現世(うつしよ)と幻(うつつ)の世界で……

ノベルバユーザー173744

第26話、祐也は実は、海外生活経験者です。

落ち着いた部屋のなかで、ふと、政和まさかずが、

「祐坊。英語しゃべれるんか?」
「あぁ、うん。俺、小さい頃からオーストラリアと、カナダ、香港とか転々としよったんよ」
「えぇ‼聞いてないで?」

穐斗あきとに、苦笑する。

「あぁ、俺、今の家は、実の母親の兄ちゃんの家で、養子なんよ」
「エェェ‼」
「でも、たいぎょうなことやのうて、実の父親が、世界中飛び回るサラリーマン。で、母親は都会に出ていって、出会って結婚したんやけど、ついていくのも大変やけんなぁ……父親は英語もフランス語も中国語もそれなりにできたし、俺も子供やけんの。外に行ったら何かしら遊んで、言葉は覚える。でも、母親は言葉は通じん、全く環境に馴染めん上に、父親と喧嘩するようになって、日本に帰ってしもて、最後には離婚や。で、俺は父親に引き取られたんやけど、子育てしつつも大変で、再婚。でも、向こうにも子供がおって馴染めずにおったら、家の親父が、来てくれてなぁ。で、『帰るで‼』言うて。兄貴も妹も、兄弟や言うてくれとるわ。母さんもな」

あはは~‼

祐也ゆうやは笑う。

「一番長いことおったんは、カナダで、フランス語と英語が混在しとるし、香港もほとんど英語やけど、中国語も話とったし、スラングが多いんはオーストラリアやなぁ。さっきのも、それや」
「『アレク』が『馬鹿』って言うの、はじめて知りましたよ」

醍醐だいごの呟きに、

「オーストラリアもニュージーランドも、イングランドの属国と言うか、昔は、イングランドで罪を犯した犯罪者が流された流刑地やけんね。一応、女王陛下にイングランドの女王を戴いとるけど、関係ないって感じやったで。それに、オーストラリアは広いし、結構、一人旅したで」
「エェェ‼そんなことできたの~‼」
「うーん?ぐれるのも面倒やろ?それに、家には父親ほとんどおらんし、お母さんって呼ぶないわれたしなぁ……。で、父親の違う兄弟ってのも、嫌がらせするんだよなぁ。で、言い返したりやり返したら、お母さんって呼ぶなって言った人が殴るし、父親に告げ口で、父親にもボコボコやったしなぁ……」

呟いた一言に、周囲はシーンとする。
ハッとして、

「あ、ごめんなさい。じいちゃん、ばあちゃん、母さんやおっちゃん、先輩に穐斗あきともおるのに……」
「……ごめんなぁ……祐ちゃん。知らんかった……しゃべらせてしもうて、ごめんなぁ」

泣きながら風遊ふゆは祐也を抱き締める。

「いや、かまんのよ。母さん。一応、母親は再婚しとるんやけど、時々手紙でも電話でも言うて言うとったんや。でも、俺はかけれんし、お金ものうて。で、ヒッチハイカーになって、色んなとこ行ってきたわ。車にのせてもらう代わりに、力仕事とかな。で、あちこち転々としとったんや。そしたら、母親が何回家に電話かけても、俺が出てこんし、父親も『知るか』とか言いよったんやと。で、父さんがな、様子を見に来てくれて、首都と反対側でヒッチハイクしよった俺を見つけてくれて、で、父親が俺の育児放棄しとる言うて訴えて、親権を再婚しとる母親じゃのうて、父さんにうつしてもろてな?こっちに戻ってきたんや。中学になっとったんやけど、勉強全然してないけんの~。いかん言うて、猛勉強よ。それに、兄貴には、『言いたいことがあるんやったら、日本語で言え‼代わりに俺は英語で返したラァ‼』言うて、下手な英語と日本語で口喧嘩よ」

祐也は風遊を抱き締め返す。

「で、体力はあるし体はでかいけん、近所のおっちゃんが柔道の道場をやりよって、通い始めたんや。言葉も解らんけど、身ぶり手振りや、仲間と、これはこう言うて教えてもろてな。代わりに英語教えて、なかようなったんや。仲間外れなんてのうてな。それに、家には家族はおるし、あぁ、何て幸せなんやって思うとらい。兄貴は俺が英語もフランス語もできるけん言うて、海外留学を勧めてくれたけんど、かまん言うたんや。父さんと母さんはだまっとったんやけんど、父親が日本に戻ってきとんやと。そんで、また離婚したらしいわ。で、嫁さんとの間には子供が生まれんかって、俺を引き取りたい言うていよるらしい。で兄貴がぶん殴ったんやと」

祐也は笑う。

「何時もは喧嘩ばっかりや。でも、身勝手な父親に『何勝手なこと言いよんで‼祐也は俺の弟や‼あんたは、子育てひとつせずに、元の嫁の言い分ばっかり聞いて、祐也を殴る蹴るして、金も渡さん、おばさんとの連絡手段まで取り上げて、祐也はどこにいっとったんぞ‼祐也はこっちに来た頃、怯えとったんぞ‼殴られる、怒鳴られる、どうしよう言うて、なきよったんじゃ‼そうしたんは誰ぞ‼お前やろが‼』言うて、俺とちごうてやせ形の兄貴が殴って、父さんに止められて、母さんが『祐也は家の子です。あんたんとこの子じゃない。もう二度とこんといて。来たら、裁判起こすけんな‼おかえりや‼』言うて。嬉しかったわ」
「優しいなぁ、祐ちゃんのお母さんは」
「風遊母さんもや。初対面の俺に、穐斗と変わらんように可愛がってくれた。ええこやなぁって。じいちゃんも、ばあちゃんも、まっちゃんおっちゃんも、先輩たちも、穐斗も俺は大好きや。やからなぁ……俺、ここに住みたいわ。あ、大学があるけん、その間は実家におって、休みの間とか戻って、色々したい。いかんかなぁ?」

祐也の問いかけに、麒一郎きいちろうが、

「甘いこたぁないぞ?ここは、過疎の地域。わかっとろが?本当は穐斗も街にとおもとった」
「えぇ?じいちゃん?ぼく、ここに住むんで?」
「何いよんぞ?車の運転もろくにできんのに」
「うぅぅ……が、頑張るもん‼」
「無理じゃ」
「じゃぁ、俺が車運転できますし‼もんてきても‼」

祐也に、

「お前が、清水の家の苦労を背負ってどうすんぞ?お前と穐斗に遺せるんは、二束三文の手入れのできんなった山に、あるんは家族が食べる程度の畑に田んぼ、それになぁ?まだわしらは普通に動けるが、後10年もしてみい。この口が達者のじじいとばあさんの介護やぞ?それにこの地域にはお前くらいの年のおなごはみんな、町にでてしもた」
「それでもえぇ‼俺は、ここにいきたいんや‼じいちゃん‼」
「僕も‼おる‼絶対おるけんな‼」

穐斗も必死に宣言したのだった。

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