現世(うつしよ)と幻(うつつ)の世界で……

ノベルバユーザー173744

第1話、内気な大学生、清水穐斗

「はい、おはようございます。皆元気かな~?あ、『ブロンズ姫』様はいつもいつも元気そうで良かったです。えぇ、艶々した葉っぱで良く解りますよ~。あ、『月兎耳』ちゃんは、本当に、ウサギの耳みたいに長くて産毛の生えたところが、本当のウサギさんみたいで可愛いですね~」

話しかけるのは、後頭部全部が寝癖に元々のくせ毛のせいか、完全にスーパーサイ○人と化している青年である。

ボーッとした目は、寝起きであるのと元々のド近眼。
コンタクトは合わず、眼鏡をかけていないと動けないのだが、ドジで良くどこかに置きっぱなしにし、それを踏んづけては、残骸にしているため、危険回避のために日々の日課である可愛い多肉植物の世話をしたあとに取るように、多肉植物達の棚の奥に置いている。

多肉植物はあまり水をやり過ぎてはいけない、逆に少なすぎてもいけない。
そのうえ成長すると、下の葉っぱは枯れていく。
その直前のタイミングに先に折っておき、濡れたティッシュに包むか、タッパーに薄く土を広げて指しておくと、殆どの枝から子供が生えてくる。

清水穐斗しみずあきとは、多肉植物を趣味で育て、増やすのが楽しみである。

普通の植木鉢等で育ててもいいのだが、独り暮らしで料理も然程しないので、近所のコンビニで期間限定の、シールを集めて貰える器を貰ってはそれに土と、生えたばかりの苗を寄せ植にして、そして、昔姉が趣味で集めていて、飽きたと放置していたパワーストーンを一緒に差したり、置いたりして飾っている。
男の癖にと、同級生の安部祐也あべゆうやには呆れられるのだが、シールなどは溜まるのだし、同級生の男達はそのままシールを捨てるのだから、もらっておいて損はなく、パワーストーンも一時期はまっていた姉にコンコンと聞かされていたので覚えているが、役目の終わったパワーストーン……特に、割れたり砕けたら捨てるのではなく、感謝をして土に返すのがいいことなのだそうだ。

と言うことで、土に……返すのと、姉は男勝りだが、おっとりとした穐斗は、錆びたため鎖のちぎれたネックレスのヘッドについていた石や、ロッククリスタルと言うらしいのだが、六角柱の水晶を削ることなくそのままのパワーを得るために削らずその形のままのものを飾ったりしている。

幾つもの六角柱が一杯に広がった水晶や紫水晶の集合体をクラスターと言うらしい。
クラスターは、特に癒しの力が強く、握りこぶしサイズで、ブレスレットや、指輪の石を一日前後で清める効果があると言う。
全盛期の頃は、姉は大きなものがほしいと言っていたが、今の状態では、買わない方がましだっただろう。
今現在一人暮らしの穐斗が、実家から勝手に持ち出しても、何も言わないくらいなのだから。

穐斗は、ある程度姉に教わっているため、時々、同じHRの女子学生に何故か恋愛相談をされることがある。
しかし、自分は男と認識されていないんだろうなぁと、お礼にと、コンビニのシールや、その器を貰っては思うときもある。
だが、まぁ、それもいいかと思う日々である。

「最近、来てからしばらく経ちますが、『春萌え』さんは元気ですか?」

今現在育てているのは、

春萌え
月花美人(月下美人とはちがう)
初恋
黄麗
朧月
うさぎのかくれんぼ
銘月
ブロンズ姫
月兎耳
プリトニス
アロエ
子宝草

である。

実家にもまだいるので、今度一気につれてくるつもりである。

今の時期は、凍りついてはいけないので室内に置いているものの、なるべく外に出してやりたいなぁと思う穐斗であった。

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く