現世(うつしよ)と幻(うつつ)の世界で……

ノベルバユーザー173744

第74話、醍醐は電話ではなくネットで連絡しました。

醍醐だいごは、いくら専攻が日本史でも、時々サークルで調べものをしていた穐斗あきとの特に熱心に調べていた内容を覚えていた。
風遊ふゆの乱れた文字ではあるが書かれているのは、

Changelingチェンジリング。あれは穐斗やない』

の文字の痛々しさと、悲しみと混乱を思い、怒りを覚える。下のコンビニに向かう途中、携帯を使っていい場所で電話を掛けようかと思ったが、その部屋には花が生けられていた。
季節は様々だが最近はビニールハウスで色々な花を咲かせられる。
他を探そうと思い、別室に向かう途中で、ふとみると、そこで、産直市らしきものがあった。

近づくと、穐斗達との家よりももっと南の町の産直市で時々、付き添いの家族のための田舎ならではの炊き込みご飯や、野菜や果物等色々なものが売っていた。

そのなかに……、

「五つ葉のクローバー?」
「うちで育ててるんですよ。四つ葉は幸運、五つ葉は財運と言うんです」
「へぇ……そうなんですか……」

と見ていると、5つ葉が重なっている様なところがあり、ちょっと触ったが、外れず、

「あれ?5つ葉やない……」
「あぁ、7つ葉ですよ。滅多に見つかりません。時々あるんです」
「時々あるって……」
「いえ、鉢には五つ葉の苗なんですけどね?二枚ずつ増えるんです。元々クローバーはご存じの通り、三つ葉ですが、ごく稀に見つかる四つ葉は人が踏んだりして傷ついて、増えるんです。こちらはうちで品種改良した種で生えるので、ほぼ5つ葉ですけどごく稀に7つ葉になるのもいるんです」

はぁぁ……

感心する。

「花言葉は6つは、地位と名声。7つは絶対的な幸運と言うんです。時々見つけたかたが、喜んでいますよ」
「じゃぁ、すみません。ひとついただけますか?」

購入する。

「日の当たるところで育てるとよく育ちますよ」
「ありがとうございます」

と言い、はっと、我に帰ると、急いでコンビニでジュースを買い、にさんつまめるお菓子も購入し、メールで日向ひなたと祐也に送る。
部屋に戻ると、風遊は半泣きでおり、

「だんはん……何買うて来たん?」
「あ、七つ葉のクローバー」
「何で‼」
「ナァナァ……ぬくいとこ置いてや~?」
「はぁ?」

その声に視線を動かすと、鉢の上に、緑色の帽子を被ったちんまりとした人形……。

「ナァナァ。サムいん嫌いなんよ。ぬくいとこ置いてや」

窓際のひなたに袋から出して鉢を他の多肉植物と並べると、

「だんだんなぁ……それにしても、がいに、おかしなっとるやんか。大丈夫なん?あれ、elfのぼんやで?」

懐からパイプを取り出すと吸い始める……と、『穐斗』が苦しみ始める。

「あ、穐斗?」
「ほやけん、そのぼんはelfやて。この臭いが嫌いなんよ。わと、ここのんはエエけどなぁ。お前ら、ほんとのぼん、守れへんかったんか?」

その言葉にポンポンと次々に多肉植物の鉢で小さいものが、

「だって~怖いんやもん。椿おばちゃん」
「それに艶蕗つわぶき姉さんも‼」
「口出しするなって‼」
「その程度でボンを見捨てたんかいな」

その言葉に、

「「「違うもん‼一番小さいうちの妹が追いかけるって行ったんだから‼大丈夫‼」」」

エッヘン。

そっくりな一番数の多いそれは自慢げに伝える。

「え~と……あんさんは……」
「「「「ブロンズ姫だよ~」」」」

兄の双子も鬱陶しいが、ブロンズ姫の数も、大小ちょこまかと忙しない。

「穐斗は……‼」
Changelingちぇんじりんぐ、取り替えられたんや。普通は興味があってとかなぁ、それや人間の子供をいじめる言うんとか、もっとひどいときにはなぁ『十分の一税』いうて、妖精の世界には毎年妖精の子供を地獄に差し出すんや。やけどへんやと思わんか~?にいちゃん」
「はぁ?」
「妖精てもんは、昔からおるのに、何で地獄に送るんかなぁ?」

タバコではなく、何かのハーブらしいが、プカプカとふかす。

「『十分の一税』と言うのは……」
「にいちゃん、学がないなぁ?キリスト教やユダヤ教なんかで、昔、領主に税金を払うやろ?そんで、教会やなんかに、心付け言うんか?そげなもんを渡すんよ。で、わもようわからんが、妖精も地獄に子供を渡すんやと」
「妖精が地獄に?」
「でも、自分等の子供を送るんは誰もいややろ?やけんな?取っ替えるんや」
「じゃぁ、穐斗は‼」

真っ青な風遊に、

「地獄に?そらないわ。ここにおったんは西のエルフの血を引いた姫さんや。日本は八百万やおよろずの神言うて、何にでも神さんがおる言う信仰があったやろ?神言うんはエルフやフェアリー、精霊もそうや。日本は神聖な地なんや。元々は。やけどだんだんよごれていきよる、山は荒れてなきよるしなぁ……で、日本の神さんが、西のエルフの王はんに頼んだんや。ほんなら、西の妖精の血を引いた姫さんがこっちに来とるけん、それを息子の嫁に言うて。で、連れてったんや」

プカァ……

丸い輪っかができたのが嬉しかったのか、にんまり笑う。

「よ、嫁ってどこにや‼」
「それは解らん。わは下っ端やもん」
「全く話が進まないじゃないですかぁぁ‼」

ブチキレた醍醐は叫んだのだった。

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