、

「……だっこ」
「後で。ほら、毛布」

問答無用で包む。
と言うよりも、祐也はかなり動揺していた。
一応、妹のくれないと、ひめが、初潮を迎えたと言うときは、母のせとかが、

「お赤飯よ~‼」

と声をあげ、

「ぎゃぁぁ‼言わないで‼恥ずかしい‼」
「お母さん‼何でお兄ちゃんたちに言うのよ⁉」

と、それぞれ叫んでいたのだが、どう考えても……、

「女の子になった?」
「わかんない……でも、お腹痛い……」

男性には解らないだろうが、女性の体は繊細であり、痛みにも違いがある。
軽くすむ人もいれば、軽いときと重いときが交互に来る人、重く歩くのも辛いと言う人や倒れる人もいる。

「う~ん。俺にはそれが解らないから……紅が戻ったら聞いてみよう」
「あ‼小さいブロンズ姫‼いなくなったんだよ‼ほら、祐也が‼」
「あ、あの小さいのは、ウェインの領地の屋敷にいるよ。小さい古いマグカップに」
「そ、そうなんだ‼良かった……」

穐斗は安心する。
その為、祐也が座り込んだ場所の横に座る。

「えへへ……良かった。祐也に会えて……?どうしたの?」

コテン、首をかしげて上目遣いをする。

「い、いや……女の子なんだなぁと、触ったら折れそう……」
「さっきも担いでたし……変わらないと思うよ?」
「そ、それは、焦ってたからで‼知らなかったんだ‼」

必死に訴える祐也に、穐斗は、まばたきをする。

「祐也?僕は僕だよ?性別が換わっただけで、嫌い?」
「ち、ちがうぅぅ‼そんなんじゃない‼嫌いじゃない‼だ、だから動揺してる」
「動揺?んーと、触りたくない?」
「そんなわけあるか‼でも、前みたいに骨折とか嫌だ‼」

あぁ……

思い出す。

「そう言えば、ギプスないねぇ?」
「お前が入院中に取ったって。それに、お前がしばらく眠ってる間に風遊ふゆ母さんと醍醐だいご先輩、正式に結納交わしたって」
「えぇぇ‼一緒にしたかったよぉぉ」
「写真とったりしてたから我慢しろ。それとスゥ先輩に赤ちゃんが出来たんだって。来年初夏になる前に生まれるって。このあと、ひな先輩帰ってきたら」
「わぁぁ~‼いいないいなぁ~‼お母さんとお父さんにも……弟欲しいなぁ‼」

女性になる前と全く変わらない穐斗にため息をつく。

「ん?なぁに?祐也」
「いや。お前はお前だなと思ったんだ。何か気が抜けた」
「どー言うこと?」

ぷぅっと頬を膨らませる穐斗に、笑う。

「今はまだ、あれやこれやで忙しいし、日本でもここでも色々ある。それに、お前がちゃんと病院で検査とか色々して……その前に、日本にいるはずのお前がどうやって戻るかとかあるけどな……」
「色々あるねぇ……」
「その中にも、風遊さんの結婚式と、その前にはスゥ先輩が出産。俺も、先輩たちも引っ越しとかあるんだけどな」
「僕も引っ越し……」
「もうすんでるんじゃないのか?」

祐也は頭を撫でる。

「むむっ?祐也、僕を子供扱いしてる?」
「いや。一応確認。それと……お前が、戸籍上でも女の子だと認められたら、俺と結婚してほしいんだ」
「……えっ?嘘……」
「嘘じゃない。ちゃんと結納に、恋人として、婚約者としてデートもしたい。それに、結婚式をして、ウェディングドレスやカクテルドレス、一杯着て欲しい。ずっと笑っていてほしい。泣くときは俺の腕の中だけ。駄目か?」

穐斗の大きな瞳が潤み、手を伸ばし抱きつく。

「う、うん‼僕……私も一緒にいたい、です‼」
「……ありがとう……」



長い長い道の末に、たどり着いたのは、共にいようと言う約束だった。

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