現世(うつしよ)と幻(うつつ)の世界で……

ノベルバユーザー173744

第60話、祐也は動けないので、紅とウェインが初デートです。

頭を打っているため、様子見と言うことで数日入院となった祐也ゆうやだが、

「これだけでも……行かせてくれ‼穐斗あきとに買ってあげたいんだ‼」

と頼み込む。
が、あっさりと、ウェインに、

「ダメダメ。パパラッチに追い回されるよ」
「ち、チーキーを……贈りたかったのに……」

半泣き……ちなみに頭の痛みもあり、すぐに点滴となる。
薬でうとうととする祐也を、本邸から来てもらったメイドに頼み、

「仕方ないから、行ってこようかな。ヴィヴィアンも行く?」
「えぇ‼喜んで。くれないも行きましょう」
『えっ?どこに?』
『いたずらっ子に会いに行こう。3人で』

と、3人は服装を改め、病院を出て3人で手を繋ぐ。
ちなみに真ん中は紅で、紅は、

『あれ?ウェインさんとヴィヴィアン、恋人同士じゃなかったの?』

その言葉に驚き、ウェインは、

『と、とんでもない‼ヴィヴィは友人だよ‼子役時代から‼家族ぐるみ‼』
「何をいっているの?」
「いや、紅が、ヴィヴィと僕が恋人同士だって……違うよって」
「そうなのよ。無理だわ~。ウェインは友人以上になれないもの。ヘタレだから。今回だって……」
「ちょ、ちょっと‼ヴィヴィ~‼お願いいたします‼お願いだから‼」

頭の上で英語が飛び交い、紅はむっとし、ヴィヴィアンに抱きつく。

『ムー!私だってもっと英語勉強してヴィヴィって呼ぶんだもん‼ウェインさんに負けない‼』
「ヴィヴィの意地悪‼」
「高潔の騎士ランスロットが、初恋相手に振り回されるって見てて楽しいわ‼」

紅がヴィヴィアンにしがみつき、離れてくれない様子を、情けない顔で見る。

『ね、ねぇ、紅ちゃんは、僕のこと嫌い?』
「嫌い違うよ。でも、ゆうにいちゃんNo.1‼あきちゃんNo.2‼」

単語の羅列だが、ヴィヴィアンにもしっかりと、ブラコンぶりが理解できる。

「ヴィヴィNo.3‼その次、どう?」
「どうって……ヴィヴィ~‼」
「あははは‼紅は、クール‼」

笑い声をあげつつ、あるお店にはいる。

『へ、変な子~‼こっちは普通のテディベア‼』
『メリーソート社のテディベアのお店だよ』

ウェインは紅の手を引き、ヴィヴィアンにもらったパディントンベアと、見比べているのを見る。

『さっき「いたずらっ子」に会うって言っただろう?チーキーって言うんだよ。ほら、見てごらん。口が「いたずらしちゃったぞ。エッヘン」みたいにニヤリって笑ってるように見えない?』
『あー見える~‼』
『それにね?大きな耳には鈴』

持って上下に動かすとチリチリと鳴った。

『この鈴がなると、幸運を招くって言われているんだ。だから、祐也は、穐斗にあげたいって思ってるんじゃないかな?』
『へぇー……ん?この子は違う?』
『パンキーチーキーだね。頭がツンツンでしょ?それにパンツをはいてるから、パンツチーキー』

その名前に笑う。
ヴィヴィアンは他のテディベアを見ているふりで、幼馴染みを見る。
別のチーキーを見て、楽しそうに笑いながら自分を見る紅に、嬉しそうに微笑み返す……その姿に。

「鈍いと思っていたけど19で初恋ねぇ……ウェインらしいわ」

クスッと笑った。

じっくりとチーキーを見て……奥にいる大きなチーキーに気がつく。
クリーム色で、しかもウサギの耳つきの帽子をかぶっている‼

『か、可愛い~‼ウサギ‼ウサギ‼ねぇねぇ‼あれ、あきちゃん似てる‼』
『穐斗に?』
『うん‼子犬か、ウサギ‼可愛い~‼あれは?』
『うーん。そうだね。じゃぁ、あれは穐斗に。で、こっち』

穐斗用の大きなチーキーとは別に手渡す。

『君用の。パンキーチーキーウサギ。プレゼント』
『エェェェ‼いいの?だって、ほら、パディントンベアいるのに‼』
『サインいる?』
『わぁぁ。じゃぁ、このこ、ウェインにするね‼ありがとう‼大事にする~‼』

ぎゅっと抱き締め満面の笑みを、はにかむように見ている姿を、ヴィヴィアンは少し羨ましく思ったのだった。

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