異世界で、英雄譚をはじめましょう。
第二百六十二話 偉大なる戦い・決戦編㉗
「もちろんありますよ。聞いてください」
待ってました、と言わんばかりに女性の言葉に答えるストライガー。
「彼女は、神に選ばれた素質を持つ存在ですよ。それはキガクレノミコト……ああっと、あなたたちには木隠と言えば良いですか。ともかく、その存在に認められた存在です。それ即ち、聖女と言っても過言ではありません」
聖女、か。
それにしても一花――いや、もうガラムドと言ってもいいかもしれないが、彼女は神になる前からかなり『奇跡』という名前を冠していたのだな、と思った。いずれにせよ、ガラムドが神になるのはこの『偉大なる戦い』の戦果によるものだろうけれど、今はただの少女だ。
一人の少女に、戦場を経験させるほどこの国はまだ疲弊していない。
きっと国民の殆どはそう思っているに違いないはずだった。
だからこそ、僕の目の前に居る三人の人間はそう思っている、はずだと思っていたが――。
「……神の加護とでも言った感じかね。まあ、使徒の連中が言ったならそれなりの力は持っているということなのだろうな」
言ったのは、筋骨隆々の男だった。案外、男は神という存在を信じているようだった。
そして、それに続けて言ったのはその隣に居る女性。
「まあ、ストライガーがそう言うなら……私たちもそれに従うしか無いようね。別に問題は無いけれど。足手まといにならなければ、それで」
「まあまあ、二人とも。そこまで言う必要は無いでしょう」
そう言ったのは、白い帽子をかぶった女性だった。
つば広の帽子をかぶり、白いワンピースを身にまとった女性は、戦場というよりも花畑や海岸を歩くような清楚なイメージが見受けられた。
「……結局、戦場を制するのは力。あなたたち二人はそう思っているのでしょう? ならばそれで良いではありませんの」
「お前は回復術士だから、そういうことを言えるのだろうが……」
「何ですか? 回復術士だから、何か言ってはいけないことでも?」
「そういうことを言っている場合では無いでしょう!」
三人があわや喧嘩を始めるのでは無いか、と思ったタイミングだった。
声を出したのは、紛れもなく、ストライガーだった。
ストライガーの声を聞いて三人は一同に言葉を噤む。
それを確認したところで、彼女は深い溜息を吐き、
「これではこの先が思いやられるというもの。あなたたちはこれからこの世界を救うべく、あの化物……オリジナルフォーズと戦わなくてはならないのですよ。それを理解していますか?」
「ストライガーさんよ、オリジナルフォーズとは言うがな……。どうやって俺たちが立ち向かえば良いんだよ。問題はそこだろ」
それを聞いた僕は首を傾げる。
なぜそんなことを言ったんだ? ここに居る三人は、オリジナルフォーズを倒すために集められたわけでは無いのか?
「確かにそうですね。問題はそこです。あなたたちも知らないこと……それはオリジナルフォーズはどうやって倒すことが出来るのか? 有効な攻撃手段は存在するのか、ということについて……」
ストライガーは立ち上がり、僕たち五人を見つめながら、
「はっきり言って、オリジナルフォーズには弱点はありません」
そう言い放った。
それは希望を持っていた戦士たちにとって、その希望が打ち砕かれたような――そんな状態でもあった。
「そ、それはどういうことよ! だったら、手当たり次第攻撃しろ、と……。そう言いたいわけ?」
チャイナドレスの女性は立ち上がりテーブルを叩く。
慌てる気持ちも分かる。きっと、この三人はオリジナルフォーズに対してあまり情報を開示されていないのだろう。ただこの三人は『強い相手と戦う』としか知らされていないのだろう。
しかし、僕は違う。
オリジナルフォーズの恐怖を知っている。
弱点が無いことを知っている。
その先の未来も知っている。
だからこそ――今の絶望的状況も、どうしようもならないことも分かっていたからこそ、その情報を聞いても冷静でいられたのかもしれない。
ストライガーはチャイナドレスの女性の言葉を制するように、
「リーナ、残念ながらその通りです。グランズ、あなたも落ち着いて。でも……これは変わりようのない事実です。オリジナルフォーズには弱点が存在しません。ですから、有効な攻撃手段が存在しない。ですから、私たちに出来ることは、ただ一つしかありません。倒せないならば……弱体化させて封印させるまで。オリジナルフォーズを封印させることの出来る、現時点でのワイルドカードがあるとすれば? 少しは話を聞く気にもなれたのではないですか?」
「冗談だろ、ほんとうにそんなことを言っているのか」
グランズと呼ばれた男は、完全に諦めモードに入っていた。
何というか、その筋肉は見世物だったのか。そんなことを言ってしまいたくなるが、それを言うと話がこれまで以上にこんがらがるため言わないでおく。
ストライガーはグランズの言葉に続ける。
「私が冗談を言うような人間だとお思いですか?」
「いいや、そんなことは思っていない。だが、だがな……、ちょっと想定外なことが続いただけだ。それで? 聞かせて貰おうじゃ無いか、そのワイルドカードってなんだ?」
「そうよ、私も気になるわ」
グランズの言葉に会わせるように、リーナは言った。
一人、つば広の帽子をかぶった女性は何も答えないまま、ただストライガーを見つめるだけだった。
そして、その期待に応えるようにストライガーは告げる。
「……オリジナルフォーズを封印するための力。それは、彼女が――風間一花が使えます。祈りの力、私はそう言っていますが、その力を使うことでオリジナルフォーズを封印することの出来る力……『奇跡』を起こすことが出来る。私はそう考えているのですよ」
待ってました、と言わんばかりに女性の言葉に答えるストライガー。
「彼女は、神に選ばれた素質を持つ存在ですよ。それはキガクレノミコト……ああっと、あなたたちには木隠と言えば良いですか。ともかく、その存在に認められた存在です。それ即ち、聖女と言っても過言ではありません」
聖女、か。
それにしても一花――いや、もうガラムドと言ってもいいかもしれないが、彼女は神になる前からかなり『奇跡』という名前を冠していたのだな、と思った。いずれにせよ、ガラムドが神になるのはこの『偉大なる戦い』の戦果によるものだろうけれど、今はただの少女だ。
一人の少女に、戦場を経験させるほどこの国はまだ疲弊していない。
きっと国民の殆どはそう思っているに違いないはずだった。
だからこそ、僕の目の前に居る三人の人間はそう思っている、はずだと思っていたが――。
「……神の加護とでも言った感じかね。まあ、使徒の連中が言ったならそれなりの力は持っているということなのだろうな」
言ったのは、筋骨隆々の男だった。案外、男は神という存在を信じているようだった。
そして、それに続けて言ったのはその隣に居る女性。
「まあ、ストライガーがそう言うなら……私たちもそれに従うしか無いようね。別に問題は無いけれど。足手まといにならなければ、それで」
「まあまあ、二人とも。そこまで言う必要は無いでしょう」
そう言ったのは、白い帽子をかぶった女性だった。
つば広の帽子をかぶり、白いワンピースを身にまとった女性は、戦場というよりも花畑や海岸を歩くような清楚なイメージが見受けられた。
「……結局、戦場を制するのは力。あなたたち二人はそう思っているのでしょう? ならばそれで良いではありませんの」
「お前は回復術士だから、そういうことを言えるのだろうが……」
「何ですか? 回復術士だから、何か言ってはいけないことでも?」
「そういうことを言っている場合では無いでしょう!」
三人があわや喧嘩を始めるのでは無いか、と思ったタイミングだった。
声を出したのは、紛れもなく、ストライガーだった。
ストライガーの声を聞いて三人は一同に言葉を噤む。
それを確認したところで、彼女は深い溜息を吐き、
「これではこの先が思いやられるというもの。あなたたちはこれからこの世界を救うべく、あの化物……オリジナルフォーズと戦わなくてはならないのですよ。それを理解していますか?」
「ストライガーさんよ、オリジナルフォーズとは言うがな……。どうやって俺たちが立ち向かえば良いんだよ。問題はそこだろ」
それを聞いた僕は首を傾げる。
なぜそんなことを言ったんだ? ここに居る三人は、オリジナルフォーズを倒すために集められたわけでは無いのか?
「確かにそうですね。問題はそこです。あなたたちも知らないこと……それはオリジナルフォーズはどうやって倒すことが出来るのか? 有効な攻撃手段は存在するのか、ということについて……」
ストライガーは立ち上がり、僕たち五人を見つめながら、
「はっきり言って、オリジナルフォーズには弱点はありません」
そう言い放った。
それは希望を持っていた戦士たちにとって、その希望が打ち砕かれたような――そんな状態でもあった。
「そ、それはどういうことよ! だったら、手当たり次第攻撃しろ、と……。そう言いたいわけ?」
チャイナドレスの女性は立ち上がりテーブルを叩く。
慌てる気持ちも分かる。きっと、この三人はオリジナルフォーズに対してあまり情報を開示されていないのだろう。ただこの三人は『強い相手と戦う』としか知らされていないのだろう。
しかし、僕は違う。
オリジナルフォーズの恐怖を知っている。
弱点が無いことを知っている。
その先の未来も知っている。
だからこそ――今の絶望的状況も、どうしようもならないことも分かっていたからこそ、その情報を聞いても冷静でいられたのかもしれない。
ストライガーはチャイナドレスの女性の言葉を制するように、
「リーナ、残念ながらその通りです。グランズ、あなたも落ち着いて。でも……これは変わりようのない事実です。オリジナルフォーズには弱点が存在しません。ですから、有効な攻撃手段が存在しない。ですから、私たちに出来ることは、ただ一つしかありません。倒せないならば……弱体化させて封印させるまで。オリジナルフォーズを封印させることの出来る、現時点でのワイルドカードがあるとすれば? 少しは話を聞く気にもなれたのではないですか?」
「冗談だろ、ほんとうにそんなことを言っているのか」
グランズと呼ばれた男は、完全に諦めモードに入っていた。
何というか、その筋肉は見世物だったのか。そんなことを言ってしまいたくなるが、それを言うと話がこれまで以上にこんがらがるため言わないでおく。
ストライガーはグランズの言葉に続ける。
「私が冗談を言うような人間だとお思いですか?」
「いいや、そんなことは思っていない。だが、だがな……、ちょっと想定外なことが続いただけだ。それで? 聞かせて貰おうじゃ無いか、そのワイルドカードってなんだ?」
「そうよ、私も気になるわ」
グランズの言葉に会わせるように、リーナは言った。
一人、つば広の帽子をかぶった女性は何も答えないまま、ただストライガーを見つめるだけだった。
そして、その期待に応えるようにストライガーは告げる。
「……オリジナルフォーズを封印するための力。それは、彼女が――風間一花が使えます。祈りの力、私はそう言っていますが、その力を使うことでオリジナルフォーズを封印することの出来る力……『奇跡』を起こすことが出来る。私はそう考えているのですよ」
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